2017/07/25

川久保玲さんの服


メトロポリタン美術館では、2つの大きな企画展をやってました。
アーヴィング・ペン写真展と、


コム・デ・ギャルソンの川久保玲さんの「Art of In-Between」。
どちらも直球どまんなかのツボだった。


建物のあまりの大きさに呆然としながら、ペルセウス(だっけ?)の綺麗なお尻をちらりと横目に見ながら(しかし写真は撮る)、川久保さん展会場へ。
広すぎてなかなかたどり着けなかった。


川久保玲さんの服は、もちろん、持ってません!Tシャツですらも!

1980年代から現在までの川久保さんの服を「in-between」というコンセプトで振り返る大回顧展。

不在/存在、デザイン/非デザイン、ファッション/アンチファッション、モデル/複製、ハイ/ロウ、昔/今、自身/他者、オブジェクト/サブジェクト。

といった対立する概念のペアが各セクションに振られていて、川久保さんの服は、その相対する概念の間で生まれてきた服たちとして紹介されている。



コブを持った服。「Body Meets Dress - Dress Meets Body」、1997年。

川久保さんの服はなんだかすごいなあと遠くから思っていたけど、 こんなにすごいのだとは知らなかった。



もうすべてに圧倒されました。この展覧会だけでもう本当にノックアウトされて、見終わったら、しばらく呆然、ぐったり。


川久保さんは正当なデザインの教育は受けていないというのも知らなかった。

40年間前衛であり続けられるってどういうことなんだ。


「The Infinity of Tailoring」、autumn/winter 2013–14。

男性/女性、自分/他者、東洋/西洋、子ども/大人、といったカテゴリーを問う服。

ただその問いをもてあそんだり、もったいぶるのではなく、それを綺麗な形につくりあげてしまう天才。


 こどもと大人。カワイイの究極。

「この服はだれが着るのかしらね。不思議の国のアリスに出てくる服みたいね」
と、アメリカおばさんが不思議そうにいっていた。うん私もそう思う。


「Ceremony of Separation」、2015-16。

喪服のような、死と別れを感じさせる作品。

この人はお坊さんのような真面目さで服を作り続けているんだ、と思う。
その真摯さに泣けてくる。

これだけ突飛なデザインが、まったく衒いを感じさせないし、わざとらしくない。



 「Broken Bride」、2005-06

 “The right half of my brainlikes tradition and history,the left wants to break the rules.”

 「わたしの右脳は伝統と歴史が好きで、左脳は決まりを壊したがっているのです」(2005)


「Not Making Clothing」、2014。
このコレクションはビデオで見た。演劇的なショウだった。



子ども/大人、過剰/欠落。

この展覧会の、ふたつの相対する概念の中に表されているものをいったん取り壊して再構築する、というテーマが、いつも川久保さんの制作の中にあるのかどうかは知らないけど、そのように説明されると本当にしっくり納得ができるのだった。



「Invisible Clothes」、Spring/summer 2017。

そしてその形が本当に息をのむほどカッコ良いのです。


「MONSTER」、Autumn/winter 2014–15。

「怪物」というのは「人間性の狂気」を表現しているそう。

「私たちが皆持っている恐怖、常識を超える感覚、日常性の不在。なにかとてつもなく大きなものによって、なにか美しくも醜くもあるものによって表されるもの」



上の段は、パリに衝撃をもたらしたという1982年秋冬のコレクション「Holes」の穴あきセーター。
「無」「間」「わびさび」の表現だという。この穴は「破れではなく、布地に新しい次元をもたらす『オープニング』。カットアウトはある種のレースになる」というのが川久保さんの説明。


 Blood and Roses、Spring/summer 2015。

 「コレクションのテーマは、社会状況に対する憤りから来ることが多い」
というものの、
「自分のデザインを、世界のなにかの問題へのメッセージにするつもりは全くない」とも。



血と薔薇。
バラの花はヨーロッパのバラ戦争にさかのぼり、「血と戦争、政争、宗教上の紛争、勢力争いに結びついている」。


Blue Witch、Spring/summer 2016。

中世から迫害されてきた「魔女」というのはフェミニスト的なテーマではあるけれど「私はフェミニストではない」「私は白昼夢も追わないし、幻想的なイマジネーションも持っていない。私はむしろリアリストなんです」と川久保さんの言葉。



18th-Century Punk、Autumn/winter 2016–17。
秩序とカオス。


川久保さんは常にストリートファッション、パンク魂が好きで、同時に歴史と伝統にも敬意を持っているという。

川久保さんの服には、形式に一切よりかからないで、自己満足をしない、緊張感があると思う。

きっと、その緊張がちょっとでも緩んだら一切がだめになって単なる混沌になってしまう。カミソリの刃の上のような危うい場所で成立している「醜の美学」。その引力がものすごい。

楽茶碗のような服だと思う。
この緊張感は、利休さんの時代のお茶道具の緊張感のよう。

異次元のような空間にひっぱりこんで、有無をいわせず「これは美しい」と思わせるパワー。


“My clothes and the spaces they inhabit are inseparable—they are one and the same. They convey the same vision, the same message, and the same sense of values.”

「わたしの服と、その服がある空間とは切り離せない存在。互いに一つなんです。どちらも同じビジョンとメッセージを伝え、同じ価値感の上に立っている」(2017年)



Body Meets Dress-Dress Meets Body のコブ衣装を使った舞踏の舞台もあって、ビデオで上映されていた。


1997年に上演されたもの。


「The Future of Silhouette」、 Autumn/winter 2017-18。


こちらも最新の「The Future of Silhouette」。
袖すらない。

 VOGUEの記事にコレクションの写真とビデオがありました。モデルが着て歩くとピーナッツの殻みたい。

いったいこの次に何を作るんだろうか。

この展覧会の写真がたくさん網羅されてる記事がありましたます。ニューヨークに行かない方はこちらで。

会期は9月4日までです。


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2017/07/23

メトロポリタンへの道


もう1か月たってしまいましたがニューヨーク日記の残り。
マンハッタンでの最後の3日は、イーストサイドのセントラルパークの端のあたりに滞在しました。

ここもAirBnBで、ちょっと変わった感じのビルだったんだけど、目の前にセントラルパークがあり、眺めがとても良かった。

部屋から見える空が広いのはいいよねー。


お向かいのビルの屋上にも屋上庭園があった。ビルの上がぜんぶ庭園になるといいのにね。コストはどのくらいかかるのだろうか。
それだけでだいぶ都会は涼しくなると思うんだけど。


ここのアパートから、5番街をとことこ歩いてメトロポリタン美術館に通いました。
片道30分弱。2日ともお天気がよくて、朝は爽快だった。

美術館は10時半からだったので、途中のカフェで朝食を。

教会の建物の中にあるBluestone Lane というオシャレカフェへ。


道端にヨーロピアンな感じのテーブル。

このへんは法外なお金持ちがたくさんお住まいでいらっしゃる感がプンプンするエリアでした。イーストヴィレッジとは違います。ゴミもさすがにあまり落ちてない。


キヌアとフェタチーズとケールやらの入ってるボウル、15ドルなり。
ケールはちょっとモソモソしてた。
手前はなにかのペーストを塗ったトースト(もう忘れてしまった)。

ここのコーヒーは美味しかった!



もう少し先にはグッゲンハイム美術館。
ここは見る時間がなかった。でもショップだけは覗いてみました。
(ショップのほうが美術館よりも早く開店)。


カルダーのモビールもあったし、小さいけど充実の内容。

ほしいものがいっぱいあったけど、買ったのは小さい強力磁石セット10ドルのみ。
冷蔵庫に貼っておくやつです。
でも帰ってからみたら、シアトルの会社のデザインだったww


これもグッゲンハイム美術館のショップで見たアクセサリー。ブルックリンのアーティストMeghan Patrice Rileyさんの。
このクシャクシャっとなってるワイヤのネックレスがすごく好き。


2日目は、ニューヨーク市立博物館の前庭にある、同じくBluestone Laneのキオスクで。


お客さんが他にいなくて暇そうなイケメンのお兄ちゃんが親切でした。
ギリシャ出身でオーストラリアにいて、これからパリで勉強するんだ♪といってました。しっかり学べよ青年。


そしていよいよメトロポリタン美術館へ。つづく。

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まさかこの店で買い物をすることになるとは


ショッピングモールに入ってる、スケボー小僧御用達のお店に「ZUMIEZ」というのがあります。おバカなスローガンのはいったTシャツとかキャップとか、スケボー系ウェアを売ってるお店。

うちの息子も、中学生の時にたいへん気に入っていた店です。

もう一生この店とは関係を持つことはないと思っていたのだが、 このあいだ映画館に行く時にここの店の前を通ったら、この猫と目が合ってしまった。

フリーダ………。

そして、ダリ猫………。




……悩んだ末に、フリーダ入手。

さらに1週間後、もう一度戻ってダリのも買った。

RIPNDIPというブランド(なのか?)で作ってて、今みにいったらモナリザもあった。…モナリザの膝でものすごくくつろいでいるねこ。

フリーダのTシャツを買っていたら、お店の兄ちゃん
「ねえこの女の子誰なの?有名な人?」
「えっ。これはフリーダ・カーロといってメキシコの画家だよ。もう死んじゃってるけど」
「COOL。そうなんだー。俺、でもこっちのピカソは知ってるぜ」
「…いやそれダリだから」

 このフリーダTシャツを着て、前回メキシコシティに行った時に時間がなくて(代わりにピラミッドをとってしまった)行けなかったフリーダの家に行きたい。また機会がめぐってくるでしょうか。


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2017/07/22

シアトルに自転車シェアリングが復活!


先月ニューヨークで自転車シェアリングが大成功しているのをみて、そういえばシアトルのは…と思ったら市営のはひっそりと4月に廃業していた。
という話をこの間したばかりだったんですけど、またシアトルに自転車シェアリングが復活しました。

先日のシアトル・タイムズの記事を読んでへぇーと思っていたら、うちの近所でさっそく目撃。

今度のは市もそのほかの公的な資金も一切援助なしの私営。現在2社が500台ずつで開業して、9月までに3000台ずつ増えるそうです。

今度のはドックステーションなしで、自動車シェアリングのCar to Goと同じシステムで、道端に乗り捨てできるシステム。

6月に6社が興味を持っているという話が過去記事に載っていて、それから1か月半でもう開業。さすがベンチャーキャピタル、展開が早いですねえ。

シアトルはいますごく景気がいいし、エコな人びとも多く、若いプロフェッショナルが毎年何千人と流入してるので、投資家のおかねも集まりやすいんでしょう。

そしてシアトルは、市のサービスがこけた今、自転車シェアリングがない都市の中では最大だったのだそうです。

ドックステーションのない自転車シェアリングが本格的に導入されるのは全米でも初めてらしい。上海では大成功しているそうですが。

アプリの使い勝手がよければ使いたい人はいっぱいいると思う。わたしも使いたい。
アプリを入れてみた。さくさく動くし使いやすい。
そしてうちの周りにけっこうたくさん置かれてる。きっと、ローンチであちこち乗りそうなところに配って置いていったんだね。

ただ問題は、坂と雨。
記事では、定期的にクルーが自転車を「redistribute」(配置しなおし)すると書いてあった。たとえば、坂の下のパイクプレイスマーケットのあたりに乗り捨てられてるのを集めて丘の上のボランティア・パークに持っていくとか。

始めるのも早いが止めるのも思い切りが良いベンチャー企業。

12月末にはもう廃業してたなんてことにならないよう祈ってます。
12月までは試験運転期間ということらしい。

とりあえず使ってみよーっと。
お値段も30分ごとに1ドル!と激安価格。

あっそうだ、シアトル市ではヘルメットをかぶらなきゃいけないんだったー。うーんやっぱりそれがネックかも。


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2017/07/21

水玉地獄にいって来た


シアトル美術館、通称SAMでやっている、草間彌生さんの展覧会にいってきました。

サムって可愛いニックネームだよね。サムくん。
1か月前の日記をへいきで書いているわたしとしては超速の即日レポートですよ!


むっちゃ楽しかった〜!
会期は9月10日まで。もう1度行きたいくらいです。
入場は15分間隔の時間制。入ったあとの制限はなし。

4時の回をもう1か月前に予約していたのに30分遅刻。息子よもうすこしタイムマネジメントを学びなさい(お前が言うな)。
息子と、サンディエゴから帰省中のKちゃんも引き連れて3人で行きました。



ちょうどきのう草間さんの自伝を読み終わったところで予習もばっちり。

なにがすごいって、今年88歳でまだ絶賛現役制作中。 この上の↑は去年あたりの作品。
もう本当に可愛い。


これは1958年、ニューヨークに乗り込んでどん底貧乏生活の中で描いていたという「無限の網」シリーズのひとつ。
ジョージア・オキーフが心配して砂漠から様子を見に来たと自伝に書かれていた。

草間さんは最初、1957年にアメリカにわたってきて、シアトルで個展をしたんですね!

それから「シアトルの人たちが止めるのを振り切って」ニューヨークに出ていき、ひたすら描き続けたという。それからたった2年後にニューヨークで個展をひらき、それが大反響をよんだそうです。

「一つ一つの水玉をネガティヴにした網の目の一量子の集積をもって、果てしない宇宙への無限を自分の位置から予言し、量りたい願望があった」
(『無限の網』24)

この同じようなオブセッションを持つ人なら、ほかにもたくさんいるのかもしれない。
草間さんの才能は、それを毎日毎日、形にし続けられたこと。



きもかわいい触手の森。見ていると愛しくなってくる。
でも動き始めたらちょっと嫌かもしれない。



1970年代、男女を公共の場で全裸にしてボディペイントするなどの過激な「ハプニング」でニューヨークを震撼させていた頃の草間さん。美人ですね。
この帽子。そしてネックレス。可愛いなあ。

ニューヨークでは時の人となり、美術評論家のハーバート・リード卿にも激賞され、アンディ・ウォホールとどちらが可愛い男の子のモデルをたくさん集められるか競争していたそうですが、しかし当時の日本ではまったく評価されず、週刊誌のゲスなクズ記事に面白おかしく取り上げられるだけだったという。さもありなん。



今回の展覧会には、四方を鏡に囲まれた部屋が5つあります。
それぞれ、2人か3人定員で、20秒または30秒間入っていられる。
一度入るとしばらく出て行きたくなくなるのですが、すぐに時間が来てしまう。

一組につき30秒以内でも、それぞれの部屋に入るまでには行列ができていて、かなりの待ち時間あり。10分から15分くらいずつ並んだかな。でもその価値があります。



2007年のインスタレーション「Love Transformed into Dots」。


こちらは布製のソフトスカルプチュア。ペニスの形のスカルプチュアで椅子などいろいろなものを覆い尽くすシリーズ。

私は優に数億本を超える男根を作ってきた」(41)

と自伝にありました。

セックスへの恐怖、暴力の因子としての男根への恐怖を、男根彫刻をいっぱい作ることによって、
「その恐怖のただ中にいて、自分の心の傷を治していく」
「そのことで恐怖が親近感へと変わっていく」(40)
自己治療のプロセスだったという。
  …という自伝を読んで、なんかもっとまがまがしい、なまなましい彫刻を想像していたのだけど、なんだ、かわいいじゃないか。

これが一斉に動き出すところをちょっと想像してみる。やっぱりかわいい。胸が熱くなるほどかわいい。



鏡の部屋の一つは、水玉の男根で埋め尽くされています。

「あのちっちゃい水玉の男根(ファルス)」と言っていたら、Kちゃんにウケた。
「とも蔵の口から男根ということばを聞くとは思わなかった」て。


これは「infinity mirror room: Aftermath of Obliteration of Eternity」2009年。
暗い中に行灯のようなLEDの灯りが吊るされて、鏡の壁に映って無限につづいている。

この部屋が自分の家にほしい。

「どのくらいの神秘の深さをこめて、無限は宇宙の彼方に無限であるか。それを感知することによって、一個の水玉である自分の生命を見たい」
(『無限の網』24)

水玉によって「自らも他者も、宇宙のすべてを消去する」というマニフェストは、この展覧会の鏡の部屋に立体的に表現されてます。
彌生さんが一生追求しつづけている同じテーマが、形を変え、ますます洗練されてあらわれる。

言葉でピンと来ない人にも、あるいはそんなマニフェストに興味を持たないでなんとはなしに見に来た人にも、このオブセッションはきっと伝わるに違いないのです。

本当に才能のある人の作るものというのは、能書きがなくてもちゃんと伝わるものなんだ。

かぼちゃが並んでいる鏡の部屋も本当に素敵でした。(かぼちゃの部屋だけは撮影禁止)。

あっそうだ、鏡の部屋でフラッシュをたくと大変なことになるそうなので、くれぐれもフラッシュはオフに。やってみたい気もするが。



最後の部屋は、入り口で水玉のステッカーをわたしてくれて、好きなところに貼り付けられる参加型。


楽しいです。


うちの息子にもステッカーをもっと貼ってみたかった。



わたしも70歳になったらこの赤いかつらをかぶりたい。
それまでに赤いかつらが似合う人になれるように頑張ろう。



この目たちが、とほうもなく好き。この柄のスカーフか毛布がほしい。

この夏シアトルにいらっしゃる方には、超絶オススメの展覧会です。
ぜったい行ってね!楽しいよ!


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2017/07/20

Rainless in Seattle


快晴つづきのシアトルです。もう1か月も雨が降ってないんだって!

毎日、朝起きると雲ひとつない爽やかな空で、雨が降る日もあるなんてことをすっかり忘れてしまいそう。

今年は冬が暗くて長くて、太陽がぜんぜん見られない日々が長かったのだったな、そういえば。

快晴続きだけど、気温は最高が27度Cくらい、最低が15度Cくらいで、家の中にずっと座って仕事をしていると身体が冷えてカーディガンをはおりたくなるくらい涼しい。
真っ昼間にひなたを歩くとさすがに汗だくになるけど。



近所ではジャスミンが満開で、あちこちからとても良い匂い。



ベランダのナスタチウムを、アオムシに食べられないうちに。

何を植えても長持ちしない魔のベランダだけど、今年のナスタチウムは例年よりもすこし長持ちしてます。

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