今朝のシアトルタイムス一面に、「異星人に呼びかけるべきかどうか、それが問題だ」という記事が載ってました。
いえいえ、トンデモ界隈の人びとの話ではなくて、れっきとしたメインストリーム科学者たちの議論です。
宇宙人へのメッセージといえば、故カール・セーガン博士が提唱した、惑星探査機「ボイジャー」に積まれた
黄金のレコードが有名です。
地球の位置、数式、化学式、55言語での挨拶、世界各地の風景や人びとの写真、 そして地球の音楽(ベートーヴェンの第九交響曲も)を収めたこの小さなレコードのことを知って、コドモ心にどれほど衝撃を受けたことか。
科学ってなんてロマンチックなんだ!と感動したものでした。
(その割に、自分で数学や科学を勉強したいとも出来るとも、まーーーるで思わなかったのが残念)
1977年に打ち上げられたボイジャー1号は、つい2年前に太陽系を出たそうです。
いまこの瞬間にも、人間が一度も見たことのない宇宙空間をどんどん遠ざかっていくボイジャー。
いつの日か、異星人が拾い上げることがあるのかどうか。
SETI(Search for Extra-Terrestrial Intelligence、地球外知的生命探査)についてのセーガン博士の小説『CONTACT』は映画化もされましたが、ボイジャー計画から四半世紀以上たった21世紀の今も、異星人からのメッセージに耳をすませている科学者たちがいます。
この記事で紹介されてるのは、
SETI Institute というNPOのDouglas Vakochさんという人。
カリフォルニア州サンノゼ郊外のGoogleの近所に本部があるこの団体では、アクティブ探査、つまり、単に送られて来るかもしれない電波に耳を傾けるだけでなく、こっちから積極的に宇宙にシグナルを送ろうという提案をしてます。
国際協力を得て、地球を代表して送るシグナルの内容にも合意を得、年間百万ドルをかけようという計画。
「積極探査をしたからってエイリアンが攻めて来る危険はありませんよ」
と、このVakochさんは言ってますが、反対している人も多いようです。
民間宇宙事業で有名な
spaceXの創業者イーロン・マスクさんも反対だし、意外にもスティーブン・ホーキング博士も反対なんだそうだ。
つまり、いらないことをして悪い宇宙人が地球に攻めて来たらどうするつもりなのだ、という心配をしているのです。
(このお面たちはシアトル美術館のアフリカの現代作家の作品で、エイリアンとは関係ありません。たぶん)。
SF作家のデヴィッド・ブリンさんは、人類を、スペイン人に滅ぼされた南アメリカの先住民になぞらえて警告してます。
「コルテスに滅ぼされたアステカ帝国みたいな目に遭わないとも限らない」
と言うのです。子孫たちをそんな目に遭わせるかもしれない真似はしないほうが良いと。
うーん。でも、たまたまシグナルを受け取った宇宙人が、おいおいこんなちょろい惑星があるぜ、征服してやろうぜ、とはるばる攻めて来るかなあ?
それだけ進んだ文明のエイリアンにとって地球の何にそれほど価値があるというのだ??
ちょっと地球と人類の価値を買いかぶりすぎなんじゃないでしょうか?
それとも宇宙にはギーガーの描いたエイリアン的な、ゴキブリが巨大化して文明を築いたみたいな、「殺。食!殺!」以外にはなにも意識を持たない生物が繁殖していて、のんきな惑星が電波を飛ばして来るのを手ぐすね引いて待ってるというのか。
まあそういうのが来ちゃったら、人類/地球の運命はそういうものでした、ということじゃないか。
私は、人類の好奇心をして、外に出て行かずには済まないと思います。
この記事の最後に紹介されていた、
フランク・ドレイクさん(SETIの草分けで長老の天文物理学者)のコメントが素敵すぎました。
ドレイクさんはプエルトリコの電波望遠鏡から外宇宙のM13星団にむかって、1970年代にシグナルを送ったことがあります。
そのメッセージが向こうの星に届くまでにかかる時間は、
2万5000年。
それを何者かが受け取る可能性は「無限に近いほど少ない」とドレイクさんは認めています。
しかも文明が存続する時間は約1万年くらいだと思われるから、メッセージを拾った異星人が来てみたら、もう人類はいなくなっているかもしれない。
じゃあなぜそんなことをするのか、という問いに、「好奇心」と答えています。
「私たちだって、古代のギリシア人やローマ人や、ソクラテスたちからのメッセージをいつも受け取っているではないですか。遥か昔にいなくなったとはいえ、彼らの言葉は今でも価値がある。
私たちは未来に向けた考古学をやろうとしているんですよ」
記事のおまけに「良いエイリアン」と「悪いエイリアン」の解説がありました(笑)。
良いエイリアン代表は、もちろんヨーダ師。