2017/08/02

見たことある都市



いつまでニューヨークにいるつもりやねん、と自分でもつっこみを入れたくなりますが、帰ってきたのはもう1か月以上前です。

11日間のニューヨーク。
仕事はあんまり進まなかったけど………楽しかった。

6月末でも相当蒸し暑かったから、今は相当暑いんだろうな、とお天気アプリを見たら、そうでもなかった。今日は28度Cだって。
今週はシアトルのほうが暑いです。今日は32度C。

ニューヨーク最後の日は、2日目のメトロポリタン美術館をあとにしての、セントラルパークをとことこと横切って、別行動だったマダムMと自然史博物館の前で合流しました。

時間がなくて行けなかった自然史博物館。ここでもエジプト展をやってました。

やっぱり巨大。威圧するような建物だった。
建築の大きさというのは、その場に行ってみないと実感できませんね。

特に私が今まで住んでいたのが、ホノルルにしてもシアトルにしても、アメリカの中でも一番新しく、20世紀初頭には完全な辺境だった都市なので、ニューヨークのこういう建物群がその時代の「お手本」だったんだー、というのが実感できました。

たとえばシアトルのスミスタワーとか、キングストリート駅とかを作った建築家や施工主の心にスタンダードとして描かれていたのは、ニューヨークとか東海岸のこういう巨大建築だったんだなあ、というのが、ようやくのみこめた気がする。



自然史博物館の前のルーズベルト大統領像。
インディアンを従えてます。下にね。
「俺についてこい」って西の地平線を見据えてる感じ。
この人の時代はまさに、アメリカが太平洋で存在感を本格的に誇示しはじめたとき。

この博物館が舞台の『Night at the Museum』(『ナイトミュージアム』)ではロビン・ウイリアムズがテディ・ルーズベルト大統領でしたねー。
あのルーズベルト大統領は可愛らしかった。


セントラルパークの貯水池。


Citi Bikeを借りて、セントラルパーク内の自転車レーンもちょっとだけ走ってみた。
爽やかでした。大満足。


10代から20代の頃、すっごくニューヨークに行きたかったんだけど、ついに果たせないまま、ハワイと西海岸というニューヨークからはとおく離れた場所に20年近く住んだあとで、初めて対面したこの都会。

これがなぜかとても懐かしく感じて、初めて行った場所って気があんまりしなかったのです。

 「わたし今ニューヨークにいるんだー。ほんとか?」とは何度も思ったけど、街の感覚は違和感がなく、むしろ「帰ってきた」って気がした。

米国のほかの都市、シカゴやサンフランシスコやニューオーリンズでこういう感じを受けたことはなかったんだけど。

前世で住んでいたんでなければ、数え切れないほどの映画やテレビで見たニューヨークの風景が無意識にくっきりとインプットされているせいかもしれません。



絵本のようにのどかな、夏のセントラルパークの風景でした。

秋のセントラルパークもいつか見てみたい!


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2017/08/01

ノイエ・ギャラリーの育ちの良いお猿たちと激うまトルテ


メトロポリタン美術館のすぐ近くに、ノイエ・ギャラリー(Neue Galarie)という小さな美術館があります。

クリムトやエゴン・シーレの絵があるこぢんまりしたギャラリー、とニューヨーク通のAさんにきいていたので、ここは是非行きたいと思い、2日目のメトロポリタンを早めに切り上げてこっちにも行きました。

ここは館内撮影禁止なので、上の写真のクリムトはメトロポリタン美術館のです。


外観の写真を撮り忘れたので、ギャラリーのサイトからお借りしました。
入り口にはドアマンがいてほんとに邸宅風。

邸宅を改造したほんとにこぢんまりしたギャラリーで、しかも改装中で1フロアしか開いてなかった。


この絵がありました。豪華絢爛。

ここの1階にあるカフェ・サバルスキーで、閉館後にマダムと軽いお夕飯。
ニューヨーク最後のごはんでした。

ザッハトルテが有名で、昼間は行列ができるのらしいけど、もう7時くらいだったので空いていた。


クラシックな店内。お客は白人ばっかりで、五番街の超高級アパートに住んでますみたいな感じのおば様がお金持ちオーラを漂わせておられました。

すぐとなりの席に座ってたのは中年女性2人とそのお嬢さんたち、11歳くらいかな。
ブロンドの可愛い子たちなんだけど、むっちゃくちゃお行儀が悪く、調子にのって猿のように店内を走り回ってウェイターに注意されていた。
お母さんたちは別荘の話に夢中で一向おかまいなし。

こういう子たちがあと数年すると『ゴシップガール』 のお嬢ちゃんたちみたいになるんだよきっと。


アボカドと蟹のサラダにいたしました。
美しい。がお味はごくふつう。 クラシック。


 奥に写ってるメキシカンのおっちゃんのウェイターは機嫌が悪く、「お前はここに何しにきたのか」というような態度でじっと見るのである。
この人はココに立っているのが主な仕事らしかった。

サーブしてくれたウェイターの兄ちゃんは愛想がすごくよかったけど。



トルテは何種類かあって、これはラムの効いたもの。なまえは忘れました。マダムMと山分けにしましたが、甘さ控えめで濃厚で、本当にうまかった〜〜〜〜。

これまでの人生で築いてきたチョコレートケーキとは何かについての考えを根本から改めたくなるくらい、美味しかったですよー。

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2017/07/31

お尻コレクション、マンティコア、飴屋


メトロポリタン美術館、閉館後は観光客が難民のように群がり、大道芸人がエンターテイメントにやってくる。


 メトロポリタンの美しいお尻たち。悲劇の家族のお尻。


くまの家族のお尻。アメリカ館のカフェテリアのところ。
2日連続で、このお尻を眺めながら休憩した。


でもやっぱりナンバーワン美しいお尻はペルセウス。


カレーの市民たち。


大きな手が迫力です。

18世紀のオーストリア製「マンティコアの像」。

ビートたけしに似ておる!

マンティコアってなんだ?とGoogle先生に聞いてみると、

(以下ウィキペディア)

その姿は、体の色は赤く、尾はサソリのそれに似た形状で、そこに毒針があり(毒が無い代わりに矢のように飛び散る24本の棘と数がはっきりしているものや、太い1本というものもある)、それで相手を刺したり相手に槍のように投げつける。3列に並ぶ鋭い牙を持つが、顔と耳は人間に似ている。大きさはライオンぐらいである。走るのが非常に速く、人間を好んで食べる。

…だそうです。ふーん。しかしこのロココのマンティコアは、あまり凶暴そうではないね。



干支の人たち。

そうそう、秦の始皇帝陵で出土した武士たちも来ていました。
展示を見ていると、中国人のおば様から中国語で何か尋ねられ…わかりませんでした。

中国古代の鏡。

美術館は連続2時間が限度かもしれない。それを超過すると、なにかもうどこかがパンパンになって非常に疲れる。


1日半で、いちおう隅から隅まで歩いたものの、エジプトの部屋とかギリシャの部屋とかは文字通り通過しただけ。
モダンアートもアメリカ棟も、さーっと見るくらいの時間しかなかった。


これも有名な、1851年に描かれたロマンチックな絵『デラウェア川を渡るワシントン』。独立戦争の時のジョージ・ワシントンを描いてるやつです。

すんごい巨大な絵だった。今回のニューヨーク旅行では、19世紀のニューヨークの帝国趣味をじっくりとっくり拝見した感じでした。



そしてこちらは1893年にロバート・ブラムさんという画家が描いた『飴屋』。
1890年(明治23年)から1年半日本に滞在したという。



この時代のリアルタイムの記録をカラーで見ることってないので、これはちょっと新鮮で衝撃的でした。
飴細工やさん、わたしは実際見た記憶はないんだけど、うちの母が子どもの頃にはよくお祭りなんかに来てたそうです。

こういうおっさんが、吹きガラスのようにぷぅぷぅ吹いて飴を精巧な形に作るのだとか。
衛生的にはちょっとどうなのよと思うけど。

くらいついて見ている子守の子どもたち、爆睡する赤ん坊、牛丼屋、車屋さん。
うちのお祖母ちゃんもこんな感じで飴屋さんをかぶりつきで見てたのかもー。

こちらはゴヤの絵の一部。
鳥をかぶりつきでみる猫たち。


エル・グレコの部屋。

そういえば、12歳のクローディアは家出中にも「今日はこの部屋のお勉強をしましょう」て、弟と一緒にカテゴリー別に美術の勉強をしてました。

お尻とか猫とか変なケモノを見てよろこんでるおばちゃんとは違いますね。

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2017/07/30

家出少女の隠れ家



メトロポリタン美術館は広いよ、1週間くらいないと全部は観られないよ、ときいていたのだけど、いや本当に広かった。

ヨーロッパ彫刻、ヨーロッパ絵画、中世、モダンアート、アジア・アフリカ、ギリシャ・ローマ、エジプト、アメリカ美術。
どの部屋もちょっとした小美術館以上の規模でした。


そして天井が高い。3階分吹き抜けのスペースもたくさんあって、とにかくスケールが大きい。それこそ、モルガンさんの頃の、さーこれからブイブイ行きますよーというアメリカの勢いが感じられますね。


このスペースの使い方も贅沢だよねえ。


スターバックスのサイレンさんがいた!
16世紀のイタリアのもの。


 もう教会ごと持ってきちゃいました的な。


この柵は18世紀スペインのものだそうです。教会で、合唱隊のいる場所をわける仕切り。
『市民ケーン』のモデルになった新聞王ウィリアム・ランドルフ・ハーストさんの財団が寄付したもの。


「American Wing(アメリカ棟)」の吹き抜け。
子どもの頃、カニグズバーグの『クローディアの秘密』という本が好きだった。

12歳のクローディアが弟を連れて、メトロポリタン美術館に家出する話。

バイオリンのケースに着替えを詰めて、閉館時に人がいなくなる時にこっそりと物陰に隠れ、昼間は何食わぬ顔をして美術館を見て歩き、展示してある彫刻について一大発見をする…という冒険の物語。

たしかにこれだけだだっ広いなら子ども2人くらい迷いこんでもわからないかも、なんて思えてくる。1968年の話だから、今よりももっとのんびりしてただろうし。

この話にも、美術品コレクターで、彫像を美術館に寄付したお金持ちの老婦人が出て来るのだった。


手元にいま本がなくて、細かいところはうろ覚えなのだけど、 展示されているマリー・アントワネットみたいなベッドに寝てみたらあんまり寝心地が良くなかった、みたいな場面があったような。
 


そして、たしかクローディアがお風呂の代わりに噴水で水浴びをする場面があったと思うのだけど、その噴水ってこれかしら?


あまりキレイな水ではないよ。

また読み直してみよう。


マダムMも「ここに住みたい♡」とおっしゃってましたが、でも夜中に一人でここに隠れているのは嫌だ。

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2017/07/29

アーヴィング・ペンの吸い殻


メトロポリタン美術館で見たもう一つの企画展は、アーヴィング・ペンの写真展。
これは点数はそんなにたくさんなかったのだけど、充実でした。

私がむかしから大好きな写真家ーの一人。広告写真の神様的な存在です。
亡くなったのは2009年。わりと最近だったのね。

アーヴィング・ペンといえば、Cliniqueの広告写真が有名。


1968年からクリニークの仕事をしていたそうですが、わたしが最初に見たのは80年代後半かな。一時期、日本のファッション雑誌のほとんどが、表紙裏の見開きにクリニークの広告を掲載していた気がする。それが本当に衝撃的だった。

たしか最初に見たのは黄色いローションの写真で、とろりとした液体が生きもののようにリアルで、なんだかわからないけどものすごい迫力だった。

こんなにシンプルなモノをこんなに印象的な写真にすることができるんだ!と、毎回食い入るように眺めていました。

そしてたしか、その頃、東京のどこかでやったアーヴィング・ペンの写真展に行って、そこでまた衝撃を受けたのだった。
 


トルーマン・カポーティのポートレート、1948年。

この後ろが鋭角に閉じた荒々しいほどシンプルな背景が、当時ものすごく斬新だったのらしい。被写体を追い込むようなセット。

でも多分、心理的な意図よりも、静物写真と同じに絵のすべてをコントロールしたいというあくなき執念から生まれたのではないかと思う。


1940年代はじめにヴォーグ誌のアートディレクターだったアレクサンダー・リーバーマンに呼ばれてヴォーグの誌面のレイアウトの仕事を始め、本格的に写真を撮るようになったのはその後なのだそうで、2年後には表紙を撮っている。

ファッション写真も広告業界も黎明期。今から考えたらのどかな世界だったのかも。


ペルーのクスコに旅行して、地元のスタジオを借りて「ちょっと撮らせて」と地元の人を撮ったポートレート。


太めの人のヌード。1949〜50年。
人も静物も、対象そのものの形やありようと、それをどうしたら完成した絵にできるかということにひたすら関心があった人なのだと思う。



 ピカソ氏。


昔、東京で見た展覧会で一番衝撃的だったのが、この煙草の吸い殻シリーズ。

ニューヨークの路上で拾ってきた吸い殻を撮影した連作。
これが広告写真と同じように緻密な構成で撮影され、引き伸ばされて、壁を飾っている。

えーこんなのアリなんだ! と驚き、靴で踏み潰されてマンホールの横に落ちていたような吸い殻が、隅々までコントロールされた画面に置かれると、珍妙で美しい物体に見えてくるのに、ほんとにびっくりした。 精密に現像されて焼かれた「もの」としての銀板写真の美しさを初めてつくづく感じたのも、この連作でした。


このシリーズは1972年の作品。ペンは煙草が嫌いで、メンターとして敬愛していたアートディレクターのアレクセイ・ブロドヴィッチが(ヘビースモーカーだった)が癌で亡くなった後にこのシリーズを作ったそうです。



まだ煙草会社は煙草が健康に悪いと認めず、アメリカがん協会との間で激しいバトルを繰り広げていた時代です。

『マッドメン』にもラッキーストライクの最悪ないじめっ子クライアントがでてきました。

またこの写真が見られて嬉しかったー。やっぱりすごいです。

クリニークの写真を見て以来、世の中にはすごい写真家がいるんだー!と、私の中では崇拝の対象だったのだけど、そのわりに、すげー!だけで満足して、特にこの人の仕事についてもっとしっかり知ってみよう!とかにはならなかったところが残念な、80年代のわたしでした。今あの時のわたしに会ったら、8時間くらいかけて説教したい。でも聞かないんだな、これがきっと。


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