アメリカ現代史の教科書を読んでいたらこんなくだりがありました。
The hysteria increased, the campaign reached absurd levels. In Montana, a school barred a history text that had good things to say about medieval Germany. Menus across the nation changed German toast to French toast and sauerkraut to liberty cabbage.
James L. Roark, et al, The American Promise: A Compact History Fourth Edition (Boston: Bedford St. Martin’s, 2010),553.
<<こうしたヒステリー状態はますます過熱し、(反ドイツの)キャンペーンは馬鹿げた様相を呈するまでになった。モンタナ州の学校では、中世のドイツについて肯定的に述べた歴史の教科書が禁止された。国中のレストランでメニューの「ジャーマントースト」が「フレンチトースト」に、「ザワークラウト」が「リバティ・キャベツ」に改められた。>>
…えぇぇぇぇ。
フレンチトーストって、もとは「ジャーマントースト」だったんですねぇ!
そういえば、フランスでフレンチトーストってあんまり食べてないっぽいのに、どうしてフレンチトーストっていうのかな、と、ずっと前にふと疑問に思ったことがありました。
これは第一次世界大戦中、アメリカが重い腰をあげてヨーロッパへの派兵を決定して、国民を戦争にかりたてるために政府が行なった愛国/反独キャンペーンが暴走し始めた、というくだりです。
これって、ええーと、どこかで聞いたような…。
つい数年前にも、ありましたねーー。
「フレンチフライ」→「フリーダム・フライ」 と呼ばせようとした大統領側近が!!!(笑)
百年近くたっても、まったく同じことをしているところが……。
フリーダム・フライや「リバティ・キャベツ」(笑)は、定着しなくてほんとうに良かったです。
さすがにアメリカ人の中でも、「これはいくら何でもかっこ悪すぎ」と思う人が多かったに違いありません。
なぜリバティ・キャベツ(笑)が忘れられる中「フレンチトースト」が定着したのかは謎ですが、おそらく、ジャーマントーストよりフレンチトーストのほうが少しおいしそうな響きだからではないでしょうか…。
第一次大戦中、米国内のドイツ移民に対する嫌がらせは相当なもので、リンチにあって殺された人もあったそうです。
先日Netflixのストリーミングでたまたま観た『Sweet Land』という映画も、この時代のドイツ移民を描いていました。
アメリカ中西部の、逢ったこともないノルウェー系農民のところへ「 写真花嫁」として大きな蓄音機を抱えて海を渡り、嫁いできた娘。
ノルウェー娘が来るとばかり思っていたらドイツ人だったことがわかり、牧師には結婚式を挙げてもらえず、作るコーヒーが濃すぎる、習慣が違いすぎる、敵国民で思想が危険、といろんな難癖をつけられ、教会のコミュニティからも追い出されてしまう。
寡黙で実直な農民の夫と意思が強くてひるまない明るい妻、軽率だけれど心優しい隣人、だだっぴろいミネソタの寂しい風景がしみじみ来る映画でした。
ひろーい空とひろーい農地の真ん中にぽつんと建っている小さな家の風景も、印象的です。
この映画にはフレンチ/ジャーマントーストは出て来ませんでしたが、妻が初めてつくってくれた料理を食べて無言で感動した夫が
「Is this German food?」
ときくと、妻が
「No. Just food」
という場面がありました。
どこの国のとか関係ない、ただの食べもの。でもおいしいでしょう、ということ。
妻は英語がまだほとんどしゃべれない設定なので、会話がとても少なく、淡々としたストーリー運びです。
隣の奥さんと女二人で、とってもおいしそうなパイを食べるシーンも好きです。
『かもめ食堂』や『バグダッド・カフェ』が好きな人にはお勧め!
いつもありがとうございます!
良かったらまた来てくださいね。