久しぶりに舞踏をみてまいりました。
場所はSODOのTeatro de la Psychomachia。
マリナーズの本拠地Safeco球場のすぐ手前のストリップ劇場の並びにあるスタジオ。
入り口は、目立たない。看板もでていない建物の奥の階段を、「ここでええのかな?」と用心しながらのぼった先にあるドアの後ろに、意外にも広い、高校の教室くらいのスタジオが広がっている。
こんな都会のこんな表通りにこんなアンダーグラウンドな(2階だけど)秘密めいた場所があるとは。シアトルもまだ捨てたものではありません。
この日は、「暗黒舞踏」の祖、土方巽さんのメモリアル。
入り口には祭壇のようなメモリアルのコーナーが作られてあり、写真や亡くなったときのお顔のスケッチなどが飾られていました。
1986年に亡くなった土方巽さんの舞台、わたしは残念ながらいちども見たことない。
スタジオの右にはとても妖しい祭壇が。可愛いドクロがいっぱい。
ニューオーリンズのブードゥー博物館を思い出した。
ここのあるじ、ヴァネッサさんは長年ニューオーリンズに住み、ブードゥーを実践しているのだそうです。
両肩に蛇のタトゥーをまきつけたヴァネッサさん、「スピリットたちのお世話をしている」というだけあって、なるほどの貫禄。
本日の演目はまずJoan Laageさんのソロ舞踏。こちらはジョアンさんの意向により撮影なし。
困惑したように生まれ出て、舞台の上で身体と苦悩を発見し、いろいろに変化するいきものが、最後にニワトリになって去っていく。赤いしっぽもちょろりと出て来る。
ユーモラスなエンディングでした。
ちょうど、隣にいた20代なかばくらいの男の子Ariくんと、開演前にニワトリについて話をしていたのでそのシンクロにもびっくり。彼はマーサーアイランド育ちで、英国で舞踏をはじめて学び、シカゴとインドネシアで8年くらい舞踏を学んだり教えたりしてシアトルに帰ってきて、今度子どもたちのために、ニワトリと恐竜をモチーフにした舞踏のワークショップをやるんだ、といっていた。
ニワトリは恐竜の遠い親戚。まずニワトリになってみて、恐竜を想像するワークショップ。
それはすごくおもしろそう。
ジョアンさんのソロのあと、10分間ほど土方巽さんのモノローグが流れる。
観客は瞑目してそれを聴く。そのために、目の上に縛るサラシが配られた。
土方モノローグの間に舞台中央にいつの間にか登場し、蛹になりかかった蚕のようにからまってじっとしている二人の舞踏家。
静かに舞台が始まると、蚕たちはゆっくりと二つにほどける。
Lee Aoiさんは、一升瓶をかかえた酒場の女。
黒いハイヒールをぬぎ散らかして、昭和の歌謡に合わせて、おどる。
安酒場の女なのに、Aoiさんがおどるとなぜか小さな可憐な少女にもみえて、そのギャップと同時性がぐいぐいくる。
少女が娼婦でもあり、ケバいおばさんが聖処女でもある。同時にあり得る。
女が自分にもとめているのは、いつもそのような、アンバランスで相反的なものではないかしらね?
いっぽうの薫さんは、無邪気ななにものかから、菩薩のような、聖母のようなかたちにおさまっていく。
最後はプッチーニの(<たしか)美しいアリアでしめくくり。
薄い磁器のような、ほんの一瞬だけ存在する美しいもの。
ゆらぐ、静かなカタマリとしての身体と心。
そのあと、観客たちが舞台に招待された。
観客の中のダンサーさんたちが、とても自然に無言で舞台に出てきて、アリアにあわせて一斉に即興でゆらゆらし始めるのに、鳥肌がたった。
この帽子の子が、ニワトリ青年、Ariくん。ダンサーの子はみなこうなのか、スーパーに繊細で知的で穏やかなひとたちだ。
休憩のあとは、Vanessa Skantzeさんの舞踏。
Joy Spainさんのベースとボーカルのライブ演奏で。
ヴァネッサさんのは、とても力強い、息苦しいような舞踏だった。
身体の中から、思わぬ激しく気味わるいものが、のたくり出て来る。それがいつの間にか、自分になっている。みたいに見えた。
「「そうらみろや、息がなくても虫は生きているよ。あれをみろ、そげた腰のけむり虫がこっちに歩いてくる。あれはきっと何かの生まれ変わりの途中の虫であろうな」。言いきかされたような観察にお裾分けされてゆくような体のくもらし方で、私は育てられてきた」
(土方巽 『病める舞姫』)。
自叙伝だそうです。読んでません。すみません。この冒頭部分だけネットでみつけたのです。
このくだり、この日のヴァネッサさんの舞踏にぴったりな気がする。
楽しゅうございました!やっぱりときどきは街に出かけるべきだのう。
今回も、写真&ビデオ撮影有難うございました~。
返信削除土方の「病める舞姫」、こんどお持ちしますよ。たしかに、ヴァネッサさんの舞踏には、「虫の歩行」の匂いがありましたね!
薫さん、わー、ありがとうございます。
削除ビデオちゃんと撮れていたとよいのですが。
たいへん楽しい舞台でした。ありがとうございました。