やっと先日、中間試験のペーパーを出し終わりました。 先週は仕事やら色々と一緒に立て込んで、なんだかんだてんてこまいでした。いつも「降れば土砂降り」です。
趣味の大学、今学期は人類学を受講しています。この夏は2コマ取ろうと思ったけど、やっぱり無理だった。
講師はハワイ出身のトランスジェンダー女性(男性から女性になったほう)で、講義は「カラダ」を中心にした内容。面白いです。
中間試験のお題は、なんでもいいからマイノリティな人びとのグループについて考察して「カラダ」の視点から論じてみろというもの。そこで日本の「ヲタク」を選んでみました。
私は高校のときに漫画研究会に所属してみたこともあったので、オタク文化の片鱗くらいはかじって育ったのですけれど、「コミケット」にも行ったことはないし、ガンダムも全部見たことないしエヴァンゲリオンも良くわかんなかったし、なんとなくニオイだけ知ってるけど中に入りこみきれないで遠巻きに見てる感じでした。
それから数十年、オタク文化も変化と発展を遂げ、今では世界のすみずみにまでポケモンとジブリが浸透しているこの頃。1000ワードのレポートのために10時間ほどさらっとリサーチしただけですが、すごく面白かった。ほんと底なしに面白いと思いました。
宮台真司さんとかが論じてる書籍も目について、面白そうだと思ったけど、今回はなにしろなぜかレポート書くのにまる2日しかなかったので、そこまでは手が回らず。
まずヲタク文化総本山というべき(であっているのだろうか)コミケットについては、たまたまネットで見つけたNHKのドキュメンタリーが秀逸でした。
1975年に700名から始まったコミケットは今では年2回開催、3日間の動員が55万人だそうです。
今でも設置から救護所から自主規制の検閲まですべて3000名以上のボランティアによって運営されているという裏側と、「オタク」のステレオタイプにはまらない絵本作家の女性の出展者などにも取材して、温かいまなざしのドキュメンタリーでした。
ヲタク陣営からも、このドキュメンタリーに対しては色メガネの面白半分でない親切なドキュメンタリーだった、とよろこぶ声が多かったみたいです。
あと矢野経済研究所というとこの「オタク市場に関する調査結果」というのが公開されてて、これも興味深かった。
男女1万人対象のアンケートで「自分をオタクだと思う」という人が(定義はほんと人それぞれだと思うんですけど)約4分の1。これは意外に多いような。
そして、その自称オタクの中で「独身で恋人なし」が半数以上、「今までパートナーを持ったことがない」人が35% 。これはほぼ予想通りの結果というべきか、意外に少ないというべきか。
これはまたハードディスクのアーカイブから発掘してきたハワイの写真たちです。アオサギはシアトルでも同じ顔。 |
ステレオタイプなヲタク像は、リアルな恋人がいなくても画像の若い女の子と想像の中またはエロゲでできてれば満足、というものですけど、そんな先入観をわざわざ丁寧に裏書きしてくれるかのように、昨今のヲタク文化では「俺はこのヒトにコミットした」というほど大好きキャラクターを「ヨメ」と呼ぶそうです。
「ボーイズラブ」大好きの「腐女子」という名称もそうだけど、自分をいったん薄笑いの対象に入れておきながらも内側はメラメラと萌えている。なんという複雑な手続きではないでしょうか。
『艦隊これくしょん』という角川書店が作ったゲームが以前から気になってたのでこれを機会にちょっと調べてみました。もとよりアメリカからはアクセスできないのですが、大日本帝国海軍の実在した戦艦や駆逐艦や空母や巡洋艦などを萌えキャラの女の子に擬人化したゲームです。
プレイヤーは唯一の「提督」となり、この「艦娘」たちを集め、育て、経験値を上げて海戦に臨むわけです。
このゲームってなんだか何重にも倒錯しているようにみえるんですけど、すでに280万人が登録してるんだそうで、この『艦これ』をテーマにしてるコミケの出展ブースがダントツで多いことから見てもその人気のほどが伺えます。現在はサーバーのキャパが追いつかなくて、新規のプレイヤー登録受付が難しいのだそうです。テレビアニメにもなってる。
それでもってこの「提督」が、お気に入り艦娘を選んで「ケッコン」できるという機能が去年追加されて、多くのファンからは感涙をもって迎えられる一方で一部からはドン引きされているというのも、とほうもなくブキミで、面白い…。
そしてお気に入りキャラを自在にからませてドラマを作りあげる「二次創作」を通して、ファンはそのコンテンツの体験を深め、それを共有することでさらにコミュニティの中で共感が増幅していくのだと思うんですけど、やっぱりインターネット出現後、決定的になにかが変わったんじゃないかなって気がします。
二次創作物の多くはハードコアポルノで、特に幼児や小中学生をレイプする内容のマンガとかもけっこう普通に流通しているのは、アメリカの生活感覚だとこれは即刑務所行きでノープロブレムと思うほど異常に感じるんですが、ロリコンポルノを含め「表現の自由」に関して何かつつかれると、ヲタク陣営はものすごく過敏に反応してスズメバチに襲われたミツバチの巣のようになってしまうのも、興味ふかい。
もちろん、 皆がまったく同じ価値観を持っているわけではないし、自らをオタクと認めるコミュニティの中でもいろんな意見や感覚がグラデーションになっているのに違いないのですが。
オタク文化って定義はそれこそ色々だと思いますが、「ロマンスとセクシャルな満足をリアルな関係の上に求めない」 というのも、すくなくともコアな一部には当てはまる。
ある意味潔ささえ感じてしまいます。
今の日本でオタクが軽く4分の1いるとすると、数十年後には日本人口の半分はオタクになっているかもしれない。
そうするともはやマイノリティではなく、オタク文化はイコール日本の価値観になる。
リアルでケッコンする人は人口の4分の1くらいになり、逆に社会のマイノリティになる日が来たりして。
偶然たどり着きました。私も米国在住のフリーの翻訳者です。小さな町にいるので息抜きの場も少なく、こちらのブログが憩いの場となりました。美しい写真と知性あふれる文章、まるで雑誌の頁をめくるように、過去記事をひとつずつ拝見しております。これからも楽しみにしています。素敵なブログをありがとうございます。おかげで一人でパソコンに向かう日々が楽しくなりました。
返信削除ありがとうございます(´;ω;`)(´;ω;`)(´;ω;`)
返信削除こんな能天気なブログでも楽しんでいただけて感謝です。知性はぜんぜんあふれておりませんが、笑って頂ければとても嬉しいです。どうぞよろしく~。
お返事ありがとうございま~す! 翻訳者といってもまだ初級者なので、Tomozo様は大先輩。単語帖サイトも楽しく拝読しています。日本語がすっと出てこなくて困っている私は、Tomozo様の読みやすくて素敵な文章にあこがれます。ブログタイトルのお写真の少年らしきシルエットからご家族はアフリカ系かなって思ってこちらにお邪魔したのがきっかけです。私はアフリカ系の夫と二人暮らしです。警察によるアフリカ系少年射殺事件の過去記事を読み、私も夫のことが心配でお祈りして暮らしているので共感して読みました。ほかにもTomozo様の視点が自分と共通する部分が多く、勝手に親近感を抱いております。
返信削除勝手がわからなくて匿名になってますが、読者Sでどうぞよろしく。
(英語の生活の中でどうやって日本語を磨いておられるのか興味津々です。)
S様、重ねてありがとうございます。
削除アメリカは州によってずいぶんと生活感覚が違いますよね。うちの息子はハワイで育ってシアトルで高校生活を過ごしているので、アフリカ系としては「温室育ち」といっていいと思います。シカゴやロサンゼルス、あるいは南部のブラックカルチャーでは当然の常識を知らないので、大人になってもっと差別や区別の激しい地域に出て行った時に慣れない差別に逆上してつまらないことにならなきゃいいけどなんて余計な心配をしてみたり。
親近感を感じていただいて嬉しいです。いやいやいや、在米そろそろ20年!になるのですけど、英語も相変わらず怪しくてもう新しい単語が覚えられない上に漢字もますます書けなくなりつつあり…。
読むのは病的に好きなのでなるべく日本語のものも英語のものもバランス良く読みたいと思いつつ、希望する10分の1もなかなか読めません。
読者S です。翻訳をしながら昼間の休憩時にこちらのブログを訪問するのが日課になりました。
削除私の夫はアフリカ系人口の少ない北部のリベラルな街で育ったので高校生になるまで人種の自覚がまったくなかったそうです。でも大学生のとき、何の違反もしていないのにパトカーがついてきたりと、いろいろ体験して、この国はDual realtiyの国なんだってことを自覚したそうです。大学生の頃はマルコムXの自伝とかむさぼり読んでましたよ。(笑) 息子さんのこと、心配になるのすごくわかります。厳しい社会ですよね。この件を語りだしたら長くなりそうです・・・
日本語磨きはやはり読書なのですね。私の脳みそは日本語と英語のスイッチがうまく切り替わらないので、自分でどっちを使っているのかわからなくなることがあります。(汗)通訳技術も身につけたいと思っていますがこれじゃあ無理ですね。
Tomozo様の映画批評と読書感想の記事が大好きです! またおもしろい本を読まれたら紹介してください。
『オタクの世界』、今どきの人類学の授業はおもしろいことをやるのですね~ 私、大学で人類学が専攻でした。当時はこんなおもしろそうな課題なかったです。
またコメントしに遊びに来ます。
Sさん、こんにちは~。日課にしてくださっているなんて、しかも拙い感想文を読んでくださって、恐縮です。
削除自分の書いたものってあとから読むと奇声を上げて走り回りたくなるほど恥ずかしくなることが多いので、一体なぜブログなんか書いてるのかと自問するのですけど、自分の頭にあったことがどこか別の場所にいる方の頭の中味とつながることができると、嬉しいなあと思います。
Dual reality。まさに。ていうか何種類もリアリティがありますよね。
同じことをしていても肌の色で、見た目で、年齢で、社会の反応がまったく変わる。
シアトルもスーパーがつくくらいリベラルな土地なので、ここで高校大学時代を過ごしてこれがアメリカの常識だと思ったら大間違いだったてことを、そのうちうちの息子も肌で感じることになると思います。
人類学を専攻されたんですね!人類学にはずっと興味があったのですが、授業でとったのは初めてで、やっぱり面白いです。なんでもありって感じです。