2016/07/13

広重ビビッド


東京到着2日目に、急いで行った広重展。『広重ビビッド』ってタイトルがいい。

到着日の翌々日が、展覧会の最終日でした。
いろいろ予定があったのだけど、ずーっと前から広重さんの浮世絵、本物をまとめてじっくり見てみたかったので、無理を押して行きました。なかなかこんな機会はめぐってきませんから。

最終日でかなり混んでいて、絵の前に行列ができてはいたけど、耐えられないほどではなかった。
今年、上野で開催された若冲展が数時間待ちの超盛況だったそうですが。
日本の人はほんとに美術展が好きですねー。

原安二郎さんという方のコレクションという、摺りたてみたいな超美品ばかりで、目が幸せでした。

ほんとにビビッド。

板目がくっきり!

版画の技法についてはまったく何にも知りませんが、なんだかとにかくすごいらしい(笑)!

有名な「名所江戸百景」と、そのすぐ前年に製作された「六十余州名所図会」という、きいたことなかったシリーズが中心。

これは全国の名所を描いたもので、もちろん自分で全国の名所に行ったわけではなく、他の人が描いた絵図をリミックスした作品。これが70点。

そのあと、1856年から1858年の2年にわたって「名所江戸百景」120点を出している。

会場でまとめて見ると、「六十余州名所図会」を作った後だからこその「名所江戸百景」だったのだというのがよくわかるように思いました。


「六十余州名所図会」にも、嵐や渦巻きなど自然のパワーをフィーチャーしたケレン味のあるドラマチックな構図が出てくるけれど、全体としてはおとなしい、名所の解説絵図。
田舎の風景ですから、基本、のどかです。

それが「名所江戸百景」になると、いきなりアバンギャルドで超都会的な絵に。
「六十余州名所図会」での試行錯誤を全開にした感じ。


亀が吊るされてる「深川萬年橋」とか、ゴッホも真似した「亀戸梅屋舗」とか、鷹の目線で俯瞰した「深川洲崎十万坪」とか、ババーン!これでもか!的な、カッコ良くて悶えるしかない構図が次から次へ。広重さん、まさに乗りまくりの晩年だったんですね。楽しかっただろうなあ。


「名所江戸百景」は、大都市江戸の爆発寸前に濃縮された文化の空気があってこそのrん作だと思う。200年続いた遊郭の文化も背景にそれとなく漂ってます。

(これは名所江戸百景ではないけど、広重さんの、猫が窓の外を見ている絵がとても好き。あの窓のところに投げ出された手拭いやかんざしなどが、ものうい遊郭の洗練を雄弁に語ってます。)


フランスの画家たちは彼の作品を見て、心底たまげたことだと思う。

一度も見たことのない、野蛮なはずの非文明国に、超がつくほど洗練された文化と都市生活があったことが、この絵を見れば一目瞭然で分かってしまう。

そして考えたこともないパースペクティブと大胆な構図が提案されている。

浮世絵がなかったら印象派絵画もずいぶんつまらないものになってたかもしれませんね。


今まで気づかなかったけど、広重さんの「名所江戸百景」と印象派登場の間には、ほんの20年足らずしかなかったんですね。

「名所」が1858年、第一回印象派展が1874年だから。

展覧会では、広重のほかに北斎や国芳の作品もあった。
富獄三十六景の赤富士とか富士山に大波の絵とか、たぶん本物ははじめて見たと思う。

大満足でしたが、ぐったり疲れました。


必ず買ってしまうクリアファイル。絵葉書はふだんは買わないけど、今回は例外。
カタログは、この後東北旅行を控えていたもので、重さが気になり買いませんでした。
ああでも買っとけば良かったな…。


会場のサントリー美術館がある東京ミッドタウンも、いろいろ見ごたえのあるビルです。こんな素敵な、苔とシダの盆栽が飾ってあった。これ作ってみたい!

にほんブログ村 海外生活ブログ シアトル・ポートランド情報へ

バンクーバー経由でシアトル帰着時の入国検査など


きのう、日本からシアトルに帰ってまいりました。

気温は20度Cを下回る!さむぅ! 家の中で長袖と靴下が必要だなんて。夢のようだ!
スーパーの花売り場も、もはや秋の気配。

東京ではできることなら何も着ていたくない蒸し暑さでした。外を5分歩いただけでTシャツが絞れるほど汗かいた。


今回は2年ぶり、1ヶ月の滞在でした。
仕事上でもプライベートでも、予定していたより多くの人に会えて、予定していたより多くの場所に行けて、疲れたけど嬉しかった。

ほんとに困ったおばさんであるのにもかかわらず、わたしの周りには信じられないほど心優しく面白い人びとがなんと多いことかを再確認。感謝。いろいろご迷惑おかけしました。

息子は2週間滞在して先にシアトルに帰ったので、帰りはひとり。そのため大荷物を持って帰るのが使命。

はらんだセイウチのような有機的形状になった大型スーツケース、靴と本を極限まで詰め込んだ古いレスポのバッグ(息子がサイズ10.5の靴を2足忘れていったためさらにかさばった)、機内持ち込みの小型スーツケース(規定の10キロを2キロ上回り空港のチェックインカウンターで大汗かいて詰め替え)、そのほかにラップトップと身の回り品をエコバッグにぎゅうぎゅう。えぇ、いつも荷物の多い女です。

便座のようなかたちの品物は、アメリカ人がよく空港で首からさげて歩いている携帯まくら。かっちょ悪いけどこれは快適でしたよ。歩く時とても邪魔だけど。


帰りはボーイング777でした。
もちろん窓側座席を指定したのに、翼の真上だった…。

でもこの矢印とリベットが並ぶ翼の金属板がカッコ良かった。リベット萌え、矢印萌え。

アラスカのアリューシャン列島につづく半島を通過するときには、きれいな円錐形の火山がみえた。アニアクチャク山というらしい。コディアック島という島では、夢のような水色の入江が入り組んだ景色が広がっていました。ああ行ってみたい。


成田からバンクーバー経由、4時間のレイオーバーは長いと思ったけど、セキュリティを通って入国審査を受けるのに1時間以上はかかったので、2時間以内だとかなり忙しいかもしれません。

バンクーバーでの米国入国審査は、簡単でした。税関と入国審査が一体になっていたらしい。

預けた荷物を一度ピックアップして税関に持っていかねばならないのかと思ったら、入国審査官がパスポートや書類をチェックしながら預け荷物のナカミを画面で確認していたようです。
よほど怪しいものがあれば別室に連れていかれるのだと思うけど。

今回、先に帰った息子にパナソニック製のフィッシュロースター「おさかな煙らん亭」を預け荷物として運ばせたら、入国審査で
「いったいこれは何だ」
と質問されたと言ってました。

さらに電圧変換機を入れたスーツケースは開けてチェックされたあとがあったらしくテープが貼ってあったそうです。
20代の若者がコイルが詰まった機器をスーツケースに入れてたら、それは怪しかったに違いない。でも別室に連れていかれることなく無事通過したそうです。

靴と本をパンパンに詰めたバッグを開けろと言われたら詰め直すのに20分くらいかかるかもしれないなあと憂鬱だったのだけど、そんなわけで、シアトル空港到着まで荷物は見ずに済みました。

右腕に大きなオレンジ色の鯉の刺青をした入国審査官に
「ほんとにまだ米国に住んでいるのか」
と威圧的に聞かれた。
「どのくらい行っていたの? 1ヶ月? ずいぶん長いね」
「えー、短すぎですよー」

グリーンカードであまり長く国外滞在すると色々言われるのでしょう。今のところそんな心配はないが。 半年くらい日本に住みたいけどなあ。



エアカナダのエコノミー席、行きの便の機内食はとくに記憶に残ってなくて、かろうじて食用に適するレベルだったと思う。帰りの便は意外においしかった。れんこんまで載ってましたよ。
でもお茶はおいしくない。成田でペットボトル入りを購入がベスト。


朝食は鶏入りおかゆ!さすがチャイニーズの多いバンクーバー便。これは嬉しゅうございました。ニュージーランド製バターもおいしかった。 完食。

にほんブログ村 海外生活ブログ シアトル・ポートランド情報へ

2016/07/12

川からはじまる話(奥の細道 隅田川べり)


今回東京で泊まったホステル、Nuiの廊下の窓からの眺め。

眼の前に 「馬獅子商会」という謎の家があった。なんの商売なんだろうーー。
その後ろの川沿いの家からは、毎朝、手拭いを姉さん被りにしたお婆様が出てきて打ち水をしてました。

うちの息子は「authenticな日本のおばあちゃん」と呼んでいた。


この頃はまだ到着1週間目で時差ボケのまま早朝が絶好調で、朝の川辺の散歩が快適でした。まだ暑くなかったし。

隅田川は高度成長期にはすっかりドブ川のようになってしまって異臭をはなっていたそうですが、だいぶ改善され、散歩コースに整備されてました。

東京から失われてしまった水辺を取り戻そうと考えている人は多いようです。
ほんとに東京は、実は水の都だったのに。



 蔵前橋。

 関東大震災のとき、この近くにあった被服廠跡という広場に避難してた人びとが何万人もいちどに亡くなり、東京大空襲でもこのあたりは火の海になった、悲惨な歴史を持つ場所でもある。


芭蕉先生の『おくのほそ道』 も、隅田川の深川付近が出発地。

蔵前の宿を予約したときにはそんなこと意識してなかった(ていうか、知らなかった……)のに、隅田川べり〜仙台〜立石寺〜松島(通過)〜平泉という旅行ができて、順番は違うけど(芭蕉先生は平泉のあと山形から立石寺に行ってます)足あとを少しだけたどることができました。



「あけぼのの空朧朧として、月はありあけにて光おさまれるものから、ふじの峯かすかにみえて、上野・谷中の花の梢、又いつかはと心ぼそし」。というのが『おくのほそ道』の隅田川を出発するときのくだり。

芭蕉先生とお弟子さんはこの辺(もうちょっと南だけど)からお見送りの人たちと船に乗って千住まで遡り、そこからみちのくへの道を歩き始めています。

時は3月末、新暦で4月の末。

川下の遠く南西のほうには富士山が白く見え、行く手の左岸には「上野・谷中の」花が豪勢に咲き誇るのが家々の屋根越しに見えたという。遅めの桜なのか。

両岸はどんな景色だったんでしょうね。銀色の瓦屋根、柳の新緑、渋い色の板塀、緑の土手を想像してみる。

 「春のうららの、すみだ川」という歌、小学校で歌ったときに、きれいな言葉だとは思ったけれど歌詞のイメージはまったく意味不明でした。

春のうららの 隅田川
のぼりくだりの 船人が
櫂(かひ)のしづくも 花と散る
ながめを何に たとふべき
見ずやあけぼの 露浴びて
われにもの言ふ 桜木を
見ずや夕ぐれ 手をのべて
われさしまねく 青柳(あおやぎ)を
錦おりなす 長堤(ちょうてい)に
暮るればのぼる おぼろ月
げに一刻も 千金の
ながめを何に たとふべき

なんとのどかで、美しい景色であることよ! 見てみたいよ!!

芭蕉の頃からこの唱歌が作られた明治の頃まで、川辺の眺めはそれほど変わってなかったのに違いない。「一刻千金」のながめが広がる川辺だったんですねー。

にほんブログ村 海外生活ブログ シアトル・ポートランド情報へ

2016/07/08

公園のウナギとスタバ、コルビジェとゴーギャンの浜辺、ポンピドーセンター展


宿で自転車を借りて、蔵前から上野公園へ。合羽橋とアメ横をとおって20分くらい。


レンタサイクルもオサレな細身のハンドルまっすぐな自転車(右の2台です)。
わたくしはママチャリのほうがよかったのですが…。だって足とどかない(´・ω・`)。

かなり一生懸命息子の後を追った。
こいでるうちは楽しいけど止まると足のやり場に困る。

そして上野の人混みで転倒!!     (´・ω・`)。

もう2度とオサレ自転車なんか乗らん。


上野公園の真ん中にスタバができててびっくり!
都美術館の「ポンピドゥー・センター傑作展」を観てから公園内の伊豆栄へ。



去年、ご一緒にお仕事させていただいた浅草育ちの企業コンサルタントさんに、うなぎを食べるならここ!と教わった伊豆栄の梅川亭。

伊豆栄はもう1軒あるけど同じ値段でこっちのほうが眺めが良いというお勧めでした。

精養軒のすぐちかく。

たしかに、緑に囲まれたステキな環境でした。
漱石先生の時代からある老舗で、漱石の小説にもたしか、誰かが鰻をあつらえる場面が出てきたような気もする。


お昼は2時半まで。観光客向けのお商売で、サーブしてくれた和服のお姉さんはとても感じが良かったけど 、器に水滴がついたままだったりするところがけっこう雑な老舗でした。
お客さんの半分くらいが、外国の人だった。

鰻重はもちろん、おいしゅうございましたよ!


鰻を食べたら、さて午後の部。次はル・コルビジェ設計の西洋美術館へゴー。

自転車で上野公園を徘徊できるなんて、なんて幸せなんだ。もし短期でも東京に住む機会があったら、ぜひこの辺に住みたい。


こちらは常設展の松方コレクション。何十年も前に何度も見ているけれど、うちの青年にも見せてやらねばと。


モネの絵がもっとあったように記憶していたけど、睡蓮は1枚だけだった。

ゴーギャンさんの小品が素敵でした。19世紀の水着はフルカバー。水に濡れたら重かったことでしょう。


ゴーギャンさん、ブルターニュ時代の作品。色がすでにタヒチ。


こちらは70年代に増築された新館。高い天井の照明が素敵。
一見、スカイライトのようですが、蛍光灯でした。


シアトルではあまり見られない美術作品をよく見るように、というのが青年の夏休みの課題。東京は、世界一文化施設が豊富な都市ですよね。


フェルナン・レジェの威張ったニワトリ。なにをそんなに怒っているのだ。


都美術館の『ポンピドゥー・センター傑作展』のほうも、とてもおもしろかったです。

20世紀初頭から現代までのポンピドゥー・センター所蔵作品の中から、1年に1作品を選択して展示。全体を通して、怒涛の20世紀がアートで体験できる構成になっています。

作品とともに作家の言葉が展示されているのも、とてもよかった。

たとえばマティスの作品には
「I feel through color.  Therefore, my canvas will be always organized by it」
(私は、色を通してものを感じ取る。だから、私のキャンバスはいつも、色で構成されているのです)
という言葉が。

でも一番心に迫ったのは、1945年のコーナーの展示でした。

原爆が落とされ、ドイツと日本が降伏し、信じられないほどたくさんの人が死んで、第2次大戦が終わった年。

この年を代表する作品は展示されておらず、その代わりにからっぽの白い壁の上に設置されたスピーカーから、この年に書かれたエディット・ピアフの「ラ・ヴィアン・ローズ」が流されていました。
もう号泣。

全体に会場の構成がすごくカッコ良かった。壁の色や照明とかも。
ただ、最後の現代の部屋はちょっと見づらかった。


アートの変転とともに、20世紀の歴史が迫ってくる展覧会でした。

出口にリサとガスパールがいた!展覧会始まったばっかりで、まだリサ&ガスパールのグッズは売ってなかった(涙)。8月に売り出すそうです。会期は9月22日まで。


にほんブログ村 海外生活ブログ シアトル・ポートランド情報へ

川辺の宿


東京では4日ほど、息子と2人で蔵前のホステル「Nui」に泊まりました。
隅田川がすぐ目の前、浅草まで自転車で10分くらいの便利なロケーション。
地下鉄で神保町にも銀座にもドアツードアで30分もあれば余裕で行ける幸せ。


いつも東京西部の弟の家に滞在するのだけど、やっぱり都心まで1時間強かかるのが辛くて、下町に泊まってみたかった。


1階はカフェ&夜はバーになってて、週末の夜など超満員の盛況でした。
泊まってるのはヨーロッパ、アメリカ、中国、韓国からの観光客と、日本の人が3割くらいの感じ。


ツイン(二段ベッド)ルームで7200円/泊。相部屋のドミトリータイプなら3000円台。
トイレとシャワーは共同で24時間使えます。


非常にコンパクトな間取りがチャレンジでしたw


内装のディテールが手作り感いっぱいなのだけど可愛くて、いろいろ和みました。


最上階は共同スペースで、キッチンと読書室&食堂。


 この70年代な電気スタンド!


雨の日はここで少し仕事。なごむー。


スタッフは20〜30代。皆とても明るくて感じの良い子ばかりで、海外に住んだことがあったり、これから海外で何かしたいという夢を持っている人が多いのだそうです。 自分は音楽をやっているという男性スタッフが話してくれました。


うちの息子はすっかり気に入ってしまって、ここでバイトして東京に住みたいとか言い出した。をい。


コーヒーと自家製クロワッサンもおいしかったですよ。

にほんブログ村 海外生活ブログ シアトル・ポートランド情報へ