2014/05/28

マグノリアのアオサギ団地


 連休の週末、近所のバラードの水門(バラード・ロックス)に散歩に行ってきました。

バラードから水門をわたった反対側はCommodore Parkという小さな公園になっていて、駐車場の横をほんのちょっと入ったところにわさわさと高い樹の茂るちょっとした林があり、そこに、

オオアオサギ(Great Blue Heron)の団地がありました。



この狭い一角の木立ちの中に、なんと50以上もの巣があるんだそうです。

公園の小道を鳥の団地の方向へ歩いていくと、グワグワグワグワというアオサギの話し声が頭の上から降ってきて、そこはかとなく生臭い鳥の巣のにおいがする。

全長130cmくらいある大きな鳥なので、巣も大きい。
差し渡し50cmくらいはある。それが50個以上かたまっている景色は、かなり迫力あります。

普段、川や海で捕食してるときなどは、この鳥が2羽以上つるんでるのを見たことがないのですが、繁殖期には群れるんですね。

あづま屋のような建物があり、野鳥観察会のおじさまが2名、望遠鏡と双眼鏡を片手に一覧表に印をつけてました。週に1回、頭数をかぞえにくるんだそうです。

Heron Habitat Helpers」というボランティアグループなのだそうです。アオサギ住宅ヘルパー。
ボランティア募集中です。


巣の中には、もうけっこう大きくなった雛が見えました。2月に巣を構えて、雛たちは夏の終わりに巣立っていくんだそうです。

巣はみんな、3階建てか4階建てのアパートの窓くらいなところにあるので、もうちょっと望遠のレンズでないとしっかり狙えません。



これはお父さんだかお母さんだか。サムライっぽい鳥ですね。


7月末頃まで入居中とのことです。

すぐ近所は住宅地、 駐車場から徒歩1分のとこにこんなナショナルジオグラフィック的な世界がひらけてるとは、びっくりでした。

「見に行くときは静かに、驚かせないように」とアオサギ団地ヘルパーさんのサイトにはありましたが、もう雛が孵って大きくなって、人間でいったら小学生の子ども2人か3人くらいずついる住宅が50世帯って感じでしょうか。ちょっとくらい下のほうで人間がザワザワしてても、アオサギの皆さんはぜーんぜん気にもしてなさそうでした。



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2014/05/22

舞踏道中@フィニーウッド・アートUP 


5月9日のPhinneywood Art UP で、恒例の舞踏道中を拝見いたしました。

写真を撮ったはいいが、整理編集ソフトのライトルームがアップロードさせてくれない!と大焦り、もしや買い替えが必要なのか?あまりにバージョンが古すぎ?と気を揉んであれこれしていた結果、単にハードドライブがいっぱいになってただけだったことが判明。よかったー。


今回は和菓子処「とから」さんから出発です。



予報は雨で直前まで心配でしたが、無事にこの通り、夕日までさしてくるお天気。
今回は3名の道中です。  

音楽の小箱を捧げ持つ白装束の巫女、ゆらゆらと揺れる花魁の生霊、地下足袋鉢巻に錦の帯の謎の戦国武士(<勝手にキャラクター解釈)。




コミュニティセンターの木の階段の下で、短い舞踏の一幕。



見慣れた場所に突然あらわれる、よくわからないものたち。


レストランでお食事中の窓の外に、もののけの通る。


なぜかとても惹かれ合う、看板と舞踏家。



スターバックスの前をわたる、いにしえの3人。


困惑するメトロバス。



そして旅の最後は、小さなベンチでオルゴオルの響きの中に閉じていきました。


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2014/05/20

おっちゃん映画、不良じいちゃん映画



シアトルは爽やかな初夏の気候です。

今年はけっこう映画を(DVDが多いですが)みてます。

最近観た映画って、おっちゃんやおじいちゃんの映画が多かった。

じいちゃん映画の筆頭は、ブルース・ダーンがアカデミー主演男優賞候補にもなった『Nebraska』(邦題は『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』)。

私の愛するアレクサンダー・ペイン監督の作品。情けなくて哀愁あふれる愛すべき中年のおっちゃんを描かせたら右に出るもののないペイン監督です。

『The Descendants(ファミリーツリー)』でジョージ・クルーニーがパタパタとサンダルを鳴らしてオアフ島の住宅街の丘をかけのぼっていく場面や、『Sideways (サイドウェイ)』のポール・ジアマッティがファーストフード店でとっときの極上ワインをテーブルの下に隠して紙コップで飲む場面は、哀愁のおっちゃん映画というジャンルがあるとするならば殿堂入り間違いなしだと思います。

『パリ、ジュテーム』に出てくる郵便局員の女の人の短編もすごく好き。

『ネブラスカ』は、「あなたに百万ドル当選!!!のチャンスがあります」というダイレクトメールを間に受けて、ネブラスカまで当選金を取りにいくと強情に言い張ってきかないまだらぼけのお父さん(ブルース・ダーン)に息子(ウィル・フォーテ)がつきあって、モンタナ州ビリングスからネブラスカまで、息子と父が二人で旅をする、というロードムービー。



一昨年の夏にサウスダコタ州までロードトリップをした時のルートに重なるし、その時にこのモンタナ州ビリングスも通ったので、なつかしかった。あのがらんとした平原の何もなさ、退屈さ。

この息子も、ぱっとしない電器店でぱっとしない仕事につき、ぱっとしないガールフレンドにフラれたばかりという、全然ぱっとしない哀愁のおっちゃん。
兄役は『ブレイキング・バッド』の、お金のためならなんでもやる弁護士ソウルを演じたボブ・オデンカーク。目はしが効く兄は地元ビリングスのテレビ局でニュースキャスターをやっていて、父の相手は弟に任せきり、だけど旅の途中のちょっとした事件を機会に彼も少しこのお父さんのアドベンチャーに参加する。

お母さん(ジューン・スキッブ)がまた強烈。
アメリカのお母さん像って、ネガティブなことを言わないのがデフォルトって感じなんだけど、このお母さんったら口を開けば朝から晩までボケたお父さんの悪口ばかり。でも橋田壽賀子ドラマに出てくるような嫌味なおばちゃんじゃない。まわりを一切気にせず自分の好きなことをズバリ言うわよ!な性格だけど、実は愛情に厚い人で、お父さんからお金をせびろうとする親戚相手に威勢の良いタンカを切ったりする。お母さんほんとに最高でした。

ペイン監督の映画に出てくる人物は、真面目にやってる姿がどこかしら完全にズレていてイケてなくて笑ってしまうんだけど、それは決して冷笑ではなくて、笑われてしまうその姿にひたひたと共感をさそわれて、愛しくて仕方ない。

『ネブラスカ』は、これまでの映画以上にほっこり度が高いように感じました。


魂が半分どこかに行っちゃっているおじいちゃんを演じたブルース・ダーンの、説得力ありすぎる演技もすごかった。じわじわ来る映画です。

それから『Last Vegas(ラストベガス)』。これもDVDで先月観た。日本では今月公開のようです。

ロバート・デニーロ、マイケル・ダグラス、モーガン・フリーマン、ケヴィン・クライン。子ども時代にいつもつるんでいた仲間が、何十年かぶりに全米各地からベガスに集まって大騒ぎというお話。

一番派手に成功している1人が30歳くらい年下の若い女の子と結婚するので、バチェラー・パーティに集まった旧友4人というわけで、おバカ映画『The Hangover (ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い)』のじっちゃん版みたいな映画ですが、『ハングオーバー』みたいな派手な仕掛けはなくて、もう全然ストレートフォワードなコメディです。

やはりこの面々が揃うと、ありがちなストーリー展開でも年の功。おっちゃんたちのドタバタな友情物語にほろっとさせられてしまう、楽しい映画でした。



もひとつは、『Grudge Match(グラッジマッチ)』。シルベスター・スタローンとロバート・デ・ニーロが、30年ぶりに対決するボクサーを演じるコメディ。ロッキー対レイジング・ブルの夢の対決ですよ。

二人とも30年前に引退して以来、スタローンのほうは職工として、デ・ニーロは昔の栄光を唯一の看板にしているしけた酒場の主として、地味な生活を送ってる。工場をレイオフされたスタローンが生活に困って電気代も払えなくなっているところを、怪しげなプロモーター(ケヴィン・ハート)にそそのかされてついその気になる、というところがリアリティあって泣ける。ロバート・デニーロの役のダメ人間ぶりも、いるいるいる、こういう人いるいる、具体的に個人的に知ってる、と感じさせるリアリティが素晴らしい。
じいさん同士の対決に世間は無関心だったのが、YouTubeの流出動画で一気にブレイクしていくっていうのもおかしい。ロッキーねたも出てくるし。



デ・ニーロ70歳もスタローン67歳も、たるたるのおなかをさらしてすごい本気のトレーニングを繰り広げて、けっこうそれも見応えが。息子とのエピソードもありがちだけど身につまされる。

これも私はすごーーく楽しめた映画だったんですが、『Last Vegas』も『Grudge Match』も、Rotten Tomatoes とかの映画サイトでは評価低いんですよねー、星2つとか。やっぱり老人に世間は冷たいのか。若いもんにはわかるめえよ(怒)。

ヒロインはキム・ベイシンガー。ほんとに60歳か?とまじまじ見てしまう素晴らしいメンテナンス。
相手が67歳でも、60代であっても、女性のほうには高いスタンダードが求められるんですねぇ。
でも60代のラブロマンスって考えてみると、かなりすごい。

だって、『東京物語』のときの笠智衆がなんと49歳だったんですよ!時代と文化が違うといっても、あまりの差にがくぜん。ひとりもののお父さんが心配で娘がお嫁に行けないっていう設定の『晩春』のときなんてまだ45歳!! 枯れ枝のようなお父さんだったけど、全然枯れて良い年齢じゃないって!

あと最後、これはもうちょっとハードボイルドなじいちゃん映画、『Stand Up Guys(邦題:ミッドナイト・ガイズ)』。

クリストファー・ウォーケンとアル・パチーノ 、そして『グラッジマッチ』でもトレーナー役で出てきた元気なおっちゃんアラン・アーキン。
30年近くの刑期を終えて出て来たギャングの仲間(アル・パチーノ)を懐かしく歓待するクリストファー・ウォーケンが、実はボスから出所したらあいつを殺せと指令を受けていて、苦悩するという話。全体に暗いトーンの映画ではあるけれど、よぼよぼで死にそうな友人(アラン・アーキン)を老人ホームから脱出させて夜の町を爆走する場面なんかは、不良じいちゃんパワーが炸裂していてすごく楽しい。



この映画はちょっとストーリーが雑な気がするけど、それでもこの不良じいちゃん3人が演じると、もうそれだけで話に奥行きを感じてしまう。 


最近のじいちゃんたちはちっともおとなしくしちゃいないし、異常に元気だ。

この3本の不良じいちゃん映画を観て、「老人の悪あがき」って感じは受けなかったのだけど、それはもしかして観る側の問題かもしれない。ワカモノが観たら、痛いじいちゃんが無理してるとしか見えないのかもしれない。少し先を老いていくじいちゃんたちの不良ぶりは、段々と残り時間を意識しだした昨今、これは全然アリでしょ、と頼もしく見えるのだけど。

これだけ不良じいちゃん映画が出揃ってるのに、不良ばあちゃん映画が見当たらない。

『ネブラスカ』のお母さんみたいなキャラクターが4人くらいでつるんで好き勝手をやらかすという破壊的な映画がみてみたい。

不良ばあちゃん映画はきっと不良じいちゃん映画以上にウケが悪いのだろうけど、きっとそのうち何年か後には登場してくれることを祈る。


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2014/05/15

母の日の花と大失態




母の日は息子にワッフルを作ってもらいました。ほぼ強制

しかし、同時進行でほかのものを用意するというワザが身についていない大学1年生男子。けっきょく自分で苺を切ったりベーコン焼いたりしている母の日。なんだかなあ。




ファーマーズマーケットで買ってきてくれた花。賑やかな春の花束。

 


思いがけず、息子のガールフレンドKちゃんも、お花をもってきてくれました。

大輪の菊。

日本では普通、仏花ですが、アメリカでは普通に花束に入ってます。
しかもこの菊。

日本でたとえばお嫁さんがお姑さんに母の日に白い菊の花束を贈ったら、どんなケンカを売ってるのかと思われるかもしれませんが。そんなことはKちゃんには言わないでおく。

日本でももう菊の花→仏壇。葬式。という図式はなくなってきてるのかしら?

こうしてバラやカラーと一緒にブーケになってると、ほんとに優雅で豪華な花ですね。
文脈から切り離してみるというのは、大切なことだ。

こんなに祝ってもらったのに、あろうことか、元義理ママ(息子のグランマ)への電話もテキストもすっかり忘れていたああああああああああ。あわあわあわあわあわあわ。

水曜の早朝になってから「テキストしなくてごめんなさいね」というテキストが来て、一気に目が覚め、真っ青。ぐあああああ。自分のことしか考えてない頭がここにあります。人間としてどうなのか、わたくし。自分に問い詰めたい。

週末からなんとなしに風邪っぽくて、頭にべっとり霞がかかっていたので。なんて言い訳にならないよっ。

来年は花束を早めに予約しておくことにしようーー。今からカレンダーにマルだ!



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2014/05/01

クラホウヤ


ヴァション島へのフェリーは、ベインブリッジ島に行くやつよりずっと小ぶり。


今回はキトサップ半島から乗ってヴァション島で下りて、またヴァション島からウェストシアトルにわたるコースで乗りました。

ヴァション島には切符売場はなくて、乗るときに往復または最終目的地までの運賃を支払うしくみ。

たしかに島には船でしか行けないから、合理的なシステムなのでしょう。
でも、何ヶ月かずっと島から出ないよっていう時はどうするんだろう。



船の名前はクラホウヤ。チヌーク交易語で「ハロー」という意味だそうです。 

いかにもヴァション島的なおじさまが日なたで読書中。




このフェリー、アメリカ版の『リング』に出てきたやつ(「タマラ」の手がかりをもとめて薄ら寂しい孤島へ行くフェリーで、馬が急に暴れだしてトラックの荷台を蹴破って海に飛び込む)と同じだと思う。

あれも暗い映画だった。
シアトルに引っ越す前に観てしまって、「本当にこんなに暗くて湿っぽいとこなんだろうか」と少しブルーになった。
冬のシアトルの描写としてはステレオタイプ的ながら的確というしかないですが、春になって陽が照ると全然違う土地のようになってしまう。二重人格な都市です。

今週、ツツジが咲き終わったら急に夏がきて、今日なんか一気に華氏86度/摂氏29度!
 
5月のはじめにここまで急に暑くなるのは異常ですが、とにかく、急に爽やかな緑の華々しい初夏の世界がひらけています。


 

フェリーのクラシックなベンチ。ゆっくり乗っていたくなりますが、向こう岸まで20分なのであっという間です。

アラスカに行くフェリー(クルーズ船じゃなく)というのにもそのうち乗ってみたい。

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2014/04/27

ヴァション島



Vashon Island (ヴァション島)に行ってきました。「ヴァッション島」て書いてあることが多いけど、「ヴァション島」のほうが似合う。ていうか、音つまってないと思う。
どちらかというと「ヴァショ~ン」て言ってる人のほうが多い気がするんですけどいかが?

いずれにしても例によってこのへんの地名にありがちな、バンクーバー船長一行様が18世紀に勝手につけて去っていった、土地とは一切なんの関係もない船長の友人の名前ですが。

シアトルからもすぐ目の前に見える、わりと大きな島。マンハッタン島の1.5倍強だとか。
キトサップ半島からは石を投げたら届きそうなくらいの距離です。

橋がないので、足はフェリーだけ。



ここです。

橋がないかわりキサップ半島とタコマとシアトルの西側の3箇所から、フェリーがでてます。

こんなに都市圏に近いのに、孤島。

今まで行ったことがなかったのは、べつに行く理由が見つからなかったから。

特に何かそこを目指していくような目立つランドマークがあるわけでもないし、ベインブリッジ島みたいにオリンピック半島への通り道でもないし。

どこかのファーマーズマーケットで、山羊のチーズを売ってる生産者さんがこのヴァション島から来てたので、「ヴァション島=やぎ農場」とインプットされていました。

ヴァション島に長年住んでいたという人に以前その話をして、むっとされるかと思ったら「そうそうそう、やぎいるいる」と同意してくれた。

行ってみて、期待はちっとも裏切られませんでした。

シアトルまでフェリーで20分の山羊の島。道ばたの民家の裏庭に、ほんとに山羊がいた。


人口1万人ちょっとだそうです。

とにかくのんびりしてます。 シアトルも結構のんびりした街だけど、またここは別次元ののんびりさ加減。



土曜日で、マーケットが花盛りの木の下で開催中でした。

これまたちっちゃなマーケット。



ファーマーズマーケットというより、半分はクラフトフェアみたいな。

このラブリーな手作り籠のお店は、近くに住むおばさまが自分で作った籠と庭で穫れた野菜を少しずつ並べて売ってる屋台。ネイティブ・アメリカンの籠を参考に自分でデザインしたもので、胡桃をアレンジしてあったりするのが素敵。



こちらは手作りのボウルやお盆やコマ。

お値段は籠もボウルもかなり高額です。小さな手乗りサイズで50ドルくらい、大ぶりのボウルなら200ドルくらい。

自分で作って売るとしたら、時給考えていくらで売りたいか考えれば当然の価格ではありますね。

ピア1やターゲットで売ってるのとは思想と生い立ちの違う工芸品です。

この木の器はいいなあと思ったけど、ほいほい買えませんです。




シアトルにこれだけ近くて(フェリーでウェストシアトルまで20分)、これだけのんびりしているので、そういう環境が好きな人びとを惹きつける。

昔からヴァション島にはアーティストが多いそうです。

マーケットの並びにあったギャラリーは、この島に住んでいるアーティストが共同で出資して作品を並べているCOOP式ギャラリー。ぜんぜん作風が違うのが並んでるのがコミュニティっぽくて面白い。


町にはこのほか、スーパーと金物屋と、犬のいるブックストア(↑)など。



そして本屋さんの隣には、お茶屋さん Vashon Tea Shop がありました。


ふつうの家のリビング、ていうか日本の家の洋風茶の間みたいなごちゃごちゃしたインテリアで、全然オシャレなお店ではないんですが、お茶の種類がとても豊富で、クオリティは抜群。

片っ端からテスターのお茶の葉の壜をあけてくんくんにおいを嗅いで、思いがけず長い時を過ごしてしまいました。

(店番のおば様も、ものすごーーくのんびりしてました。短期な人には、この島は無理。)

キーマンとダージリンセカンドフラッシュと、あとここのお店の特製ブレンドのハーブティーを2種類買ってきましたが、どれも驚くほどおいしかったです。

何の特記事項もなしな島の、端から端まで徒歩3分くらいの町だけど、とにかくまったりした午後を過ごすことができました。

島というのは人をのんびりさせてしまうものなのか。
ハワイのまったり感に近い空気を感じました。それもオアフ島だったらウィンドワードのほう、ホノルルじゃなくて。

孤島のくせに、やっぱりこれだけ都市圏に近いので、最近どんどん地価が高騰してるそうです。
ちらと見てみたけど、家の値段も家賃もシアトル市内とさほど変わらない感じ。


フェリー乗り場。ウェストシアトルの丘のむこうににょきっと見えているのは、シアトル・ダウンタウンのコロンビアセンター。

 ほんとすぐ近くなんですけどね。

車で20分というのとフェリーで20分というのとは、ぜんぜん距離感が違います。

この「切り離されてる」感じが、別次元ののんびり感を生むのでしょう。



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2014/04/24

悪の法則とBIUTIFUL


Netflixで『Breaking Bad』の最後の8エピソードが公開されたのでさっそくプチビンジ上映会をひらき、見終えて軽い虚脱感におそわれた心の傷が癒えないうちに、とんでもない映画を見てしまった。『The Counselor』(邦題『悪の法則』)。


『悪の法則』という邦題は、観る前に心構えができるという点では「カウンセラー」よりずっと良心的かもしれません。「カウンセラー」は「顧問弁護士」という意味で、主人公の職業です。

監督はリドリー・スコット。

キャストはブラッド・ピット、ハビエル・バルデム、キャメロン・ディアス、ペネロペ・クルーズという超豪華陣。主演の弁護士役のマイケル・ファスベンダーはこの映画を見るまで知らなかったけれど、このあとに見た『12 Year a Slave(それでも夜は明ける)』ではサディスティックな農場主を熱演してました。

うっかり、メキシコの麻薬カルテルがらみのもうけ話にのってしまった弁護士の運命は…。というお話。

『ブレイキング・バッド』に出てくるメキシコの麻薬カルテル関係者も怖い人たちでしたが、この映画を見てから思い返せば、ぜんぜんマイルドな描写でした。

『ブレイキング・バッド』で、運び屋の首をカメの甲羅にくくりつけてハンクおじさんにトラウマを与えたメキシコ国境の麻薬マフィアも、まだまだ、可愛いものとすら思える。

顔色ひとつ変えずに部下の頸動脈を段ボール用カッターナイフで切る「チキンマン」ガスですら、この映画を見た後ではまるで懐かしい友人のように感じられる。

あらすじは詳しく述べませんが、ほんとうーに後味の悪い映画でした。

いや、良い映画です。嫌いじゃないです。むしろ好きです。
でも、ちょっと2時間現実を離れてすかっとしたいというふやけた期待を持って見ると、とんでもない目に遭わされる。

監督のやり口が汚い。

希望をもたせておいて、徹底的に叩き潰す。テレビや映画のまっとうなお約束のフラグをあてにしていると、まんまとしてやられます。でもチェーホフのいう「銃」(お話に銃が出てきたなら、それは使われなくてはならない、というキマリ)はちゃんと約束どおり使われる。最後の最後まで、ああ出てきてほしくなかったのに、やっぱりここで出てくるのねー、という形で。

救いのなさは、個人的に今まで観たうちでの「救いのない映画ナンバー1」だった『モンスター』(日本映画のじゃなくて、シャーリーズ・セロンが娼婦の連続殺人犯を演じたやつ)と良い勝負でした。

暴力の描写がたっぷりな分、『悪の法則』のほうがトラウマ度は高いかも。

この映画で描かれる暴力には、血みどろな描写は少ない。淡々と粛々と、業務として行われる殺しや暴力が物語全体を通して同時進行にあらわれて、血がドバドバ出るような派手な描写でない分、逆に背筋がじわりと冷たくなるような気味の悪さ。

この映画に描かれる最初のひどい暴力は、主人公とクライアントの間で交わされるいくつかの会話に出てくる。メキシコのカルテルがいかに容赦ない人びとかという話の中で、見せしめに使われる非人間的な暴力の方法が語られる。

麻薬とお金を動かすために、人の生命や、ささやかながらも幸せな生活が、ごく簡単に抹消されていく。

観ている側も、蜘蛛の糸にじわじわと周りをからめとられるような、気づいたら出口がない洞穴に置き去りにされていたような、暗澹とした気分にされてしまう。

「愛の反対は憎しみではなく、無関心なのです」というマザー・テレサの名言があるけれど、まさに、「悪」というのは、他人への無関心に根を張っている。

悪というのは、悪役プロレスラーみたいなわかりやすい顔はしていない。実は無表情なのだ。
悪が行えるというのは、共感を拒否するということ。
他者と自分をなぞらえるのを拒絶すること。

それは実は、とても簡単に、システム化することができる。

どんな人でも、わりに簡単に、その一部になれる。

そして実際、これとほとんど同じことが今も現実に起きているのだということを、この映画は淡々と思い出させてくれるのです。



でもハビエルのこの格好を見られたのは収穫でした。面白すぎる。

ハビエル・ バルデムは大好きな俳優さんの一人です。出演作ごとにすさまじいほど全然違う人になってる。

今回は国境で派手にもうけてるハイパーに陽気なおっちゃん。

この人の出演作で一番好きなのは、バルセロナを舞台にした『BIUTIFUL ビューティフル』です。

これも、暗い暗い映画でした。

でも『BIUTIFUL』には、最後に薄ら寒い冬の雲の間からさしてくる頼りない日ざしのような救いがあった。

不景気なバルセロナは、とても醜く描かれてました。

ガウディの教会でさえ、物陰にしまい込まれて忘れたふりをされている、不幸な作りかけの工作みたいに見える。

主人公は違法滞在の中国人移民をつかってビジネスをしていて、小さな子どもを抱え、貧乏で、治療することのできない病をわずらっている。中国人たちに少しでもマシな環境を提供しようと試みて、逆に大惨事を引き起こす。なにもかもが、裏目にでてしまう。

今のヨーロッパ諸国のリベラルな良心と葛藤をそのまま、人格化したような人物。

移民で溢れる街で、取ってつけたような正義を提供しようとしても、あまりにも無力。

なにより自分はもう死にかかっている。どんどん貧乏になり、どんどん病みつつ、子どもに少しでも貯金を残してやろうというだけのために生きている。子どもがこの先暮らしていくのには、そんなものは全く充分ではないことを知りながら。

明るい理想なんかもうどこにもない。無い袖は振れない。移民に正義を提供するどころか、自分の子どもにちゃんとした生活に必要な資金を残してやれる財力すらない。

この主人公の状況とジレンマは、いまのEU諸国そのままではありませんか。

とにかく暗い。八方ふさがり。
でも『BIUTIFUL』には、それでもヨーロッパの理想と希望とヒューマニズムがシニカルではなくて肯定的に描かれてて、一種スピリチュアルな救いになってる。

最後の、森の中での、父との出会いの場面は思い出しただけで今でも号泣してしまいます。泣。




『悪の法則』には、ヒューマニズムのでる幕はなし。というか、ヒューマニズムの対極を淡々とリアルに丹念に描いてくれている。

「悪」は連帯や共感を拒否して、ごくシンプルな目的のために突き進む力。

そしてやっぱり最後に悪は勝つ(…こともある、かなり高い勝率で)

ということをこれでもかと見せつけてくれる映画。そしてざらっとした嫌な後味が忘れられないトラウマとして残る。
一番憂鬱なのは、これが「よくある話」だということ。

国境の麻薬カルテルが本気で怖いという話だけではなくて、条件が整えばある人間のグループが悪の存在になるのは、きっとそんなに難しいことではないということ。

それは特定の国や民族や、決まった性向のある特殊な人間に限ったことじゃなくて、どこにでも誰の上にでも、起こる可能性のあること。

ちょっと落ち込みたい気分のときにはお勧めの映画です。




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