マンハッタンへの旅の目的地のひとつ、ニューヨーク近代美術館。
瀟洒でコンクリとガラスと木材のビルでした。
めっちゃオシャレだけど、ビルの間にあって特に大声で主張するような感じがまったくない、控えめな建物という印象でした。
降ったり止んだりの日だったのだけど、ちょうど行った時には雲が晴れて、吹き抜けのところの白い大きな壁にちょうど光がさしこんでて、むっちゃくちゃ綺麗だった。
これにまず感動。
なんて繊細な、なんて上品な効果。まるで障子にさす光のよう。と心が震えました。
たまたま晴れたこの時間に行ってこの光が見られて、なんてラッキー。
細い窓からチラっと見える階段の薄さ!すべての線がスレンダーで繊細。
これまた全然知らなかったのだけど、このMOMAの新しいビルは日本の建築家、谷口吉生さんの設計で2004年にリニューアルオープンしたんですってねー。実はついさっき知ったばかり(汗)。
この光を見てなぜか「障子のようだ」と思ったのは、当たらずとも遠からずというか、たぶん設計のなかに、日本建築の持つ、繊細で柔軟で包むような感覚を呼び起こす「術」が埋め込まれてるんじゃないかと思う。
具体的にどうやってそう感じさせるのかを読み解くリテラシーはないけど、そんなんなくても、このビルの繊細さは感じることができます。
シャープなのに柔らかに包む感じ。すこしもトゲトゲしたところがないけれど、ぴしっとしてミニマルな和の建築物の緊張感。お茶室みたいな。
わたくし、谷口吉生さんという人すら知らなかった。
たてものコラムなんか書いてるくせに建築のことなど本当になにも知らないのです。
世の中には知らないことが多すぎる。
「純粋なモダニズム建築の作り手といえる」ってWIKIに書かれてた。純粋なモダニズムってこういうのなの?
ぐぐってみたら、京都の国立博物館を最近手がけられたそうで、建築エコノミスト森山さん(最近いろいろ有名らしいですね)のブログに行き当たった。
ほぇー、すごい。
この目地の話!ぜひお読みになって!感動するよ!
わたしには施工技術のことなどさっぱりわかるはずもありませんが、このビルの建設もきっと色々大変だったんだろうなあ。 …なにしろアメリカだし。
この窓の枠の細さとか色とか、足乗せ台(なのか?)などのちょっとしたディテールも、繊細ではありませんか。
全面ガラス張りのビルが実現したり、細い部材を使ったデリケートな表現が可能になったのもエンジニアリングの発展あればこそ。
そう考えると、時代の持つ感覚っていうのはやっぱりかなりの部分、技術によって立ってるものだよね。
もちろん、建物だけでなく、中身もがっつり充実でした。
John Akomfrahさんというガーナ生まれ英国人アーティストの映像インスタレーションがすごく良くて、なんか涙でた。
スチュアート・ホールさんという、60年代に活躍したジャマイカ生まれの活動家/理論家のライフストーリーを、インタビューを中心に、大きな3面のスクリーンで映像コラージュとして構成した45分の作品。
ジャマイカとかガーナとかで生まれた有色人として、イギリスやアメリカで教育を受けて知識人として活動することの意義深さ、難しさ、虚しさ。50年代、60年代という歴史の手触り。映像がほんとに綺麗で、それに50〜60年代頃のジャズがかぶさる。
これは息子にぜひ見せてやりたいと思った。
収蔵品展では教科書でお目にかかっていた絵画が続々登場するのでめまいがするほど。
マティスの赤い部屋にも会えた!しかも絵の中に描かれた絵皿つきで! 3D 展示!
このアンリ・ルソーの絵は、子どもの時に家にあったレコードのジャケットで最初に見た。クラシックのレコードだったけど、何の曲だったのか、エリック・サティのジムノペディかなんかだった気もするけど覚えてない。
すごく印象的な絵で、小学生のわたくしは衝撃を受けました。
ウィル・スミスのゾンビ映画でも、たしか、ニューヨークにたった一人きり生き残ったウィル・スミスが持って帰って自宅のリビングに飾っていた。グッドチョイスですね。
お昼ちょっとすぎに着いて閉館までいたんだけど、 とても隅々まで見る時間はありませんでした。開館と同時に行くべきだった。
約半分を観てショップをちょっとみて(必須!)、疲労困憊して休憩。カフェのターメリックとにんじんのスープがおいしかった。
カフェから見える整然とした中庭。クリーンですね。なんだか東京みたい。
フランク・ロイド・ライトの展覧会も開催中でしたが、もう時間切れで走るように眺めるしかなかった。残念。
帝国ホテルのためにライトがデザインした食器類も展示されていたんだけど、館内別行動だった同行の友人マダムMちゃん、「あのカップ、なぜかうちにあったのよ〜。懐かしい〜」って、さすがのマダム発言。カップの写真は撮り忘れました。
こちらです。帝国ホテルのサイトでお求めになれます。素敵ですねー。
これは1マイル(1600メートル!)の高さを持つ「ザ・イリノイ」というビルの構想スケッチ。こんなん当然ながら初めて知った!
1956年に構想されたもので、シカゴのごちゃごちゃしたビルを全部とっぱらってこの超ウルトラ高層ビルに都市機能を集約して、あまった土地は緑のランドスケープにしようという、サイエンスフィクションもびっくりの発想。
もちろん実現には至らなかったわけですが、1956年の時点で、やればできる、実現可能だとライトさんは考えていたらしい。
1956年といえば、その後スラム化しちゃって72年に取り壊され、都市計画最悪の失敗作といわれているプルーイット・アイゴーが完成した年でもあります。 モダニズムに全幅の信頼がおかれていた時代だったのでしょうね。
宇宙競争の時代でもあり、科学バンザイの時代でもあり、公民権運動の高まる直前でもあり、ウーマンリブはまだ先で、ビジネスマンはまだ七三にわけた髪型だった。
なぜかモダニズムと1950年代に引力を感じる日だった。ていうかモダニズムって何って、ちゃんとわかってませんけどね。
閉館時間になって突然の土砂降りに見舞われました。
椅子たちがキュート。ここにもミッドセンチュリーモダン。