ティファナでブランケットとガイコツを買ったので満足して、またタクシーで国境に戻りました。
タクシーを下りて、アメリカへ向かって歩く。
この舗道が国境まで続いていて、道の片側にはお店が並んでいます。
ここまで列が続くこともあるようで、すでに標識が出てました。
嫌な予感。
たちまち列の最後尾に到着。長い長い長い列でした。
行列は2列に分かれています。
左側は「General Public」、つまり一般ピープル用。
右側は「Sentri」ライン。
「Sentri」とは特別扱いのエクスプレスレーンみたいなもので、年間120ドルくらいの申請料を払って審査に通るとパスがもらえ、優先的に国境を越えられるという制度、なのだということを後で知りました。
Sentriラインの方が若干速く動いてはいたけど、どっちの列も大行列には違いありません。
たまたま本を持っててよかった。うちの息子もなぜかかばんの中に村上春樹の新刊『色彩を持たない…』英訳本を持っていて、行列に並んでオヤコ読書。
並びはじめてから1時間経過。
陽射しのさんさんと降り注ぐ地帯に突入して、すっかり首筋が日焼けしてしまいました。
皆さんちゃんと日除けの傘を用意していらっしゃる。
前に並んでいた人に「毎日こんななの?徒歩のほうが早いって聞いたんだけど?」と聞いてみたら、「よく変わるからね、日によっても全然違うし」と言ってました。
この日は明らかに、クルマの列のほうがすいすい動いていました。
(とはいえ、自分のクルマならともかく、レンタカーであのティファナのカオスな交通の中に乗り入れる勇気はありませんが) 。
列の間をかきわけて、いろんなものを売りに来る人がいます。
「チクレットいかが?」とガムを売っているのは皆、インディオ系の人で、なんだか日本のおばちゃんみたいでした。
アイスクリームやタコスの屋台、パンケーキのようなものを焼いている屋台もあり、縁日みたい。
お祭りと違うのは、お客さんが皆ぐったり疲れた顔をしているところ。
並んでいる人のために、おやつだけでなくエンターテイメントもいろいろ完備されています。
タコス屋の前で歌っていたこの綺麗なお姉さんは、メキシコ歌謡なのか、ラテンの音楽はまったくわからないので新しい歌なのか昔の曲なのかも不明ですが、哀しい節回しのドラマチックな歌を歌っていて、すごく上手でした。
真面目な顔をしてバイオリンを弾きながら歩いてきたおじさん。
USA、こっち、の看板。しかしUSAは遠かった。
結局並び始めてから2時間以上かかって、ようやく国境の建物にたどり着きました。
メキシコ入国のときの無人駅の改札みたいなシステムとは大違い。
建物の中に空港のセキュリティチェックを少し簡易にしたようなゲートがあり、入国審査官のブースが4つほど並んでます。
パスポートや身分証明書のチェックを通ったら、手荷物をX線検査に通してから入国。
ここでわたくし、グリーンカードを取り上げられてしまいました((((;゚Д゚)))) 。。。。
同じような名前でセキュリティ上問題がある人がいたらしく、全然別人なのにフラグが立っていたようです。
息子は先に出ていかねばならず、私だけ、ほんの数分でしたが列の横のとこのベンチに座らされ、なんだか知らないけど国家安全データベースの中のフラグがクリアされてグリーンカードを返してもらえるまで、国境ラインのグレーなゾーンで待ってなければなりませんでした。
審査官のおじさんに「一体わたしがなにをしたんでしょうか~」と尋ねても、「あなたじゃないから、大丈夫」と言うだけで何も教えてはくれなかったのですが、審査官が親切そうなメキシコ系のおじさんじゃなく、表情のないロボコップみたいな人だったら、怖かったかも。
愛想のない建物の出口がすこし輝いて見えました。
やっと辿り着いた、国境の北。右奥のベージュの建物が国境の米国入り口です。
ティファナにいた時間と国境で並んでいた時間がほぼ同じくらいだったような気がする、短い国外旅行でした。