2014/06/06
セントラルディストリクト
写真を整理してたら出てきた、たしかE.Yesler Wayのあたりの、ガツンと来るたたずまいの食料雑貨屋さん。今もまだあるのかな。
この「セントラル・ディストリクト」という地区は昔からブラックネイバーフッドだったそうです。
ジャクソン・ストリート全盛期にミュージシャン組合のクラブハウスがあったのもこのあたり。
8月のSea Fairと同時期に、ブラックコミュニティのお祭りUmojaが開催されます。
私はこのネイバーフッドのことも、ましてやこのお祭りのことなどぜんぜん知らなくて、何年か前、偶然通りかかった時にこのお祭りのパレードをやっているのに遭遇して、いったいここはどこ?ルイジアナ?ミシシッピ?と目がぱちくり。
シアトルは全体に白人率がとても高いコミュニティで、とくに今住んでるバラードなんて、もともと北欧コミュニティだっただけに今でも9割近くが白人です。
このパレードに偶然行き当たって、シアトルにこんなに大きなブラックコミュニティがあったのか、と息子と二人でびっくりしたものでした。
この地区にあるガーフィールド高校というのが、同じくシアトル市内のルーズベルト高校とならんで、全米有数のジャズバンド(ブラスバンドではなく)のプログラムがある高校。
クインシー・ジョーンズやジミヘン、最近ではマックルモアーも通った学校です。
シアトル市内の高校の中では群を抜いて立派な講堂があって、「クインシー・ジョーンズ・パフォーマンスセンター」って名前がついてます。
伝統がみゃくみゃくと受け継がれてる地域なんですね。
ガーフィールド校は、マイノリティの多い地区の学校としては珍しく、学業成績でもなかなかの成果を出してるので有名です。
ガーフィールド高校の向かいには、シアトル一という評判のフライドチキンの店Ezell's Chicken があります。
何度か行ったけど、わたしはここのはちょっと油感がしつこすぎていまいち。全米チェーンのPopeyes か、しつこいようですがタコマの南部食堂のほうが好き。
「フッド」な雰囲気はたっぷり味わえるお店ではありますが(イートインのスペースはなくて持ち帰りのみ)。
同じシアトルでも、ダウンタウンや北のほうの地区とはまた全然雰囲気が違う町です。
2014/06/04
バラード・ロックス観光
バラード・ロックスというのは運河につながる水門で、バラードいちの観光名所です。
ここは家から車で10分とかそのくらいの近所ですが、行くのは3回め。
入り口に「自転車禁止」「スケボー禁止」に並んで、 「ここは連邦政府管理施設なので薬物禁止ゾーンです」のでっかい断り書きが出てました。
麻薬はどこだって禁止だろうとつっこみたくなりますが、今年からワシントン州ではマリファナが解禁になったので、わざわざこんな看板を立てたのではないかと推測。
州の条例でだって、公共の場でマリファナ吸ったら罰金のはずなんですが。
連邦では完全に「麻薬」扱いだけど州では合法のマリファナを巡っての州と連邦の微妙な関係は、今後もいろんなところで目にしそうです。
さてバラード・ロックス。
左側がピュージェット湾。真ん中の微妙な形の湖がユニオン湖。右側がワシントン湖です。
シアトルはピュージェット湾に面した左側の下のほう、湾の奥のフェリー路線が集まってる喉の奥みたいな形のところ。
18世紀、白人が町を作り始めた時にはまだこのユニオン湖はどこにもつながってなくて、ワシントン湖から船で海に出ることはできませんでした。
この地形を見たら、そりゃ運河を作りたくなるのはわかりますよね。
「Historylink」などによると、最初の入植者のひとり、トーマス・マーサーさんが1854年の入植村のピクニックで湖に、いずれワシントン湖とピュージェット湾をつなげることになるからという希望をこめて、「ユニオン湖」の名前をつけたんだそうです。
でも実際にそのビジョンが実現して、運河と水門が完成したのは80年後。
19世紀末には当時の知事が、ダウンタウンより南側に運河を掘る計画に着手したこともあったそうです。政治的かけひきによって、ちょっと掘り進めたくらいのところで中断したらしい。
バラード・ロックスの正式名称はHiram M. Chittenden Locks。 チッテンデンさんというのは陸軍工兵隊の偉い人で、退職後に連邦議会にはたらきかけて予算を取ってきた功績を讃えられて、水門に名前が残ったそう。イエローストーン国立公園の道路や門の建設も担当、あの北門のアイデアを出したのもこの人だったそうです。
完成は1917年でした。
大正6年。当時のロマンチックな意匠がところどころに見られます。
建物も趣きがあります。
よく手入れされた広い芝生広場や庭園も。小さい子ども連れの家族には、たくさん見るものがあるし、走り回る空間もごろごろできる芝生もあって、なかなか素敵なアトラクションだと思います。
現在でも、合衆国陸軍工兵隊 (U.S. Army Corps of Engineers)の管轄です。だから麻薬フリーゾーン。
工兵隊のロゴはお城マークで可愛いです。
この日はまずまずの天気の週末だったのでこんな大小のボートたちが水門の開くのを待ってました。まだ数は少ないです。
上りと下りの水門が1つずつあります。
こちらはピュージェット湾(海水側)からワシントン湖方面へ行く船たち。
こちらは海の方へ出て行く船たち。こっちの水門は湖行きより狭い。
ヴィンテージの素敵なボートにワカモノたちがたくさん乗ってました。ベインブリッジって書いてあるので、湖で遊んでピュージェット湾の反対側のベインブリッジ島に帰るんでしょうか。
湖は海より20フィートから22フィート(6メートルから6.7メートル)水位が高い。この水位を保つのもこの水門の役割。
建設当時の写真はこちら。
水門の中でだんだん水位が下がっていくのを辛抱強く待つ人びと。
週末だからプレジャーボートばっかりでしたが、運河の奥には漁船の大きな港もあるので、ここはけっこう往来が激しいのです。
この木造の水門も大正時代のかな。
船を眺めながら運河をわたって反対側へ。
鉄橋は鉄道用です。貨物列車が通ってました。
大きな船を通すために、バラードやフレモントの橋同様、跳ね橋になってます。
対岸のマグノリアから見た水門。
運河にむかって段々になってるこの草地は、ごろごろ転がって下りるために作られたかのような構造。まんなか辺に写っている赤い物体は、通りかかった高校生のグループの中から突然ごろごろし始めた男子1名。コンクリの歩道に頭をごっつんするかと思って見守っていましたが、それほどのスピードは出ず、途中で止まってました。
このすぐ左手にアオサギ団地があります。
右手には鮭が必死に上ってくる姿が見られるフィッシュラダーの観覧エリアがあるんですが、まだサーモンたちの季節は始まったばかり。鮭の往来はまだちらほら程度だったので、また今度。
Sockeye (紅鮭)の上りはピークが6月半ばから7月末くらいまで。その期間は州のFish and Wildlife 局の人が毎日数を数えてアップデートしてます。
アザラシくん?がいた。
数年前から、カリフォルニアあしかのオスがここでせっかく上ってきた(数が少なく、絶滅が危惧されている)サーモンを食い荒らして しまうので駆除されたり脅して追い払われたりされているそうです。
あしか用爆弾(脅かすためのもの)についての記事はこちら。
また今度、鮭たちを見に行きたいと思います。
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2014/05/30
ロミロミサーモンとハワイの宴
メモリアルデーの週末にバーベキューにおよばれしたので、ロミロミサーモンをつくってみました。
ロミロミサーモンは、塩漬けの鮭とトマトとオニオンのサラダ的なつけあわせで、ハワイの「ルアウ」(宴会)にはなくてはならない大事なローカル料理。
ハワイにはサーモンはいないのに、なぜ?と前から疑問だったのだけど、こんな記事みつけました。
なんと19世紀前半に、パシフィックノースウェストから木材とともに塩漬け鮭がハワイに輸出されていたのだそうです。もとはノースウエスト地域のネイティブが塩漬けにしていた鮭がアメリカ国の輸出品目になって、生魚をライム汁やココナツミルクやオニオンと和えるハワイの料理法とあわさってローカル料理になったとのこと。歴史古かったんですね。
ロミロミサーモンは言ってみれば、ノースウエスト地域からハワイへの移住組だったのでした。
こんなつながりがあったとは。
今回は大奮発して天然アラスカンキングサーモン!1ポンド20ドル!100gで約5ドルです。高っ。
でもカッパーリバー産のサーモンはさらに高くてポンド26ドル。牛より高いねえ。まあ大きな魚や動物はあまり食べないほうが環境にもよいので、ほんとはそのくらいの値段でちょうどよいのかもしれません。
この美しいキングサーモンを、塩と砂糖を摺りこんでぐるぐる巻きにしてしまいます。
レシピには「コーシャーソルト」とあったけど、ここはハワイアンソルトで。赤いアラエアソルトはいくらなんでももったいないので、白いほうです。
塩1カップに砂糖2分の1カップを混ぜます。砂糖は上白糖にしました。
塩と砂糖のミックスしたものを鮭にたっぷりすりこみ、シラントロ(香草、コリアンダー)を盛大にのせます。ハワイで食べたロミロミサーモンにはシラントロ入っているものはあんまりなかったと思う。このレシピはちょっとメキシコ風かも。
今回はオーガニックのシラントロを買ってみた。量はいつもの半分以下、値段は3ドルくらいと高め。でも香りが全然違うのでびっくり。ツンツンした感じがなく、ふんわりまろやかで、甘さを感じるほど柔らかい香りでした。
ぐるぐる巻きにして冷蔵庫で1日監禁。
皮は使わないのでオーブントースターで焼いてレモンと塩でいただきました。
うまっ!!!
翌日、水分が出てテカテカになられたキングサーモン様。
材料はこれだけ。トマトときゅうり、あ、あとわけぎ。これをボウルにいれてごま油とライムを絞ったものであえる(「ロミロミ」というのはハワイ語で「もみもみ」という意味で、油とライムを絞ったらよくもみもみする。とはいえよく混ざってさえいれば、そんなにぎゅうぎゅうもまなくても大丈夫。
いたってシンプル。思ったより簡単でした。
レシピにはハラペーニョを入れると書いてあったけど、それは割愛しました(買い忘れた)。
この日はみんなハワイから本土へ来た5家族。メニューはカルーアピッグ、フリフリ風チキン、スパムむすび、ロミロミサーモン。そしてもちろん
「ポルチュギーソーセージ」(笑)!
CTちゃんの「ハウピア&沖縄スイートポテト&マカダミアナッツパイ」も絶品でした!
幸せだー。
ハウピアパイを食べながら狼男ゲームで盛り上がったハワイアンナイトでした。
2014/05/28
マグノリアのアオサギ団地
連休の週末、近所のバラードの水門(バラード・ロックス)に散歩に行ってきました。
バラードから水門をわたった反対側はCommodore Parkという小さな公園になっていて、駐車場の横をほんのちょっと入ったところにわさわさと高い樹の茂るちょっとした林があり、そこに、
オオアオサギ(Great Blue Heron)の団地がありました。
この狭い一角の木立ちの中に、なんと50以上もの巣があるんだそうです。
公園の小道を鳥の団地の方向へ歩いていくと、グワグワグワグワというアオサギの話し声が頭の上から降ってきて、そこはかとなく生臭い鳥の巣のにおいがする。
全長130cmくらいある大きな鳥なので、巣も大きい。
差し渡し50cmくらいはある。それが50個以上かたまっている景色は、かなり迫力あります。
普段、川や海で捕食してるときなどは、この鳥が2羽以上つるんでるのを見たことがないのですが、繁殖期には群れるんですね。
あづま屋のような建物があり、野鳥観察会のおじさまが2名、望遠鏡と双眼鏡を片手に一覧表に印をつけてました。週に1回、頭数をかぞえにくるんだそうです。
「Heron Habitat Helpers」というボランティアグループなのだそうです。アオサギ住宅ヘルパー。
ボランティア募集中です。
巣の中には、もうけっこう大きくなった雛が見えました。2月に巣を構えて、雛たちは夏の終わりに巣立っていくんだそうです。
巣はみんな、3階建てか4階建てのアパートの窓くらいなところにあるので、もうちょっと望遠のレンズでないとしっかり狙えません。
これはお父さんだかお母さんだか。サムライっぽい鳥ですね。
7月末頃まで入居中とのことです。
すぐ近所は住宅地、 駐車場から徒歩1分のとこにこんなナショナルジオグラフィック的な世界がひらけてるとは、びっくりでした。
「見に行くときは静かに、驚かせないように」とアオサギ団地ヘルパーさんのサイトにはありましたが、もう雛が孵って大きくなって、人間でいったら小学生の子ども2人か3人くらいずついる住宅が50世帯って感じでしょうか。ちょっとくらい下のほうで人間がザワザワしてても、アオサギの皆さんはぜーんぜん気にもしてなさそうでした。
こちらもよろしく。
2014/05/22
舞踏道中@フィニーウッド・アートUP
5月9日のPhinneywood Art UP で、恒例の舞踏道中を拝見いたしました。
写真を撮ったはいいが、整理編集ソフトのライトルームがアップロードさせてくれない!と大焦り、もしや買い替えが必要なのか?あまりにバージョンが古すぎ?と気を揉んであれこれしていた結果、単にハードドライブがいっぱいになってただけだったことが判明。よかったー。
今回は和菓子処「とから」さんから出発です。
予報は雨で直前まで心配でしたが、無事にこの通り、夕日までさしてくるお天気。
今回は3名の道中です。
音楽の小箱を捧げ持つ白装束の巫女、ゆらゆらと揺れる花魁の生霊、地下足袋鉢巻に錦の帯の謎の戦国武士(<勝手にキャラクター解釈)。
コミュニティセンターの木の階段の下で、短い舞踏の一幕。
見慣れた場所に突然あらわれる、よくわからないものたち。
レストランでお食事中の窓の外に、もののけの通る。
なぜかとても惹かれ合う、看板と舞踏家。
スターバックスの前をわたる、いにしえの3人。
困惑するメトロバス。
そして旅の最後は、小さなベンチでオルゴオルの響きの中に閉じていきました。
2014/05/20
おっちゃん映画、不良じいちゃん映画
シアトルは爽やかな初夏の気候です。
今年はけっこう映画を(DVDが多いですが)みてます。
最近観た映画って、おっちゃんやおじいちゃんの映画が多かった。
じいちゃん映画の筆頭は、ブルース・ダーンがアカデミー主演男優賞候補にもなった『Nebraska』(邦題は『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』)。
私の愛するアレクサンダー・ペイン監督の作品。情けなくて哀愁あふれる愛すべき中年のおっちゃんを描かせたら右に出るもののないペイン監督です。
『The Descendants(ファミリーツリー)』でジョージ・クルーニーがパタパタとサンダルを鳴らしてオアフ島の住宅街の丘をかけのぼっていく場面や、『Sideways (サイドウェイ)』のポール・ジアマッティがファーストフード店でとっときの極上ワインをテーブルの下に隠して紙コップで飲む場面は、哀愁のおっちゃん映画というジャンルがあるとするならば殿堂入り間違いなしだと思います。
『パリ、ジュテーム』に出てくる郵便局員の女の人の短編もすごく好き。
『ネブラスカ』は、「あなたに百万ドル当選!!!のチャンスがあります」というダイレクトメールを間に受けて、ネブラスカまで当選金を取りにいくと強情に言い張ってきかないまだらぼけのお父さん(ブルース・ダーン)に息子(ウィル・フォーテ)がつきあって、モンタナ州ビリングスからネブラスカまで、息子と父が二人で旅をする、というロードムービー。
一昨年の夏にサウスダコタ州までロードトリップをした時のルートに重なるし、その時にこのモンタナ州ビリングスも通ったので、なつかしかった。あのがらんとした平原の何もなさ、退屈さ。
この息子も、ぱっとしない電器店でぱっとしない仕事につき、ぱっとしないガールフレンドにフラれたばかりという、全然ぱっとしない哀愁のおっちゃん。
兄役は『ブレイキング・バッド』の、お金のためならなんでもやる弁護士ソウルを演じたボブ・オデンカーク。目はしが効く兄は地元ビリングスのテレビ局でニュースキャスターをやっていて、父の相手は弟に任せきり、だけど旅の途中のちょっとした事件を機会に彼も少しこのお父さんのアドベンチャーに参加する。
お母さん(ジューン・スキッブ)がまた強烈。
アメリカのお母さん像って、ネガティブなことを言わないのがデフォルトって感じなんだけど、このお母さんったら口を開けば朝から晩までボケたお父さんの悪口ばかり。でも橋田壽賀子ドラマに出てくるような嫌味なおばちゃんじゃない。まわりを一切気にせず自分の好きなことをズバリ言うわよ!な性格だけど、実は愛情に厚い人で、お父さんからお金をせびろうとする親戚相手に威勢の良いタンカを切ったりする。お母さんほんとに最高でした。
ペイン監督の映画に出てくる人物は、真面目にやってる姿がどこかしら完全にズレていてイケてなくて笑ってしまうんだけど、それは決して冷笑ではなくて、笑われてしまうその姿にひたひたと共感をさそわれて、愛しくて仕方ない。
『ネブラスカ』は、これまでの映画以上にほっこり度が高いように感じました。
魂が半分どこかに行っちゃっているおじいちゃんを演じたブルース・ダーンの、説得力ありすぎる演技もすごかった。じわじわ来る映画です。
それから『Last Vegas(ラストベガス)』。これもDVDで先月観た。日本では今月公開のようです。
ロバート・デニーロ、マイケル・ダグラス、モーガン・フリーマン、ケヴィン・クライン。子ども時代にいつもつるんでいた仲間が、何十年かぶりに全米各地からベガスに集まって大騒ぎというお話。
一番派手に成功している1人が30歳くらい年下の若い女の子と結婚するので、バチェラー・パーティに集まった旧友4人というわけで、おバカ映画『The Hangover (ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い)』のじっちゃん版みたいな映画ですが、『ハングオーバー』みたいな派手な仕掛けはなくて、もう全然ストレートフォワードなコメディです。
やはりこの面々が揃うと、ありがちなストーリー展開でも年の功。おっちゃんたちのドタバタな友情物語にほろっとさせられてしまう、楽しい映画でした。
もひとつは、『Grudge Match(グラッジマッチ)』。シルベスター・スタローンとロバート・デ・ニーロが、30年ぶりに対決するボクサーを演じるコメディ。ロッキー対レイジング・ブルの夢の対決ですよ。
二人とも30年前に引退して以来、スタローンのほうは職工として、デ・ニーロは昔の栄光を唯一の看板にしているしけた酒場の主として、地味な生活を送ってる。工場をレイオフされたスタローンが生活に困って電気代も払えなくなっているところを、怪しげなプロモーター(ケヴィン・ハート)にそそのかされてついその気になる、というところがリアリティあって泣ける。ロバート・デニーロの役のダメ人間ぶりも、いるいるいる、こういう人いるいる、具体的に個人的に知ってる、と感じさせるリアリティが素晴らしい。
じいさん同士の対決に世間は無関心だったのが、YouTubeの流出動画で一気にブレイクしていくっていうのもおかしい。ロッキーねたも出てくるし。
デ・ニーロ70歳もスタローン67歳も、たるたるのおなかをさらしてすごい本気のトレーニングを繰り広げて、けっこうそれも見応えが。息子とのエピソードもありがちだけど身につまされる。
これも私はすごーーく楽しめた映画だったんですが、『Last Vegas』も『Grudge Match』も、Rotten Tomatoes とかの映画サイトでは評価低いんですよねー、星2つとか。やっぱり老人に世間は冷たいのか。若いもんにはわかるめえよ(怒)。
ヒロインはキム・ベイシンガー。ほんとに60歳か?とまじまじ見てしまう素晴らしいメンテナンス。
相手が67歳でも、60代であっても、女性のほうには高いスタンダードが求められるんですねぇ。
でも60代のラブロマンスって考えてみると、かなりすごい。
だって、『東京物語』のときの笠智衆がなんと49歳だったんですよ!時代と文化が違うといっても、あまりの差にがくぜん。ひとりもののお父さんが心配で娘がお嫁に行けないっていう設定の『晩春』のときなんてまだ45歳!! 枯れ枝のようなお父さんだったけど、全然枯れて良い年齢じゃないって!
あと最後、これはもうちょっとハードボイルドなじいちゃん映画、『Stand Up Guys(邦題:ミッドナイト・ガイズ)』。
クリストファー・ウォーケンとアル・パチーノ 、そして『グラッジマッチ』でもトレーナー役で出てきた元気なおっちゃんアラン・アーキン。
30年近くの刑期を終えて出て来たギャングの仲間(アル・パチーノ)を懐かしく歓待するクリストファー・ウォーケンが、実はボスから出所したらあいつを殺せと指令を受けていて、苦悩するという話。全体に暗いトーンの映画ではあるけれど、よぼよぼで死にそうな友人(アラン・アーキン)を老人ホームから脱出させて夜の町を爆走する場面なんかは、不良じいちゃんパワーが炸裂していてすごく楽しい。
この映画はちょっとストーリーが雑な気がするけど、それでもこの不良じいちゃん3人が演じると、もうそれだけで話に奥行きを感じてしまう。
最近のじいちゃんたちはちっともおとなしくしちゃいないし、異常に元気だ。
この3本の不良じいちゃん映画を観て、「老人の悪あがき」って感じは受けなかったのだけど、それはもしかして観る側の問題かもしれない。ワカモノが観たら、痛いじいちゃんが無理してるとしか見えないのかもしれない。少し先を老いていくじいちゃんたちの不良ぶりは、段々と残り時間を意識しだした昨今、これは全然アリでしょ、と頼もしく見えるのだけど。
これだけ不良じいちゃん映画が出揃ってるのに、不良ばあちゃん映画が見当たらない。
『ネブラスカ』のお母さんみたいなキャラクターが4人くらいでつるんで好き勝手をやらかすという破壊的な映画がみてみたい。
不良ばあちゃん映画はきっと不良じいちゃん映画以上にウケが悪いのだろうけど、きっとそのうち何年か後には登場してくれることを祈る。
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