2013/09/28

ウィング・ルーク博物館


先日(もう随分前だけど)、インターナショナル・ディストリクトのウィング・ルーク博物館に行ってきました。
今月のソイソースのほうにも書いてます。


現在の建物には2008年に転居したそうで、20世紀初頭建設の古いホテルを徹底的に改装した、きれいなミュージアム。

1階のシアターには、その昔ニホンマチにあった「日本館劇場」(『あの日、パナマホテルで』にも出てきました)で使われていた緞帳が、ばーん!と再生されていて、椅子に座ってこの緞帳を見ているだけで、ニホンマチの賑わいが伝わってくる。

この中にある「まねき」レストラン、今でも営業してるんですよね!



ウィング・ルークさんは、中国生まれアメリカ育ちのとっても優秀な青年で、シアトルの高校に通い、高校在学中に第二次大戦に招集され、勲章を貰って帰って来てワシントン大学で学び、弁護士となって、1962年に30代半ばでシアトル市の市議になった人。

意外な気がするんだけど、西海岸で、アジア系が公職に就いたのは彼が初めてだったそうです。

ハワイではまさにその頃、テリトリー(準州)から州になるのと同時に、若きダニエル・イノウエ議員が州代表としてワシントンDCに入ったんでした。イノウエ議員もウィング・ルークさんと同様に大戦で一兵士として戦い、帰還後GIの奨学金で大学からロースクールに進み、政治家を目指した人。同時代の同じくらい優秀な民主党のホープ同士として、太平洋をはさんで交流もあったことだろうと思います。



イノウエ議員が州代表として国政に参画していた同時期に、この米国本土西海岸ではルークさんが州の議員どころか市議になるのもおおごとで、61年の選挙では人種差別的な中傷が繰り広げられていたのに対して、若い人(たぶんワシントン大学の関係者が多かったと想像)を中心に1000人規模のボランティアが後押ししたなんてところ、規模は小さいけど2008年のオバマさん陣営みたいな熱気があったんでしょうね。



きっとそのまま活躍していたら、いずれは州や国政にも進出していたに違いないルークさんでしたが、市議になって3年後、わずか40歳で、飛行機事故で亡くなります。
カスケード山中に墜落した遺体が見つかったのは3年後だったそうです。

館内ツアーのガイドさんは、そのルークさんの甥御さんだそうで、この博物館はルークさんの捜索のために集まった資金をもとに創設されたんだと話してくれました。




1階の乾物屋さんは、ちょっと数週間バケーションで休んでましたっていう感じの、すぐに主人が戻ってきて営業を再開しそうな風情で、干しえびまでそのまま。




ここは、20世紀初頭からほとんど改装されずに営業していた中国人の家族経営のお店がそっくりそのまま、売りものの干しえびまで含めて寄付されて、ミュージアムの一部になっているというライブな展示です。



この建物、中国人有志が株式会社のように資金を出し合って建てたという、アジア(日本、フィリピン、中国)からの出稼ぎ単身労働者向けのホテルで、インターナショナル・ディストリクトが寂れていた70年代以降、放置されて鳩やネズミの巣になっていたのを大改装したのだそうです。


復元された宿泊者用の部屋。館内ツアーで見られます。
どの部屋に窓があって、意外に居心地よさそう。単身労働者の部屋っていうと「蟹工船」みたいな環境を想像してしまうけど、20世紀初頭とはいえ、そこはさすがアメリカというべきか、建築基準によって各部屋に窓を備えなければならなかったため、建物の真ん中に明かり取りの「light well (光井)」が作られてます。



労働者の仕事の場所は鮭の缶詰工場などが多かったようです。


最上階にあるのは中国人アソシエーションの集会場。


白人の銀行は移民を相手にしてくれなかったため、事業経営におカネを出し合ったり、人や仕事を斡旋したりという互助会のような組織がたくさんあったのだといいます。



ユニークな顔をした獅子? なんだか誰かに似ている。
うちの息子はこの獅子を異常に怖がった。


当然ながら雀卓も。

気づいてみると、インターナショナル・ディストリクトの古い建物の最上階には、こういうアソシエーションのものらしい立派な出入り口がほかにもいくつかあるのでした。




1階の展示には、さまざまなアジア諸国からの移民のアメリカでの歴史や生活のひとこまがフィーチャーされていて、日系移民の大戦中の収容所生活についても展示があります。

 Wing Luke Museum of the Asian Pacific American Experience という長い名前にこめられているのは、なかなかひと言では説明しきれない複雑な歴史。

ウィング・ルーク博物館

719 South King Street, Seattle, WA 98104
(206) 623-5124
入館料:大人12ドル95セント
10am-5pm (月曜休館)

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2013/09/24

苺ショートケーキの町


Gig Harbor(ギグ・ハーバー)です。

タコマのちょっと上、タコマ・ナローズを渡ってすぐのとこにある小さな町で、ピュージェット湾のすごく奥まったところ。こぢんまりした入り江を囲んだ港がある。

まるで池のような静かな浦ですが、これでもれっきとした海。ちゃんと太平洋につながっている。太平洋までは200キロ以上あるけど。

タコマ山(レーニア山)がちょうど良い位置に見えて、山中湖みたいでもある。



19世紀後半から入植が始まっていたという(ここも北欧系の人が多かったようです)、入江を囲む町並みは、ちょっとリゾートっぽい雰囲気です。

ここのベーカリー&カフェ、Susanne's は、心なごむおいしさでした。


パニーニとスープ、おまけのパスタ、ここで焼いているパンパニッケルなどの田舎パンもおいしい。



でも特筆すべきはこちら。日本ふうショートケーキ。なぜ、あなたがこちらに? と尋ねたくなる、その佇まい。4ドルでいくらか小銭のお釣りがくる値段でした。 

ワシントン産牛乳を使っている生クリームがうまっ。 スポンジも文句なしです。もちろん、目の奥が痛くなるようなアメリカンな甘さではありません。素朴なところがまた素敵。もうちょっと食べたいくらいのサイズにも、心を掴まれる。

アメリカで食べた苺ショートケーキのうちで、ケーキ作りの上手な友人が作ってくれたのと、日本人パティシエのいるケーキ屋さんのを含む、ベスト3に入る上品な味。

こうして、ギグ・ハーバーは苺ショートケーキの町として記憶されるのでした。


エクレアもあるよ。


はい、8月に撮った写真でございます。まだラベンダーが盛りの頃。 屋外席の季節は、もうそろそろ終わってしまったですね。

こんなところに?と思うような小さな町に、優秀ベーカリーやらカフェやらがひっそり隠れているのが、ノースウェストの嬉しいところです。

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月夜の舞 


19日、中秋の名月の宵。

Aさんの、緑に囲まれた素敵な邸宅にて、舞踏家薫さんのパフォーマンスを拝見いたしました。

かぶりつき席にて。『ツクヨミの笑み』


能舞台のような、緑の梢の海の上に張り出した素敵なデッキがステージ。

今回も書家 Yoshiko氏が、文字のうごめく空間を作る。


今回は、赤いTシャツ地に書かれた文字を引き裂いた、赤麺、こと「しがらみ」が、舞台の真ん中にうにうにと異常な存在感を放って鎮まっておりました。


白い結界に置かれた、しがらみ。


舞台をしつらえている間に、梢の間に月がさしのぼって来ました。



日もとっぷりと暮れたころ、鐘の音とともに舞踏家が登場。



にじり口のような、小さな窓から! 『リング』の貞子を一瞬思い出してしまいました。


 異界からまた別の異界へと、生まれ落ちた女。
 


しがらみと戯れる。幼女の魂。


しがらみにまみれる。 舞踏家の後ろでは月が静かにのぼり続けています。



漢字は幾百億の重い思いを背負っている。


月の人は文字を散らしながら歩く。



冷たい月の見下ろす舞台。ドラマチックなパフォーマンスでしたが、サロンでの開催だけに、のどかでくつろいだ感じでもありました。


昔の人は月の光が人を狂わせると、いわれのない罪を月にかぶせたものです。

ツクヨミのことは良く知りませんが、ギリシャ神話でも月は女神。夜は女のものか。


舞踏の後は、大皿に張った水に映る月を囲み、「炭坑節」が出たり、唄をうなる人もあり、たいへんに楽しい月見の会でございました。



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2013/09/21

秋のマーケット




フィニーリッジの金曜マーケットに行ってきました。

バラードやフレモントのは年間やってるけど、ほかの多くのファーマーズマーケットは10月で終わり。
ここのも今年はあと数回です。早い!


ゴールデンビーツ、ミニトマト、ズッキーニ。 花屋さんはダリアでいっぱい。
豪華なダリアが1本1ドル~1ドル50セントでした。


めずらしい色のなすがあったので買ってみた。しかし値段を聞かずに買ったら高かった!

1こ2ドルなり~! 

これはズッキーニと一緒にラタトゥイユ行き。しかし日本なすのほうがパルプが柔らかくて水気があっておいしいです。


 ゴールデンビーツは1束3ドル。まずまずお買い得。



これはオリーブオイルをかけてオーブンで気長に焼いて、サラダに。


50分くらい焼いて中が柔らかくなると、するっと皮が剥ける。 断面は外見からはまったく想像もつかない鮮やかなゴールデンイエロー。


オリーブオイルとレモンをかけて、フェタチーズ。西瓜と同じじゃん。

人参と栗の中間的な、ほっこりした甘さで、新鮮な土っぽい香り。

 

 シアトル・アーバン・ハニーというのも買ってみた。3種類あった中からグリーンレイク産のを。

これはグリーンレイクのまわりの住宅5軒の裏庭においた巣箱から収穫したはちみつなのだそうです。グリーンレイク周辺の linden tree の花がメインだと、はちみつおじさんは言っていた。

濃い色の、レモンのような香りのするはちみつです。



近所でとれた蜂蜜って嬉しい。

ホノルルのファーマーズマーケットでは、クリスマスベリーという木の花の蜂蜜が売っていて、やっぱりこれに似た濃い色の、特徴のあるつんとする香りの蜜で、とてもお気に入りだった。

KCCのマーケット、また行きたい。あのぬくい空気に包まれたい。まだ今頃、レインボウシャワーの花が咲いてることでしょう。


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2013/09/18

いまいちな西瓜のレスキュー


今年の夏はスイカを食べ損ねたのをうらみに思っていたので、トレーダージョーズでオーガニック西瓜(小玉)4ドルを見つけて即買い。

でもこれが、じょりじょりでボソボソであまりかんばしくなく、冷蔵庫の中で冷たく不良債権化しつつあったので、レスキューレシピを探してみました。

一番簡単なこれに。

バルサミコ酢大さじ3に砂糖大さじ1弱を入れて煮詰め、とろりとしたところで切ったスイカにかけ、フェタチーズを散らしてできあがり。

ほんとはミントの葉もあったら良いんだけど。
ベランダにあるのは青しそとバジルとコリアンダー。それじゃちょっとエスニックになり過ぎそうなのでやめた。

今年のスイカおさめです。
今朝はもう靴下なしじゃ寒かった。


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2013/09/17

うるさい12人目 


日曜はシアトル地元のシーホークスのシーズン最初のホーム試合で、しかも相手がライバルのサンフランシスコ フォーティーナイナーズなんで、もうそりゃ大変な騒ぎだったようです。

シアトルのファンは昔からNFL中でもうるさいので有名で、スタジアムもわざわざ音が反響するように作ってあるんだそうで、遠征してきた相手チームをびびらせるので「The 12th Man = 12人目のプレーヤー」といわれるのをシアトルのファンは誇っているようなんだけど、前回フォーティーナイナーズのQBが「 The 12th Man なんて試合に関係ねーぜ」みたいな発言をしたもので、シアトル人はますますやる気になって試合に臨んだのだった。

それでスタジアムは、ギネス記録を破る136.6デシベルの騒音を見事に達成。
シアトルタイムスによりますと、航空母艦のデッキの騒音が140デシベル。雷が120デシベル。ロックコンサートが110デシベル。

ジェット機が飛び立つ空母のデッキなみの騒音て、どうなの。
130デシベルになると耳が痛くなり、聴覚に障害が出る域。

スタジアムに行く人は耳栓所持が推奨されていて、知り合いのシーズンチケットホールダーも、耳栓持って行ったといっていた。

 試合の結果も29-3というボロ勝ちでした。よかったね。これで負けたらもう次からは大騒ぎする意味がなくなるところでした。

シアトルの人って普段はもの静かで内向的でNERD な都市だと評判なのに、なぜスタジアムに入れてしまうと急にこんなに騒ぎ出すんでしょうか。


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2013/09/15

流木たち


Dungeness crab の名前は、ここのDungeness 湾から来てるんだそうです。

でもこの日には、浜ではカニは見かけなかった。


流木がごろごろの浜。ビーチに来る大人は、みんな、ただ流木に座って波を眺めている。

(子どもはみんな何か海に投げたり走ったり)

この日の日曜版にたまたま、流木の記事がでてた。


In one of the few studies to look at the function and characteristics of local driftwood, UW graduate student Daniel Tonnes tagged and carbon-dated logs at eight Puget Sound beaches. He found that more than 90 percent of the larger logs died between 90 and 300 years earlier, with the majority dying pre-1850.(Seattle Times "Driftwood comes and goes, telling stories" 2013/9/6)

(この地域の流木の特徴や働きについての数少ない研究の中の一つは、ワシントン大学の大学院生ダニエル・トンズによるもので、ピュージェット湾の8つの浜で流木にマークをつけ、放射性炭素で年代測定を行なった。これにより、大きめの流木の9割が90年前から300年前に枯れたもので、大部分は(この地域に白人が入植して伐採が始まった)1850年以前に枯れたものだということが分かった)。


この流木たちのほとんどが、90年から300年もピュージェット湾を行ったり来たりしているんだって!

これだけ綺麗に骨のようになるにはどのくらいかかるのかなと思ったら、100年以上も波に洗われているとは。


 これももしかしたら、独立戦争のころに川から流れて来た木かもしれません。



流木を見ると、人は立ててみたくなるらしい。


人は丸い石をみると、積みたくなるものらしい。


この浜には、石蹴りにちょうど良さそうな、きれいに平たく磨かれて丸くなった石がざくざくあります。



ソーダのような波。


なかなかZENなビーチです。時間のある(寒くない)晴れた日の散歩にはお勧め! 


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