2015/08/07
大地震が来るよ
先月の『New Yorker』誌に載った記事「The Really Big One」のせいで、シアトルでは非常用キットの売上が急に伸びたんだそうです。
この記事は、シアトルを含む太平洋岸北西部に間違いなく来る巨大地震について、予測されている恐ろしい事実を余す所なく臨場感いっぱいに紹介してます。
記事はこちら。もうこのイラストからして怖い。アメリカの北西部がそっくりぺろっとめくれてなくなってるの図。
かなり長い詳細な記事で、
1)たまたま日本で学会に出席していて東日本大震災にでくわした地震学者の、3.11の思い出
(学会に集まった地震学者たちが、揺れが始まった途端に腕時計をみて時間を測り始め、大震災になると気づいていくところが生々しいです。)
2)Cascadia subduction zone とは何かの説明
(西海岸の太平洋沖700マイルくらいのところにあるプレートが出会う場所で、日本語では「カスケード沈み込み帯」と訳されてます。
アメリカ大陸が載っているプレートの下に海洋プレートがゆっくり沈み込みながら緊張を静かに高めていて、その力が何百年かに一度断層の大破壊を引き起こして大地震を引き起こすことがわかったのは、実はつい最近だという。南海トラフ地震と同じ構造。)
3)この断層が急に沈むとどんなことが起こるかの不吉な予言
(最大規模の断層破壊が起こった場合には、マグニチュード9の地震が起き、巨大津波が日本とアメリカ北西海岸を襲い、シアトルからオレゴン北部までの地域が壊滅的な被害を受ける。
シアトル市内でも地すべりが3万ヶ所予想されてるそうです。
FEMAでは、この巨大地震が起こった場合には死者1万3000人、負傷者2万7000人という、アメリカ史上最大の自然災害になると予測。)
4)この「沈み込み帯」が巨大地震を起こすことが発見されたいきさつ
(日本で記録されていた1700年の「みなしご元禄津波」が実はシアトル沖の地震が原因だったということが突き止められたのが、1990年代。
この話は以前にどこかで読んだことがありましたが、推理小説みたいな話で、とても面白い。)
5)日本に比べて、アメリカのこの地域ではいかに大地震に対する備えや認識のレベルが低いか
(送電システムや石油や天然ガスの施設にもほとんど地震への備えがなく、耐震構造も1994年までマグニチュード9の地震を想定していた建物はほとんどない。オレゴンでは75%の建物が巨大地震に耐えるようには作られていないとのこと。
いやその意識高いはずの日本だって「想定外」のおかげであんなことになったのですから、と思うと大変な現実です。
最後に紹介されている、オレゴン州の太平洋沿岸の学校の話が悲痛。津波が来たら完全に沈むのが確実なエリアに小学校がある自治体で、資産税をいくらか上げて、沈まない地域に土地を買って移転させるという案が提出されたのだけど、住民投票でボツになったという話。この小学校の生徒たちにはまともな避難場所が用意されていない。アメリカはこういうことも国や州じゃなくて自治体レベルで決まるのですよね。)
…という、実に暗く恐ろしい内容の記事なのでした。
あと50年以内にこの「カスケード沈み込み帯」由来の大地震の起こる確率は、3分の1。壊滅的な巨大地震が起こる確率は10分の1。
アメリカ政府が西海岸の土地を手に入れ、幌馬車や船で最初の入植者たちがこのあたりにやってきてから、まだ200年そこそこ。
何度も大地震や津波に見舞われてきた日本とは違い、こんな地震の起きる地域とはうっかり知らずに、都市を建設してしまったんですね。
この記事で紹介されたFEMAのディレクターの
「Our operating assumption is that everything west of Interstate 5 will be toast.
(ハイウェイ5号の西側は壊滅すると推測されます)」
という言葉がシアトル住民の間に軽くパニックを引き起こしました。
わたしもハイウェイの西側に住んでますが、I-5の東に住んでるからって「ほっ!俺はかろうじて東側だぜ」て、安心してる人、全然違いますよ(笑)!
みんな、こんな記事を読んで震え上がったことも数週間すればほんのり忘れてしまって今シーズンのシーホークスの成績予想で頭がいっぱいになるのは目に見えていますが、とりあえず、災害時用のキットを揃え、当座の避難場所や連絡方法をいくつか考えておかねば。庶民にできるのはそのくらいでしょうか。
あとは家の中で本棚が倒れてこないように補強するとか、寝るとき近くに靴と着替えをおいておくとか(ガラスその他が割れて歩けなくなる可能性があるので。わたしはハイキングシューズをベッドの下に置いてます)。
うちでも数日分の水やら非常食やらを買ってはあるけど、まだちゃんとしたサバイバルキットに組み立ててません。(この間非常用のレトルトカレーを食べちゃってまだ補給してないし)
日本ではやっぱり災害への意識が高いから、簡易トイレまで入ったキットがいろいろ揃ってますね。
とはいえ、本当に巨大地震で交通もすべて遮断されるような事態が起きたら、この地域の数百万人のためにFEMAがどのくらいの救助をしてくれるのだろうか。
そんなことになったら、アメリカという国そのものが間違いなく傾くのだろうなあ。
近所のカフェに行く途中の道。家の前にラベンダーが豪勢に咲いているお宅が多い。
こんな普通の平和な日常は本当に最高の贅沢ですね。
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