2016/07/08

公園のウナギとスタバ、コルビジェとゴーギャンの浜辺、ポンピドーセンター展


宿で自転車を借りて、蔵前から上野公園へ。合羽橋とアメ横をとおって20分くらい。


レンタサイクルもオサレな細身のハンドルまっすぐな自転車(右の2台です)。
わたくしはママチャリのほうがよかったのですが…。だって足とどかない(´・ω・`)。

かなり一生懸命息子の後を追った。
こいでるうちは楽しいけど止まると足のやり場に困る。

そして上野の人混みで転倒!!     (´・ω・`)。

もう2度とオサレ自転車なんか乗らん。


上野公園の真ん中にスタバができててびっくり!
都美術館の「ポンピドゥー・センター傑作展」を観てから公園内の伊豆栄へ。



去年、ご一緒にお仕事させていただいた浅草育ちの企業コンサルタントさんに、うなぎを食べるならここ!と教わった伊豆栄の梅川亭。

伊豆栄はもう1軒あるけど同じ値段でこっちのほうが眺めが良いというお勧めでした。

精養軒のすぐちかく。

たしかに、緑に囲まれたステキな環境でした。
漱石先生の時代からある老舗で、漱石の小説にもたしか、誰かが鰻をあつらえる場面が出てきたような気もする。


お昼は2時半まで。観光客向けのお商売で、サーブしてくれた和服のお姉さんはとても感じが良かったけど 、器に水滴がついたままだったりするところがけっこう雑な老舗でした。
お客さんの半分くらいが、外国の人だった。

鰻重はもちろん、おいしゅうございましたよ!


鰻を食べたら、さて午後の部。次はル・コルビジェ設計の西洋美術館へゴー。

自転車で上野公園を徘徊できるなんて、なんて幸せなんだ。もし短期でも東京に住む機会があったら、ぜひこの辺に住みたい。


こちらは常設展の松方コレクション。何十年も前に何度も見ているけれど、うちの青年にも見せてやらねばと。


モネの絵がもっとあったように記憶していたけど、睡蓮は1枚だけだった。

ゴーギャンさんの小品が素敵でした。19世紀の水着はフルカバー。水に濡れたら重かったことでしょう。


ゴーギャンさん、ブルターニュ時代の作品。色がすでにタヒチ。


こちらは70年代に増築された新館。高い天井の照明が素敵。
一見、スカイライトのようですが、蛍光灯でした。


シアトルではあまり見られない美術作品をよく見るように、というのが青年の夏休みの課題。東京は、世界一文化施設が豊富な都市ですよね。


フェルナン・レジェの威張ったニワトリ。なにをそんなに怒っているのだ。


都美術館の『ポンピドゥー・センター傑作展』のほうも、とてもおもしろかったです。

20世紀初頭から現代までのポンピドゥー・センター所蔵作品の中から、1年に1作品を選択して展示。全体を通して、怒涛の20世紀がアートで体験できる構成になっています。

作品とともに作家の言葉が展示されているのも、とてもよかった。

たとえばマティスの作品には
「I feel through color.  Therefore, my canvas will be always organized by it」
(私は、色を通してものを感じ取る。だから、私のキャンバスはいつも、色で構成されているのです)
という言葉が。

でも一番心に迫ったのは、1945年のコーナーの展示でした。

原爆が落とされ、ドイツと日本が降伏し、信じられないほどたくさんの人が死んで、第2次大戦が終わった年。

この年を代表する作品は展示されておらず、その代わりにからっぽの白い壁の上に設置されたスピーカーから、この年に書かれたエディット・ピアフの「ラ・ヴィアン・ローズ」が流されていました。
もう号泣。

全体に会場の構成がすごくカッコ良かった。壁の色や照明とかも。
ただ、最後の現代の部屋はちょっと見づらかった。


アートの変転とともに、20世紀の歴史が迫ってくる展覧会でした。

出口にリサとガスパールがいた!展覧会始まったばっかりで、まだリサ&ガスパールのグッズは売ってなかった(涙)。8月に売り出すそうです。会期は9月22日まで。


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川辺の宿


東京では4日ほど、息子と2人で蔵前のホステル「Nui」に泊まりました。
隅田川がすぐ目の前、浅草まで自転車で10分くらいの便利なロケーション。
地下鉄で神保町にも銀座にもドアツードアで30分もあれば余裕で行ける幸せ。


いつも東京西部の弟の家に滞在するのだけど、やっぱり都心まで1時間強かかるのが辛くて、下町に泊まってみたかった。


1階はカフェ&夜はバーになってて、週末の夜など超満員の盛況でした。
泊まってるのはヨーロッパ、アメリカ、中国、韓国からの観光客と、日本の人が3割くらいの感じ。


ツイン(二段ベッド)ルームで7200円/泊。相部屋のドミトリータイプなら3000円台。
トイレとシャワーは共同で24時間使えます。


非常にコンパクトな間取りがチャレンジでしたw


内装のディテールが手作り感いっぱいなのだけど可愛くて、いろいろ和みました。


最上階は共同スペースで、キッチンと読書室&食堂。


 この70年代な電気スタンド!


雨の日はここで少し仕事。なごむー。


スタッフは20〜30代。皆とても明るくて感じの良い子ばかりで、海外に住んだことがあったり、これから海外で何かしたいという夢を持っている人が多いのだそうです。 自分は音楽をやっているという男性スタッフが話してくれました。


うちの息子はすっかり気に入ってしまって、ここでバイトして東京に住みたいとか言い出した。をい。


コーヒーと自家製クロワッサンもおいしかったですよ。

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2016/07/07

おもてなしミスト

ポストモダンな京都駅。


この吹き抜けの2階部分にあるカップ型ストラクチャーがブラジャーに見えるのは私だけでしょうか。



殺人的に蒸し暑かった日、四条のバス停にも京都駅にも、イチゴ畑のスプリンクラーみたいな装置から霧がまかれていました。

京(みやこ)のまちなかミスト」という「京都の夏のおもてなし」だそうです。
風鈴も取り付けられて、死人が出るレベルの暑さの京都にのこのこやってきた観光客の苦痛を少しでも和らげようという心遣い。

たしかに、打ち水のように、ないよりは涼しげ。しかししょせん、「焼け石にミスト」。

もうちょっとコンクリを減らして緑と水を増やすとか抜本的な対策を考えてはいかがでしょうか。

京都駅前のバスのりばに竹やぶがあったら素敵だと思うけどなー。

ちょっと大きめの鉢植えでも可能でしょ。そして清流を流してはどうか。子どもたちも水遊びができるように。

超暑の日も鴨川沿いと高瀬川沿いは涼風があってほっとしました。


日本の美しい壁。(河原町正面の渉成園、築地塀)
瓦と土がサンドイッチになっている。すばらしいテクスチャー。かっこええー。

ぜひこのような景色を京都駅前に! ぜったい数度は涼しくなる!

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エコノミー弾丸京都


冗談じゃないくらい蒸し暑い東京です。東京滞在もあと数日。

息子は先にシアトルに帰ってます。

先週は関西に行ってきました。京都もサウナのようだった。

友人R子さんが鴨川ちかくの素敵なコンドミニアムのお部屋を、使っていいよー、と言ってくださったので、ありがたく使わせていただき、2日間だけではありましたが京都に住んでる人の気分満喫。うれすぃー。


下京エリアのお宅。
R子さんの自転車を借りて朝から弾丸散策。 京都は碁盤の目なので迷子になりにくい。


星マークの神社に行き当たる。安倍晴明神社です。

白と紫の桔梗が満開でとても綺麗だったのだけど、写真撮り忘れた。

桔梗は「晴明桔梗」紋のモチーフなのだそうだ。

安倍晴明さんといえば、岡野玲子さんの描く『陰陽師』の美しい顔で焼きついています。
ていうかその他にはあまりにも何も知らない。すみません。


おひる、前々回のIJETでお会いした翻訳者Hさんと再会。

愛する錦市場の中にある黒豆専門店にて、すべてが黒豆でできている、美しい豆ランチ。


 テーブルには巨大「石臼」がおいてあって、デザートのわらび餅にかけるきなこは、黒豆をもらって自分でぐるぐるして作成するシステム。なかなか楽しい。

 美しい黒豆きなこ。


食後に錦市場を散歩。漬けものとか干物とか買って帰りたいー。

前回ここに来たのは10年以上前。息子がまだ小学校4年くらいのとき、まだ元気だった母と来たのでした。あのときは干物を東京に買って帰って、母が焼いてくれたのを食べた。

10年前と比べると、圧倒的に外国人観光客の数が増えたなー。

市場には天神さんもある。


ただ単に町を歩いたり自転車に乗っているだけで、サウナにいるみたいに背中に滝のような汗。
毒素を出しきったかしら。


夕方は昭和な珈琲店「六曜社」のカウンターで、 ちょっとビクビクしながらラップトップを開いて仕事をさせていただきました。

「…すみません…おじゃまでなければ、この場所使わせていただいていいですか」と超丁寧に尋ねるわたくし。こういう喫茶店でノートパソコンなんか開くのはちょっと邪道って気がしながら。すみませんすみません。


夜のひとりごはんはカレー。
京都本でみつけた、四条のカウンター7席しかないカレー屋さん「カラヒカレー」。
「チキンカレー、チャイつき」1,000円と大盛り+200円しかない、きわめてシンプルなメニュー。

武士みたいに寡黙なご主人が一人で仕込みから黙々とやってるお店。

とっても真面目な味のカレーでした。チャイもおいしかった。かかってる音楽も多彩で。
居心地よくて、いろいろ滋養をいただけたお店でした。また行きたい。


お店の隅に下がっていたランプが素敵だったのでご主人にきいてみると、瓢箪を使った手作り品で、ご友人が開店祝いにプレゼントしてくれたものなのだそうです。

穴をあけてガラスビーズを埋め込んであるのか。本当に綺麗で、幸せな空間を作ってました。


雑居ビルにあって入り口がとても控えめなので見つけるのに苦労しました。
超控えめな黒板が目印です。階段をあがってすぐ左が入り口。

階段の代わりに冷蔵庫サイズのエレベーターに乗ると、2度と生きて表に出られないのではないかというようなスリルが味わえます。


夜は高瀬川沿いの銭湯「サウナの梅湯」へ。銭湯大好き!

男湯と女湯の間は天井部分があいていて、男湯からも話し声や桶のカラーンという音が聞こえてくる、昔ながらの正しい銭湯。

天井に色硝子(実はプラスチックなのだとか)がはめ込まれた大正モダン風の内装は、最近のものなんだそうです。20代の経営者がやってるレトロでファンキーな風味の銭湯です。サウナはあっつあつ。

フルーツ牛乳はなかったけど「マミー」を買って飲みながら帰る。ああ至福。
超エコノミーながら満足度120%。幸せすぎる京都の夜でした。

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2016/07/06

ウソと欲望と神聖少女 リップヴァンウィンクルの花嫁@エジプト劇場


6月のシアトル国際映画祭(SIFF)の日記が書きかけでした。

今年はSIFFで何本か映画を見て、岩井俊二監督の『リップヴァンウィンクルの花嫁』も、観に行った。

場所はキャピトル・ヒルのエジプシャン・シアター。 有名なハリウッドのエジプシャン・シアターほどではないですが(行ったことないけど)、キッチュなエジプト風のデザインがそこここにほどこしてあるクラシック映画館。1915年の建築だそうです。

ここは数年前に一度閉館したのだけど、クラウドファンディングでSIFFがお金を集めて、SIFFの専用映画館にしたというところ。あっというまに30万ドル以上集まったらしい。

だから名前も今は「SIFF Cinema Egyptian」。
シアトル近辺にはこういうモノにおカネをぽんと出す方々が多いんですね。


さて映画の後、岩井俊二監督のQ&Aがありました。
通訳の方がついていたものの返答は監督自ら英語で、とつとつと答えてらっしゃいました。


岩井監督、キュートだわ〜。
53歳の男性に向かってカワ(・∀・)イイ!!というのもなんだけど、素でかわいいー。

80年代の文化系高校生がうっかりそのまま大人になってしまったような。それこそリップ・ヴァン・ウィンクルw。

岩井監督の映画はこれまで『打ち上げ花火…』『スワロウテイル』(←かなり好き)と『リリィ・シュシュのすべて』くらいしか見てなかったですが、岩井監督は、きっと80年代の少女マンガが好きだったのではないだろうか、とくに大島弓子作品。と思った。

大島弓子が好きな人は岩井監督の映像が好きなのではないだろうか。私も好きです。

大島弓子の描く、蒸留水でできているような涙をパタパタと流す、線が細くて透明で重さがないような少女たちを、黒木華ちゃん演じる七海ちゃんを見ていて、すごく懐かしく思い出しました。

以下ネタバレあります。


クラゲがでてきます。この写真のクラゲはアトランタ水族館のだけど、映画のはミズクラゲでした。でも毒があるのはこっちだよね。

主人公の七海(黒木華)は、風が吹いたら死にそうなほど小心な、コミュニケーション障害で主体性のない女。

声が小さくて教員のしごとをクビになり、SNSで知り合った夫にもハラを割って何もかも明け渡すような付き合いはできない。結婚式に親族が両親だけというのは「恥ずかしい」と夫に言われて、SNSで知り合った怪しい斡旋屋アムロ(綾野剛)に頼んでニセの親族を雇う。

アムロは、食わせもの。
優しく理解のある顔をして、その実どんどん七海を陥れているのだが、七海は最後までそれに気づかない。
白いウサギについて不思議の国に入り込んでいくアリスみたいに、アムロの後をついていく七海はどんどん訳の分からない境遇に陥っていく。

夫の不倫を心配してアムロに調査を依頼すると、どういうわけか自分が浮気をしていたことになってしまい、夫の母に離婚を言い渡される。

行き場のなくなった七海はアムロの紹介で結婚式のニセの親族のアルバイトをし、そこでAV女優のましろ(Cocco)と出会う。

アムロはさらに、不思議な大きな屋敷での「メイド」の仕事を七海に紹介する。でも実はこの仕事の雇い主はましろで、彼女は、 乳がんで余命数ヶ月しかなく、一緒に死んでくれる人を求めていたのだった。
ましろは、毒のある魚やクラゲや貝に囲まれて、死をみつめている。


この映画に出てくる主人公の3人は、アムロも、七海も、ましろも、みんな現実感がない。
なんとなく少女マンガの登場人物のように、重力のない世界にいる。

でもそれはこの映画の難点ではなくて、個性なのだと思います。

たとえば大島弓子の描く少女マンガには、ギラギラした欲望の世界から可能なかぎり遠く離れて鋭く鋭く儚さを研ぎすませた世界で、詩や祈りの中にしか存在し得ない、ものすごくパワフルなリアリティがあった。

岩井作品にはそれと同じような感触の詩的なリアリティがある。

岩井監督はもしかしたら、80年代少女マンガの直系の後継者なのかもしれない。

ウェディングドレスの2人のシーンは本当にはかなくて綺麗で、ああこれは少女マンガの感性だ、と思いました。

主人公の3人は3人ともがウソの中で生活していて、ウソを通してしか人とコミュニケートができない。

七海は一番近い人間であるはずの夫にも本音で話すことができず、顔を見たことのないソーシャルネットワーク上の仲間にだけ心を打ち明ける。ニセモノの姉妹として出会ったましろと、かつてレストランだったというニセモノくさい洋館で暮らすうちに、本当の愛情が芽生える。

ましろはAV女優としての仕事に自分なりの誇りを持ちつつも、人間として失敗しているとたぶん思っていて、七海には自分の仕事も立場も打ち明けない。

「この世界は本当はさ、 幸せだらけなんだよ」とましろは酔って、七海に語る。
でもそんなことが分かったら、私はこわれちゃう。だからおカネを払うんだ。という。

アムロは平気で人を陥れるが、なにか超然としていて、自分の使命をまっとうするかのようにウソを塗り固めている。

ウソの生活の中に急に唐突に現れる、誰かを無条件に信じたいという、激しい望み。

ましろはそれを、金銭を支払うというかたちで実現しようとする。

七海は自分の前に飛び込んでくるものを闇雲になんでもかんでもそっくり信じようとする。

アムロはそれをなんだか少し羨ましそうに見ている。

岩井監督はQ&Aで、これは「コメディ映画だと自分では思っている」と言ってました。
「題名を『ラッキーガール』としてもいいくらい、この主人公は殺されそうになっても死なない」と。

七海はとことん騙されても自分では気づくことなく、とことん元気で生きている。
映画では彼女が最後に幸せそうに笑う人になる。

コメディ映画になっているかどうかはちょっと疑問だけれど、あまりにも無防備なものの持つ神々しさみたいなものが、とても丁寧に描かれている映画です。


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