2015/04/19

日本の美:「繊細」「丁寧」「緻密」「簡潔」な包装アート


先日、猫パパPご夫妻に日本からのおみやげを頂きました。

美しい京都のお煎餅。

空気のように軽いお米のふわふわぱりぱりな食感も素晴らしいんですが、それより何より目を惹きつけられたのは、出来上がりはきわめてシンプルながら超絶技巧の包装。

お煎餅が入っている円筒形の缶が、一枚のふつうの紙で包んである。



こうやって。

長方形の紙で円筒が包めるのか! しかも、使ってあるシールは1枚だけ!
余計なテープがベタベタと貼ってあるような、雑な仕事ではありません。

日本に住んでいたら、きっとごくあたりまえのこととして見過ごしていたのかもしれないけど、四角い箱のキャラメル包みしかできない私からみると神々しくさえ見えるこの匠の技に、えらく感動してしまいました。


今、原研哉さんというデザイナーさんの『日本のデザイン』という新書を日本からNちゃんに送ってもらって読書中なんですが、その中で原さんは、日本には「繊細」「丁寧」「緻密」「簡潔」という、長い伝統に根づいた価値観が行き渡っている、これは世界でもきわめて特異なことだ、といってます。

これには激しく同意。
ほんとにこんなに何ごとにも丁寧な国民ってたぶん、世界のどこにもいないと思う。

アメリカのカスタマーサービスに慣れた後で日本に一時帰国すると、毎度毎度激しいカルチャーショックを受けるゆえんです。

この缶を包む紙の形は、まさに「繊細」「丁寧」「緻密」「簡潔」の粋。

これは間違いなく、風呂敷でものを包む、キモノという単純な形の衣服で身を包む、という生活の美意識が生んだものなんだなあ、としみじみ感慨にふけってしまいました。

「第二次対戦後、高度成長期を経て日本の街並みはひどく醜いものになり、家の中には醜くて要らないモノが溢れるようになったけれど、この辺で仕切り直して、日本にもとから根づいている美意識を社会の資本として活かし、要らないものを減らし、ほんとうにうまく機能する美しいデザインを世界に打ち出していってはどうか」

というのが原さんの主張です。


無駄といえば、日本のお菓子やらの包装って、過剰としか思えないものが多いです。
「丁寧」「繊細」を常に求める日本の消費者の要求に合わせようとするあまり、過剰さが、無駄が、ふくれ上がってしまっているように見えます。

たとえば一口サイズのお煎餅やクッキーに、プラスチックの個別包装、プラ材の成形材、プラスチックの外袋、と二重三重の袋がかけられていて、中身の5倍くらいの包装材がゴミとして出る、というのは、「緻密」であっても「簡潔」ではないし、美しくもないですよね。

この洗練を極めたお煎餅缶の包装のように神々しいほど簡潔な美しさを持ったものが、もっと日本からどんどん出てきて、世界を驚かせてくれるといいな、と思います。


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2 件のコメント:

  1. 母が大好きな一保堂の茶筒もこうやって包まれてます。最初感動して茶筒を出した後、抜け殻を元に戻して飾ってた笑
    極力シンプルで無駄のない生活をしたいですね。

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    1. 一保堂の包装も簡潔で素敵よね~!わたしも大好きー!
      この包装をぜひマスターしたいと思い、紙を仕舞ってあります。できるのか。

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