2015/06/10

ケイちゃんのお葬式


(English version is here)

先日、友人の妹さんが、亡くなりました。
46歳でした。
彼女はダウン症でした。

生まれたときに気管だかに障害があって死にかかっていたのに、病院のスタッフはダウン症だからといって放置しようとしたのだそうだ(スリランカでの話)。自ら医師でもあったお父さんが激怒して、手術のできる小児科医を直接電話で呼び出して手術をさせたのだと、棺の前でそのお父さんが語ってくれました。

友人のジェニファーは13年前にそれまで東海岸にいた妹のケイちゃんを自分の家に引き取って、それからずっと一緒に過ごしてきました。

イギリス人のお母さんとスリランカ人のお父さんを持つスリランカ生まれのジェニファーは、ものすごく強い生命と愛情に溢れた人。そしてジェニファーの旦那さんジムもまた、とてつもなく懐が深くてリソースフルな人。

ケイちゃんがシアトルの家に来たときには、ジェニファーの娘たちは2人ともまだ小学生で、この2人ともに聡明で優しくてきれいなお嬢さんたちは、ケイちゃんを叔母さんというより姉妹のようにして、育ってきました。

その妹のほうがうちの息子のガールフレンドなんですが、デートし始めた高校生のときに、まず、「私と付き合うなら、家族とパッケージなんだけど」 と宣言したんだそうです。

うちの息子はあっという間に賑やかな家の仲間にさせてもらって、ケイちゃんにも特に気に入ってもらったらしく、いつも私にケイちゃんの話をしてました。
いつだったかケイちゃんに描いてもらった絵が、まだうちの壁に貼ってあります。




この家族はとにかく圧倒的に賑やかで愛情深くて、人間のほかにもシェパードとバーニーズマウンテンドッグとテリアがリビングで仲良く場所を譲り合っています。

何年か前のサンクスギビングに初めておよばれして行ったら、ケイちゃんが初対面のわたしに「ハッピーバースデー!!」とお祝いの言葉をかけてくれました。えっだれの誕生日?と思ったら、ケイちゃんは一年中いつでもお祝いをしてるのでした。

お祝いするにふさわしいような楽しい気分の時にはいつでも「ハッピーバースデー!」とまわりの人を祝福してくれるのが、ケイちゃんでした。



彼女は生涯に何度も大きな手術をして、その度に医師たちの予測を裏切って乗り切ってきました。シアトルに来た13年前にも、医師にはあと数年といわれていたとか。

驚異的な生命力で何度も危機を乗り越えて、そして家族にも、まわりの人にも、驚異的なほどの愛情を少しも出し惜しみせずに与えてくれた人でした。

彼女のメモリアルサービスに、私はジェニファーに頼まれて写真を撮りにいきました。

100人以上の人が集まり、ジェニファーと2人のお嬢さんと、そして10年前に住み込みのナニーとして子どもたちとケイちゃんの世話をしたシェルビーが、ケイちゃんとの日々を語ってくれました。


ケイちゃんがユーモアのセンスにあふれていて、どんなひどい時でも笑わせてくれたこと、なにがあっても「It Will be Okay!」と明るく言う異常なまでのへこたれなさがあったこと、サッカー観戦が強烈に好きだったこと、優しい人とそうでない人を見分ける鋭い観察力をもっていたこと。

そしてこの姉妹はふたりとも、ケイちゃんが「She shaped me into a woman(私がひとりの女性として大人になるのに、とても大きな影響を与えてくれた)」、その明るさ、へこたれなさ、愛情の深さでどれだけ自分たちを感化してくれたか計り知れない、と語っていました。




ジェニファーは待ちに待った小さな妹が生まれて大興奮したときのこと、お母さんが「特別なファミリーに、特別な赤ちゃんが授かったのよ」と言って妹を紹介してくれたことも語ってくれました。

手作りのパンフレットに、ジェニファーが書いたメッセージ。

Since moving to Seattle, people would often tell us how lucky Kay was to have us, never realizing we were the lucky ones. Kay's ability to see people for who they were and love them unconditionally is the legacy she leaves for us to carry on.  
(彼女がシアトルに来てから、私たち家族がいてケイは幸運ね、とまわりの人に良く言われましたが、幸運に恵まれたのは実は私たちの方だったのです。人の本質を見抜き、そして無条件に愛することができたケイの力は、私たち家族がこれからも大切に受け継いでいける財産となりました)



会場には、ケイちゃんが大好きだった一口サイズのケーキとダイエットコークも並んでいました。

私たちはだれでも、まわりの人に影響を与えているし、時に、ささいに見えるそんな影響がとてつもなく大きな働きをする。

この世で一番大切なことは本当にシンプルで、だからこそなかなか手に入れにくいのに、ケイちゃんはいつもやすやすと手に入れて、周りの人にもいつも気前よく分けてくれていました。

ほんの少しの時間ではあったけれど、ケイちゃんに会えて私も幸運でした。


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