2020/11/06

ひっくりかえった太ったカメ

 
 

大統領はまだ決まりませんね〜!

ゆうべ(木曜夜)のトランプの記者会見が話題になってます。

いくつかの州でバイデンが追い上げて負けの可能性がちらついて来たなか、「選挙には不正があったんだ!」と根拠を示すこともなくトランプが主張を繰り返し、あまりにその内容がひどいため、会見が終わる前にABC、NBC、CBSという主要メディアが続々と中継を打ち切るという前代未聞の事態に……。

「大統領が悪質なウソを言っているので中継をやめる」。

5年前にはコメディの筋書きでしか考えられなかったようなことが現実に起きている。


わたしは見てませんでしたが、Poynterサイトの書き起こしによると、NBCのコメンテーターは

「We are watching President Trump speaking live from the White House and we have to interrupt here because the president made a number of false statements including the notion that there has been fraudulent voting. There has been no evidence of that.


ホワイトハウスから大統領の会見を中継中でしたが、大統領が、不正投票についてを含め、まったく根拠のない多くの誤った主張をしたために、中継を中断しています)」

と、視聴者に説明したそうです。

そのまま伝えてしまうと視聴者に「事実」と受け取られかねないからです。これまでの選挙となら変わらない手続きが「不正」だと糾弾して、そのうえ開票をやめろとまで言い出すのは、国の手続き、政治の手続きが機能していないという不信を国民に植えつけようとすること。

一方で、NHKはこの会見の内容をそのまま伝えて物議をかもしています。

「中立」を保とうとしたのだろうけれど、もうこの人相手に2016年以前の常識は通用しないのですよ!

やはり、この大統領の言説を、これまでの政治家と同じ文体で訳し、同じスタイルで報道することに無理がある。トランプが本当にどれほどのダメージをアメリカの市民生活に与えているか、その切実さが日本に伝わらない原因はそこにもあるのじゃないかと思う。 


 

 



CNNのアンダーソン・クーパーは、この会見のトランプの発言を、とても危険だし悲しいことだとして、

「That is the president of the United States, that is the most powerful person in the world and we see him like an obese turtle on his back flailing in the hot Sun realising his time is over.

(これがアメリカの大統領、世界で最も大きな力を握っている人物だとは。われわれの目には、彼が、暑い日光の下でひっくり返って息も絶え絶えに弱って、自分がもう終わりだと気づき始めた、太ったカメのように映る)」

とコメントしてます。

ひっくりかえった太ったカメ……。

そもそもカメは太るのか?という疑問はさておいて…。

クーパーさんはこれまでも鋭くトランプを批判してきてます。わたしはクーパーさんがとても好きだし、こういう言辞を聞くとスカッとできるのはたしかだけど、もうこういうコメントは、そろそろやめる時期ではないか、とも思います。

ここまで拮抗して、ここまで国民の半数がそれぞれ違う現実を見ているいま、どんな形であれ罵り合いはやめられる側が先にやめるべきではないか。


もちろんファクトチェックや、悪質なウソのでどころを追求することは必要だけれど、いちいち「相手側」の感情を刺激するようなことを言うのは、もうそろそろ終わりにしてもいいのでは。


どんな形であれ対話を始めないことには。そして、まずできるほうが大人として目的地を示さなくては……、とまあ、ガイジンのおばちゃんが心配しても仕方がないのですが。

クーパーさんに誰か言ってあげて。



先日、東京のにゃを美先生から早くもクリスマスプレゼントがとどきました!(早い!)

日本からの小包がとっても届きにくくなっているので、早めに送ってくれたのだけど、さくっと届いた。

とらやのミニ羊羹〜〜!なんてオシャレな「イスパハン」!
未踏の街、パリのピエール・エルメとのコラボですって。

パリもコロナと騒乱で大変ですが、どうぞ無事に乗り切ってください。パリの街をこの間、今はまってるシリーズ『The Marvelous Mrs. Maisel』で見て、なぜか涙でた。
ヨーロッパも頑張って!



 

そしてまたまたこんなに素敵な切手とともに。仏像切手シリーズ! 

麒麟さんと鳳凰さんもついている。なんとありがたい小包であることよ。


ユザワヤさんの袋にはいってきました。このヒツジ、よく見るとほんとにカワイイ。



ほかの中身も自慢。

素敵な藍染マスク(もったいなくて使えん)、超絶うまい海苔(泣くレベル)、一日じゅう食べていられるユーグレナきなこねじり。
そして福岡のりょんさんからの、おいしそうなお茶もいただきました。


食べものやデザインはほんとうにたいせつな生活の一部だし偉大な文化だなあとしみじみ思う。日本て、なんて豊かな国でなんでしょうか。

うれしい (`;ω;´)。ありがとうにゃ〜!

 

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ピンクストライプの砂岩の山 [DAY 5]

 

ロードトリップ、5日目。
ザイオン国立公園滞在の4日目です。

翌朝はアリゾナへ出発の予定だったので、実質的にはさいごの日。公園の東側入口からビジターセンターへ抜ける道を再訪しました。

やはり、ここがいちばんドラマチックでした。


車でここを通り抜けるだけでも、次々にあらわれる岩山のスケールに大感動すると思います。



 

隣りあった岩山がひとつひとつ、 みんな違う個性を持っているのも不思議だし。





テクスチャと色の大饗宴みたいな世界。

4日間いても見慣れたり飽きたりすることはまったくありませんでした。ひと月くらいここで暮らしたら、さすがに飽きるかしら。




 東側入り口からトンネルまでのあいだには車を停められる路肩のスペースがいくつもあって、公式のトレイルではないけれど、岩山に入っていくことができます。



この、ワイキキのロイヤルハワイアンホテルみたいなピンク色の低い岩山に、ちょっと登ってみました。


とても柔らかい砂岩の峡谷。

やっぱり惑星タトゥイーンを思い浮かべちゃいます。ジャヴァがでてきそう。


雨が降るときには川が流れるらしく、低い谷底は水のない河原になっていて、岩山とは違う草木が生えています。


この峡谷には、わたしたち親子のほかには、小さな男の子を連れた親子連れが一組いただけで、ほぼ貸し切り。

ビジターセンターのあたりや、シャトルで行くトレイルの混み具合を考えるとウソのようです。

 


過酷な環境でがんばる松や杜松の木たち。この根の張り方に強い意思を感じてしまいます。

車を停めたパーキングからちょっと下って、ビルの3階分くらいを登っただけですが、この時のわたしにはものすごく大変で、息が切れちゃってもうたいへんでした。



もうこれ以上一歩も動けん!となって、この松の木の下で、小一時間ほどまったり過ごしました。



お母さんはもうごけません。君はそのへんを探索してきなさい。というと、青年は岩山を走り出し。



 
あっという間にこんな遠くまで行ってしまった。


(拡大)

岩と交信中。


 

砂岩を近くで見ると、地衣類が生えていたり、いろいろな生物がさらにいろいろなテクスチャと色を作り出してて、面白い。小さなキレイな馬糞みたいなものもあるけどこれはたぶん地衣類?
ほんもの鹿フンもありましたが。




オシャレな虫くん。


河原のまんなかに生えていた花。

これだけいろいろな種類の石があるところをみると、雨が降るときはものすごい勢いで川が流れるのでしょうね。




ユッカちゃん。


すてきなテクスチャの松の幹。




車のサンルーフからiPhoneだけ出して撮った動画。編集してない撮ったままなので、ガチャガチャしてるし風の音がうるさいです。音を消してご覧くださいませ。

これは東エントランス近くからトンネルへ向かうあたりです。



アングルとか露出とかホワイトバランスとか本当にひどいけど、つぎつぎあらわれる岩山の迫力が伝わるでしょうか。




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2020/11/05

ネバダ!ネバダ!ネバダ!そしてプリン

 

シアトルは雨降りです。

大統領はまだ決まらない。

拮抗中のネバダ、アリゾナ、ペンシルバニア、ジョージア、ノースカロライナの5州のうち、ネバダとアリゾナでバイデンがリード中ですが、トランプがリードしている残りの3州でも郵送による投票の開票が始まると、差が縮まり始めました。

すると、「もう票を数えるのをやめろ!」とツイートする、この国の現職大統領。

そして自分が負けているウイスコンシン州とミシガン州には「票を数え直せ!」とツイート。

…小学校の学級委員の選挙でもそんなダブルスタンダードな主張をしたら学校中の笑いものになると思うんですけど、トランプ支持者の人はそれがおかしいと思わないのか??????




本日のニューヨーク・タイムズのサイト。

やっと、ニュースを読む心の余裕ができてきた。

どの州もまだ100%は開票が終わっていないのですが、グレーの州は拮抗しすぎ、さらに開票が進むまでまだどちらとも判定できない州。

なんでここまで拮抗するねん!…というのが正直な感想です。

そして、この国の、さらには世界に今後4年間大きな影響をあたえる大統領を決めるのが、この5州のわずか数万とか数千とかの票だというのが、なんとも理解しがたい話。

たとえばネバダ。(ワシントン・ポストのサイトより)

ネバダ州の開票結果は、週末まで決まらなさそうです……。


全体は赤くって、ラスベガスとリノというふたつのカウンティ(郡)だけがブルーなので、共和党優勢?とみえてしまうのですが、赤い郡の人口はとても少ない。たとえばこのエスメラルダ郡は、人口1176人。開票数は500票未満。


 
北端のエルコ郡(人口約5万人)のウェルズという町は、先日のロードトリップで最後に泊まったところ。

 


こんなところでした。



それに対してラスベガスのあるクラーク郡は、200万人近い人口があります。

「都市は民主党支持、いなかは共和党支持」というのはとても簡単な図式だけど、見事にここでもあてはまってますね。全国を見ても。



バイデン優勢の希望は見えてきたけれど、まだ予断はゆるせないので気を静めてプリンを食べる。

あんまりキレイじゃないのでアップしなかったのですが、ハワイのらうらうちゃんからプリン画像のお問い合わせをいただきましたのでアップします。うちのは無水鍋でつくる大型プリン。

ちょっとカラメルが多かった。見た目はわるいけど、この端っこのボソボソのところがおいしいです。


切り分けて食べます。

なんだか日本でも水曜の深夜以降にウイスコンシンなどでバイデン票が急に伸びたのを「怪しい」と言っている陰謀論好きな方がいるというニュースを読みましたが!!!!!

郵送による投票をするのは、以前から民主党支持の人が多いのです。

だからトランプは郵送による投票や事前投票を妨害しようとしてたんですよ!

郵送で送られる票は当日の票よりもあとで開票されるので、そこから民主党の票が伸びるのはあらかじめ予期されていたのです。

……というようなことを、日本のニュース機関もちゃんと伝えてほしいのだけど、ウェブで新聞各社の記事をざっと見る限り、あんまり伝わってないように思います。

 
思うに、トランプの言動を、これまでのまともな大統領と同じ文体で訳して伝えようとするところに、まずジレンマがあるのではないでしょうか。

 


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2020/11/04

かわいい安宿と、聖地の名前  [DAY4]



ザイオン国立公園の南側正面入口のすぐ外が、スプリングデールという小さな町になっています。

ホテルやレストランが並び、ちょっと離れたところが住宅街。

新しいラグジュアリーリゾートもいくつもできていますが、わたしたちの今回の旅はもちろんエコノミーなので、宿は昔ながらのMOTEL。

これは↑↓、そのすぐとなりのコインランドリー。



イームズチェア風の椅子(「なんちゃって」かもしれないけど、最近カフェなどで見かけるペラペラのなんちゃって品よりも、材質も座り心地もよさそうだった。色も素敵)も合板の壁も70年代ぽくてカワイイ。

ザイオンには4泊したので、ランドリーも活用しました。

シアトルのと同じく、マスク着用必須、洗濯ができるまで室内で待機しないこと、などのルールが書かれてあり、70代くらいのおじさんが一人、わたしたちがいた間ずっと、消毒液であちこちの表面を拭いてまわってました。だから中はどこもかしこもピカピカでした。



よくアメリカのロードムービーにでてくるような(部屋で人が殺されていたりする)典型的なロードサイドのモーテルです。おそらく1960年代後半〜70年代の建築。

青年が旅行の1週間前にみつけた宿。ウェブのガイドで高評価だったそうです。





モーテルのオフィスにあった絵葉書(息子撮影)。全景はこんなです。かたちがスペースエイジ風の看板がかわいい。フォントも素敵。そしてこのキッチュで雑多なオフィスと、一見怖そうなフロントのおばさまもいい感じで、楽しかった。





クイーンサイズベッド2台の部屋。狭い。電子レンジと小さい冷蔵庫、テーブルと椅子。

ベッドは寝心地いいとはいえず、岩山の景観に興奮しすぎたせいだとおもうけど、寝苦しくてあまり寝られなかった。リネン類やバスルームは清潔でした。

部屋は暗かったけど、内装は、すごく頑張っているDIYな感じ満載。壁は山のかたちに板を切り抜いて貼ってあるし、天井には雲と青空がww あまり上手でないところがぐっとくる。






窓からのながめ。岩山と、RVの駐車場。





外はこんな眺め。岩山の圧がすごい。

夜は星空が見事でした。



全体はこんなかんじ。プールとバーベキューグリルもあり。

ひなびた宿だけど、公園入口まで車で3分という便利なロケーションだし、とても満足でした。

スプリングデールの町では、バイデン支持のプラカードをけっこういくつも見かけました。
国立公園の町だけに、自然を愛するヒッピー的な人が多いのかもしれません。

当然のことだけど、「赤い州」(共和党支持基盤が強い州)にも「青い」(民主党支持とかいわゆる左派・リベラルな)人たちがいるのだよなー、と、あらためて実感。

メディアやSNSの情報ばかり見てると、世界がフラットで単純なものだとついうすっぺらく錯覚してしまうけれど、とんでもないですよね。





ザイオン滞在3日め、「ザ・ナロウズ」からシャトルで戻り、ビジターセンターの近くの川沿いのトレイルを日暮れまですこし歩きました。





夕日を受けて、灌木のセージブッシュもやわらかくキラキラした色彩になります。



「ヴァージン川」と名づけられた川。

「ZION」(日本語訳の聖書では「シオン」と読むことが多い、旧約聖書の約束の地)といい、まったく勝手な名前をつけるものですね。

でも「ザイオン」という響きはわたしも好き。

この場所に合っている気がする。

いつもは、土地の名前にはもともとそこに住んでいた人たちの言語の名をつけるべきだと考えているのですが(たとえば「レーニア山」は「タホマ」という正式名で呼ぶべきだと思う)、ザイオンにはなぜかそれを感じない。

公園としてこの名を得て、人とのつながりが変わり、それまでとは違う「地霊」をもつ場所になっていったのだと思うのです。

この名前はとても強い磁力のようなものを持っている。





もともと、1909年にタフト大統領が「Mukuntuweap National Monument」という名でナショナル・モニュメントに制定したのですが、1918年に当時の国立公園のディレクターが名前を「ZION」に変更する提案をし、ウッドロー・ウィルソン大統領のときに議会で承認されたそうです(by  ウィキペディア先生




Mukuntuweapというのは この一帯に住んでいたPaiute族の言葉ですが、 Paiuteの人々がこの峡谷周辺をその名で呼んでいたわけではなく、あとから白人が勝手につけたもの。

最初にここを「ZION」と呼び始めたのは、モルモン教徒の入植者だと言われてるそうです。




岩山を双眼鏡でみていて、奇妙なアーチをみつけました。




iPhoneを双眼鏡にくっつけて撮影。

よほどタフなクライマーでなければ登れるような場所ではありません。

倒木のように見えたけれど、砂岩が侵食されてできたアーチ。

19世紀末から20世紀のはじめにここを最初に訪れた敬虔なモルモンの人々は、この壮大な景色に神を感じて、造形に感動したのだろうな、と想像します。

「征服者」(モルモンの人たちも抑圧を逃れてきた人たちだったけれど、もとからいた民族にしてみれば同じですよね)の勝手な感慨だといえばそれまでだけれど、そこにも真摯な祈りと崇敬がたしかにあったはずだし。

ザイオンという場所には、ここを訪れた人たちの一世紀ぶんの感動が深く刻まれていることよ、と、なんだかそんなことも感じました。

やはり、聖書を当然生活の一部として良く知っているアメリカの人々が(とくに、20世紀の初めには、今よりずっと教会に通う人口が多かったのだし)親しくこの場所を体験するために、このザイオンという名前は大きな役割を果たしたのだと思います。

 


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