2016/11/16

バカに通行手形


選挙の数日後、わたしの友人の義理の娘(20代の黒人の女の子)が、シアトルから少し離れた郊外のショッピングモールで仕事にいく途中、パーキングにいた男数名に「ニガー」とののしられた。

わたしのクラスメイトの20歳前後の黒人の女の子も、大学の近くでクルマに乗った3人の白人男性にむき出しの悪意を投げつけられたという。

超のつくリベラルの「バブル」に包まれたシアトルエリアでさえ、これである。

トランプに投票した人の中で、ほんとうに白人至上主義にこりかたまっている人はほんの一握りだとは思う。ほんとうにメキシコ国境に壁を作ってほしいと思っている人も少ないのだと思う。

でもトランプは、モスリムや移民や権利を主張する女性たちを切り捨てるような言動で、そのような人びとだけでなく、なんだかモヤモヤした不満をもっていた人びとの中にまでマイノリティへの憎悪をかきたてて、それを人気とりに利用した。

選挙後に、不満をもった頭のよくない人たちが、これでオレたちの時代が来たとばかり、調子にのって差別発言をしたりしている。

トランプはバカに通行手形をわたしてしまったようなものだ。

もちろんそんなのはウソの空手形なので、いつまでも続くはずがない。と思いたい。

でもトランプは先日、白人至上主義と関係の深い、ポリティカル・コレクトネス大嫌いのスティーブ・バノンという人物を補佐官に指名した。

この人はトランプの選挙参謀で、トンデモに近いような扇情的な記事で何度も問題になった極右の新聞を主宰している人。この人選には共和党の主流の人たちも冷や汗をかいている。これからこのグループの人たちがどれだけ発言権を掌握していくのか注目。

選挙から1週間、シアトルの人はショックから少しずつ立ち直り始めていて、戦闘モードにはいっている。


きのうの月曜日はシアトル近郊のあちこちの高校で5,000人くらいの生徒がいっせいに学校を抜け出して反トランプのデモをした。(写真はシアトルタイムスの記事から)

動画でみた高校生たちが持っていたのは、LGBTのシンボルのレインボーカラーの旗や、「Black lives matter」「This p---y grabs back」などのスローガン。これは大学やダウンタウンで行われたラリーも同じ。

これらのデモは、単に「トランプは嫌い」といいたいだけの、アンチのためのアンチ行動ではない。

(…レディ・ガガのツイートした「Love Trumps Hate」(愛はヘイトを踏んづけて乗り越える)が日本の一部メディアで「トランプは嫌い」と誤訳されて話題になってましたが)

自分たちが大切にしてきた「多様性」「共生」「社会正義」という価値観と、これまでに獲得してきた権利は絶対に守る、という表明のための行動なのだ。

この国は完全に分裂していて、トランプ支持者たちと反トランプの人たちとの間には、いまのところまったく会話が成立しない状態にある。

ほんとうに、生産的なポジティブな平和な対話が始まってほしい、と祈る毎日。
たがいにバカだと思っているだけでは、話は始まらない。

いったいなにが糸口になりうるんだろうか。

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2016/11/15

IKEAごはん


このあいだ、久しぶりにIKEAに行ったら(シアトルから南へクルマで40分くらいのところ)、なんと駐車場の反対側にもっと巨大なIKEAが建設中だった。

シアトル近辺にはどんどん人が増えてるので、IKEAも大繁盛でフロアがたりないんでしょう。

今でさえ一周すると疲れるのに、もっと広くなるのか…!
完成予定は来年春。


まんなかにあるIKEA食堂についたら急におなかが空いているのに気づいて、IKEAめし。

お豆たっぷりのルッコラサラダに豪華スモークサーモンつき。チーズケーキまでがっつり食べちゃった。ケーキ込み、コーヒーつきで9ドルくらい。満足度高い!


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2016/11/14

イーストサイドの静かなslough


この11月はまた気味の悪いほどあたたかい、シアトル近郊です。ここしばらく湖の東がわ、「イーストサイド」で、テンポラリーに猫まみれな生活。

夜のあいだ大風が吹いて雨が降り、 うっすらと日がさしてきた午後、お散歩へ。
イーストサイドは、マイクロソフトが大企業になるまではいちご畑や牧場ばっかりだったというだけあって、いまでも住宅街のなかにだだっぴろい公園や緑地がたくさんあるし、その間をぬける長いトレイルも豊富。

シアトル市内も公園の数では負けていないけど、広さとワイルドさではイーストサイドが圧勝。


自然のままの沼沢地のむこうに、ベルビューのダウンタウンにそびえるビル群がみえる、SFっぽい風景。

Mercer Slough Nature Parkというこの公園。直訳すると「マーサー沼自然公園」。
またはマーサー湿地、沼沢地かな。

Sloughという単語はあまりなじみがない。

英和辞典にはslough の訳語は「泥沼」「低湿地」とあるけど、河口域の広い湿地帯をさすこともあるらしく、場所によっても呼び方が違うらしくてあまりハッキリしない。
どちらにしても、あまり動きのない浅い水にひたされた、陸と水のあいだのあいまいな土地。

National Ocean Serviceのサイトには、sloughは「西海岸では、しばしば、河口域の戻り水でできた汽水域の湾や湿地をさす」とある。

Mercer Sloughは河口といっても小さな流れが湖にそそぐところにできた湿地帯なので、汽水域じゃなくて淡水の湿地/沼/小さな川からなる一画。
自然のままの雑木林と湿地帯が公園になっていて、とてもよく整備されたトレイルが張りめぐらされている。


きれいなキノコがたくさん。一昨年、キノコの図鑑を買ったのに、あれきりキノコ学習がすすんでいない。

この幹の苔と地衣類のテクスチャともようが素敵。


ほとんど葉の落ちた茶色の木立ちの中で目立つ赤い実は、たぶん、ズルカマラ(bitter sweet、またはnight shade)。有毒だそうです。


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2016/11/13

シノラの看板犬


あっという間に通りすぎてしまうくらいちっちゃいパロアルトのダウンタウン。

なんだかお洒落な自転車置場があった。


トラディショナルな自転車置場も。


デトロイト発のものづくりで成功してるシノラのブティックがあった。


床によこたわる看板犬におもわずひきよせられて立ち寄る。


キバちゃんという名前でした。
近くによるとお腹をなでてくれとごろりと降参のポーズに正面からやられた。

スーツケースにつけるネームタグがほしかったんだけど、革製75ドルだってー。
うちの庶民なスーツケースの本体と値段がほとんど変わらないー。まさに猫にコバン。



メイド・イン・アメリカのものづくりはぜひ応援したいけど、その前に自分に応援が必要だっ。収入が3倍になったら応援するから気長に待っててねーシノラ。


その前あたりにあったこのビル。全体のデザインは70年代ふうだけど、おもしろいところにナチュラルな風合いのベニヤをはりつけて、壁に木の絵を描いて全体に21世紀な自然志向でモダンな感じになってる。
たぶん既存のビルのリフォームだと思うけど、そうだとしたらいままでみたリフォーム物件のなかでも出色のおもしろさ。壁のティールグリーンも目立ちすぎず個性的で面白いなー。


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2016/11/12

ブルーボトルコーヒー


先日、スタンフォード大学のあるパロアルトというところに行ってきました。

シリコンバレーはのっぺりした郊外の住宅街だったところに急にIT企業が増殖した地域なので、都市っぽいカルチャーがまったくない。とうぜん優秀なカフェもあまりみかけない。

知的でこじゃれたお金持ちの人が住むというパロアルトにはこじゃれた小さなダウンタウンがあって、まんなかへんにBlue Bottle Coffeeがある。


雨の日。このパロアルト店は去年だか今年だかにオープンしたばかり。


1920年代に建った映画館を改造したという、ひろい店。


なんちゃってヨーロッパの広場ふうな中庭。まんなかに噴水がある。

雨降りで外の席があまり使えないので混み合っていた。

そして中国人観光客が多かった! いまは世界中どこにってもきっと中国人観光客が多いんだろうなあ。


日本では去年、東京にオープンした店にすごい行列ができてたそうですが。
みんな並ぶの好きね!いくらなんでもコーヒーに1時間以上並ぶって、なぜ?

シングルオリジン豆のPour over(ペーパードリップ)があったので頼んでみた。えーと豆はたしかエチオピア。でも香りがほとんどなく、苦味がずどんと滞ってる感じであんまりおいしくなくって、三分の一くらい飲んでカプチーノに買い替えた。
ちょっと期待していただけにがっかり。
この豆がたまたまだったのか、しばらく風邪ひいてた後で舌のほうがダメだったのか。

カプチーノはふつうにおいしかった。中国人観光客が食べていたワッフルもおいしそうだった。


「サードウェーブコーヒー」の代表みたいにいわれているけど、ここは実はぜんぜんブティックロースターというのではなくて、第二のスタバをめざすカフェビジネスなんだな。
 そして「ニューオーリンズコーヒー」という冷たくて甘いエスプレッソドリンクが人気みたいだった。セカンドウェーブじゃん!

「サードウェーブ」 という言葉の元祖になった記事はこちらだそうです。この著者によると「サードウェーブのコーヒーは、コーヒーそのものを味わう」ということにつきるという。こないだも書いたけど、日本にはそういう、真面目に豆の味を追求するコーヒーおたくのお店が昭和の昔から無数にありますよね。

でもこのブルーボトルコーヒーは、店内やパッケージのデザインが素敵。
ミニマリストなパッケージやロゴのデザインは、無印良品とかの日本のデザインに影響受けてると思う。思わずもしかして日本の資本なのかと思っちゃったくらい。
オーナーはオークランドの人だった。


広い店内の半分は、Hanahausというレンタルワーキングスペース。
1時間1人3ドルから。会議室は1時間15ドルから。
カフェの席が埋まっているためか、こちらもほぼいっぱいだった。試験勉強してるらしい学生さんがたくさん。殆どの人はMacBookProをにらんでいる。


映画館の時からあったのだと思われる、この飾りつき柱の使いかたが面白い(この内側が小さな会議室)。
それに配管むきだし天井のくみあわせ。



帰るころになってカリフォルニアらしい青空がみえてきた。


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2016/11/11

芽キャベツのお酢煮


芽キャベツと、人参と、ねぎを、水とお酢とオリーブ油とシーソルトでゆっくり茹でる。

大橋鎮子さんのエッセイ集にあったレシピ。

<深めの鉄鍋で煮ます。ダシも、なんにもなしです> 。

とくに分量は書いてなかったのでホワイトバルサミコ酢をどぶどぶいれて、絶対間違いないハワイの赤いソルトで。
鍋にほうりこんで煮るだけなのに超うめえ。
ジャパニーズスタイルのねぎは高いから、こっちのスーパーでひと束1ドル以下のほそい「グリーンオニオン」使用。

<ナベにネギ、ニンジン、芽キャベツを並べて、油、酢、塩を入れ、水をたっぷり注ぎます。はじめは強火、ナベが温まったら火を落とし、弱い弱い火にかけて放っておきます。
 ときに白い粒胡椒を、ときに七味を、ときには柚子を。
音もたてず、ひとりでふっくらとおいしく煮えています。この野菜は充分に酢油の水分を吸って太り、それぞれ豊かな持味を、精いっぱいに出し切っています>。

芽キャベツはずっとなんとなく敬遠していたけど、シアトルに来たら枝ごと売っているので、あの突拍子もない妙ちきりんなかたちがなんともかわいくて、つい買いたくなり。
去年くらいから野菜レパートリにくわわった。 オリーブ油やベーコンで炒めるのもおいしいけど、このお酢煮はさらにかんたん。


このエッセイ集は、このあいだ東京にいったときに丸の内KITTEのこじゃれた雑貨やさんでみつけて買った。なぜ7巻だけ買ったのかというと「ヤンソンの誘惑」というタイトルに惹かれて。それもまた魅力的な冬向けの料理なのだけど、まだ試してない。

半世紀たってもオシャレな花森安治さんのイラストつき。なんて洒脱なんでしょうね。
毎日、ぐったり疲れるとこの本を取り上げて、1ページから2ページほどの短いエッセイをひとつかふたつ読むと、ほんとに癒される。


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水曜日のプロテスト


選挙の翌日、水曜日のワシントン大学キャンパスでは、 ほぼもれなく全員が大統領選挙の結果に動揺していた。

わたしがいま通っている人類学のクラスは夜7時からの講義で、学生は高校卒業したての18歳から60代まで年齢層が幅広い。

水曜日の夜のクラスでは、授業の半分の時間をつぶして、この結果をどう思うか、ここから何が生まれると思うか、のディスカッションになった。

15人ほどの小さなクラスだし、全員がまちがいなく「ブルー・バブル」の中に住んでいる民主党支持者で、壮大にショックを受けている人ばかり。かなり濃い話になった。

ヒラリーを推し続けた民主党の指導層に怒りを向ける人(ほぼ全員が同意)。楽天的に考えたい、すくなくともブッシュの8年間よりはずっとマシなはずだという人(わたしもそう思いたい)。自分の隣人や家族の中のモスリムや移民のひとを心配している人(深刻)。

分子生物学専攻の、すごく頭が良くていつも元気な白人の若い女の子が、「私がいちばん恐いと思うのは、これまではきちんとした場で言うべきではなかった、ひどい(差別)発言が普通になってしまったこと。だって大統領が言っているなら、もう誰が誰に対してどんんなことを言ってもオーケーだってことになる」と言いながら声を詰まらせて泣いてしまった。

これほど皆が感情を刺激されるのは、この選挙での大きな争点は、LGBTの権利、移民の権利、女性の(中絶の)権利などの<進歩的>価値観だったのだと皆が感じているから。

シアトルの人にとっては自明で、いってみれば神聖なものともいえるようなそれらの権利が、目の前で「あの下品な親父」に否定されてしまったと、みんな感じているのだ。

シアトルでも自然発生的な抗議活動があった。

わたしは知らなかったのだけど、ダウンタウンからサウスレイクユニオンを通り、キャンパスの中を通ってまたダウンタウンに戻るデモの列が、ちょうどこのクラスのあとキャンパスを通っていったらしく、うちの息子はたまたま学校にいあわせたので、1時間くらい参加したのだそうだ。参加者は千人ちかくいて、多くは学生だったそうだ。


上の2枚は息子が撮ったiPhone写真。

 ポートランドではデモの人たちが高速道路を占拠したらしいけど、シアトルのデモは両脇を警察が牽制して高速入り口に行かせないように固め、デモの参加者たちもなにかを壊したり燃やしたりというバカな行動に出る人はいなくて、ただ平和的に、「love trumps hate」(愛は憎悪を踏み越える)、「her body is hers (彼女の身体は彼女のもの―自分の身体のことは自分で決める権利がある)」などのいくつかのスローガンで声をあげて怒りを表現していたもよう。

不安と怒りを表現して、自分たちが大切にしていることを確認する作業としての、抗議活動。平和裏にできるなら創造的な行動だ。

頭にきても壊したらダメだ。

いまの学生たち、ミレニアル世代の子たちは、上の世代よりもずっと冷静で、視野が広くて、思慮深く、柔軟性があるように思う。

この世代が世界を仕切るときには、今の世代よりもずっとうまくやるに違いないと思う。


こちらは、あくまでも平和な人。

いやこの人も起きているときは、かまってかまってかまって!ごはん!ブラシ!ごはん!ブラシ!と抗議活動を繰り広げている。


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