2020/10/26

「トランプでない方の人」


大統領選挙まで、あと1週間となりました。

これほど国ぜんたいが不安と焦燥につつまれる選挙は、近年、なかったのではないでしょうか。「恐怖」といってもいいかもしれません。

といっても、わたしが実際にアメリカで経験した最初の大統領選は、ブッシュ対ゴアのとき(2000年)。あのときも、アメリカの選挙ってなんてダイナミックで分裂しているんだろう、とおもったけれど、まだ世間には余裕がありました。

オバマ対マケインのときも、大統領選てエンターテイメントとしてなんて面白いんだろう、とおもったのですけれど。

今回はもうニュースを見るのもイヤで、見たり読んだりする情報を少なめにしています。

 

写真は、アリゾナとネバダの州境ちかくのガソリンスタンドのレジの近くにあった「2020ドル札」。1枚5ドルで売ってました。

アメリカの田舎の幹線道路沿いのガソリンスタンドには、こういうヘンなスーベニアがいろいろ売られています。




エクソンの赤いペガサス。ひさしぶりに見た。


昔、うちの近くに出光石油のスタンドがあってこのマークの看板を見慣れていました。
懐かしい。



アリゾナ州やネバダ州、アイダホ州などを車で通過するあいだに、「TRUMP FOR 2020」という巨大な旗をつけて走っているトラックやピックアップトラックを何度も見ました。

アメリカでは選挙が近づくと、家の前庭に支持者の名前やスローガンを書いたプラカード(というのか)を立てて支持を表明するおうちが多いのですが、シアトル周辺の住宅街では100パーセント、バイデン支持のものばかりで、トランプ支持のスローガンはまったく見かけません。

でも都市圏の外に出ると、…とくに山を越えると、ほぼトランプ一色に。


シアトルではトランプ支持者を(すくなくとも表立って表明している人を)見ることは皆無といっていいほどにないので、数年前にヒューストンに行ったときに、たまたま市内でトランプのラリーがあって「TRUMP」と書かれた赤い帽子をかぶった人びとに大量にでくわして、恐怖を感じました。

 まるで、言葉の通じない危険な野生動物かなにかにでくわしたみたいに。

トランプ支持者を実際に見かけることのない都市圏に住んでいる心やさしいリベラルの人々の多くも、きっと同じようないわれのない恐怖を感じるのではないかなと思います。

意見だけでなく地理的にも隔絶されているので、お互いに、文字通り相手を見る機会がないのです。

これでは相互理解どころか、対話など始まるはずもない。

 しかもSNSでも「エコーチェンバー現象」で、同じ意見の人が集まって同じものの見方が強化されていくので、ますます自分とは違う人々が不気味に見えてくる。

この状況はもうちょっとなんとかならないのか、と、ロードトリップのあいだじゅう、息子とその話をしてました。

 

 

 

うちのご近所のファミリーの前庭プラカード。プラカードはなぜだか、みんな決まってこのサイズです。

「SETTLE FOR BIDEN」というスローガンに、笑ってしまいました。「Settle for」は、ごぞんじのとおり、「まあ仕方ないからこのへんで手を打っとこう」というニュアンス。

民主党の中でもバーニー・サンダースを熱狂的に支持していた、社会に劇的な改革がすぐに必要だと考えている層には、バイデンはめっぽうなまぬるい候補だからです。

この2020年というかつてない危機の時代に民主党をまとめる候補が70代の地味な白人のおじいちゃんしかいなかったんか!というのも、不思議な歴史の必然なのか……。

ほんとに影が薄いんですよねー。バイデンさん。

先日、朝日新聞のデジタル版の記事の見出しで、ジョー・バイデンのことを「トランプではないほうの人」と呼んでいて、思わず笑ってしまいました。


 

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コロナ第2波のさなか、ロードトリップへ



1週間ほど、中西部へ行ってきました。


愛車プリウスCちゃんに乗って、うちの青年とふたりのロードトリップです。

青年が高校生のときに今は亡き......(´;ω;`)......マツダ3でシアトルからサウスダコタ州まで往復したのと、6年前のクリスマスに南部を車でぐるっと回ったのにつづき、3度めのロードトリップ。

コロナ禍のなか、そして感染率が高い州への旅ではありますが。

日本への帰国も今は難しいことだし(うちの青年が米国民なのでちょっと簡単に入国できないのです)。

ちょうど、青年が休みを取りやすい時期でもあり、このあと二度とこんな旅ができる機会はもうないかもしれないので。

と、あまり深く考えず、念入りな計画もなしに、2週間ほど前に決めた旅行でした。




DAY1。土曜日。シアトルを朝7時に出発。

ずっと家にこもりきりだったし、もとより通勤などしていないので、ひさしぶりに朝の街を見ました。

この時間にダウンタウンまでバス通勤していたこともあったなあ。

別の時代の話のようだ。



おやつは、前の日にCTちゃんが差し入れてくれたRosellini’sのエクレア。



ワシントン州を抜け出すまでに、約4時間。

これは、ちょうど州のまんなかあたりにある町、エレンズバーグの付近です。

この日の目的地は、ユタ州のソルトレイクシティの少し先にあるプロボという街でした。
ノンストップで約13時間の行程。もちろん途中で休憩するので、朝から夜遅くまで、まるまる一日。

 


シアトルから高速道路「I-90」でカスケード山脈を越えると、あまり雨の降らない中西部地帯が始まり、両側に柔らかなトーンの枯れ草色の丘陵がえんえんと続きます。

ひとの身体のようなゆるやかな曲線の丘陵を見ると、いつも、もれなくジョージア・オキーフの絵を思い出す。単調なようだけれど、独特の美しさがあって、見飽きない景色です。

ほぼ毎日快晴に恵まれ、最初から最後までまったく見飽きないどころか、つぎつぎに目をみはる景色に襲われつづけた旅でした。おもしろかったー。行ってよかった。

そしてきのう、日曜日の深夜に帰ってきたら、シアトルが冬になっていた!

2度C! 

前日に泊まっていたネバダ州の山の中の朝と、おなじ気温です。寒ぅ!


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2020/10/16

ヅラ生活とつれない人


8月末に、約半年ぶりにヘアカットに行きました。

でその数日後、ウィッグ屋さんへ。

7月からはじめた新しい薬剤の化学療法は毛がぬける可能性が40パーセント以上とのことでしたが、はい、順調に抜けており、だんだん「野武士」のようになってきました。

うしろあたまを鏡にうつしてみると、小学校のときの校長先生みたいだ。粕屋先生というお名前だったかな。きっと今のわたしより若かったのかも。




かつらショッピング、なかなか楽しかったです。

でも人工毛でも600ドルって、お高いのですね。人毛だと、2,500ドル〜ですって。

 




まあ、ヘアカットとカラーリングで毎回200ドル近く飛んでしまうので(「トップスタイリスト」とかでなくても米国の美容院てふつうに高いよね。東京に行くと安さにびっくりする)、これで半年も使えればリーズナブルというべきでしょうか。庶民にはいずれにしても財布が痛いのですが。


もちろん人工毛一択ですが、まわりの評判は上々。自分ではなんかちょっと韓国のボーイズバンドみたいな髪型って気がするんだけど。みんな優しいです。



近所のつれない猫。

雨もようの朝、「はやくおうちに帰りたいなあ」という顔で玄関に座っていたし、このあいだここんちのおじさんといっしょに仲良くこの階段に座っていたので、ここんちの子だと思っていたら、そうじゃないんだって。通い猫ってやつか。おうちがたくさんあっていいな。


 


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2020/10/15

拡大すると怖い


秋です。葉の色が変わってきて、晴れた日はキラキラ。




近所にも、ゴーストや蜘蛛やガイコツがますます増えてきました。



秋のひろいもの。




先日いただいた茗荷はお味噌汁に。コーンごはんに厚揚げ、かぼちゃ。
夏のなごりのようなメニューです。
厚揚げは、シアトルのベトナム系豆腐屋さんのがおいしいです。

厚揚げってお味噌汁の具にもなるし、野菜炒めにも使えるし、豆腐よりも便利なのにいまさらながら気づいた秋。



 小さなアリが団体でパントリーのはちみつをなめに来た。

うちの青年が、どこかで拾ったセキュリティ用カメラのレンズを使って作った即席の虫眼鏡で撮影しました。

これ、体長5ミリ以下の小さいアリなんですけど、拡大すると凶暴に見える。

これが体長5メートルだったら、ものすごくイヤだ。

アリとかショウジョウバエを観察をしてるだけでなく、いちおう仕事もしている青年、今月めでたく正式雇用となりました。
このご時世にまことにありがたいことです。

インターンのときよりもかなり待遇は良くなるのですが、すぐにサインアップしないで、競合禁止条項とか給与の条件とかをネゴシエートしてるのを見て、うーんやっぱりアメリカ人だなと思いました。給与条件はいちおう交渉したものの変わらなかったけれど、入社前から手掛けてる地元の小ブランドでの仕事は競合にあたらないとして、続けられるようになったそうです。

ともかく楽しい仕事ができて、なにより。

 

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2020/10/14

秋のカオスと追憶、廃疾の王

 

またジェニファーちゃんが届けてくれたお庭の花に、にゃを子さんのお庭からひと枝いただいた紫式部も挿して、カオスのような秋の花束。

この写真だとほんとにぐちゃっと見えちゃいますけど、ほんとうはもっと渋く大人っぽい色合いです。



可愛い小菊の深い紅と、色づいたOak Leaf Hydrangea(カシワバアジサイ)、深い紫のアジサイ。

春や夏の花だったら暑苦しく感じてしまいそうな複雑な色の取り合わせが、かなり気に入っています。


こちらもジェニファーちゃんズガーデンからの、巨大ダリア第2弾。


こちらは先週マーケットで買ったダリアですが、腐っても鯛、枯れてもダリアというか。

茶色く枯れた部分が陽に当たるとゴールデンにも見えて、朽ちていく帝国のような趣きで、先日観た『ルートヴィヒ 神々の黄昏』をほうふつとさせました。

なぜこの映画が観たかったのかもう思い出せないのだけど、わざわざスケアクロウ・ビデオでDVDを借りて来て観たのでした。

Netflixの『The Kominsky Method(コミンスキー・メソッド)』でバーブラ・ストライザンドの『追憶』のテーマがでてきたので、『追憶』(原題は『The Way We Were』)を観たくなって借りに行き、ついでにもう1本と選んで借りてきたのが『ルードヴィヒ』。

 この春なぜかヴィスコンティ監督の映画が観たくなったのでしたが、もうその理由が思い出せない。『ベニスに死す』だけ観て、そのあと心にひっかかっていた。あれも疫病の町でミッドライフ・クライシスの作曲家がゆっくり死んでいくという、辛気臭い映画でした。

偶然で驚いたのだけど、『ルードヴィヒ』は1972年、『追憶』は1973年公開のほぼ同い年映画でした。


日本公開時のポスター。
「すべてがたいせつに思えた 愛でさえも」って、えっ?今では愛はたいせつじゃないんすか?
コピーの意味がわからない。

この2本、きっと10代のころ名画座で観たはずだと思うのだけど、きれいさっぱり記憶から消え、何一つ思い出せませんでした。観なかったのか。まあ10代のわたしが観ても何一つ理解できなかったであろうことは間違いないです。

あのころは、すべてがたいせつに…じゃなくて、なんかちょっとオシャレで文化的で頭よさそうな映画を観るだけで満足したつもりになってたんですね。今思うと、いじらしいほど頭悪い。かわいいものです。

『追憶』は心温まるラブストーリー的な映画だと思っていたけど、意外にこれまた辛気臭い話だった。舞台は第二次世界大戦中、そしてそのすぐ後。
アメリカは大戦中もこんなのんびりした生活を送ってたのね、と思うと切ない。



オリジナルのポスターはモノクロ(映画はカラー)。この赤いフォントのかっちょいいこと。
コピーもものすごくストレートですね。

DVDのボーナス・トラックにカットされた場面が入っていて、びっくりしました。特に重要で、映画のコアじゃないのかと思える2つの場面がなぜカットされてしまったのか。この映画の中心ではないのか。政治的意図はなくて、その場面をカットしたほうが試写会の一般観客の反応がよかったからという話だけど、ほんとかな。不思議すぎる。

カットされていたうちの一つは、活動家の主人公ケイティが、演説している若い女子学生を見て、自分の学生時代を思い、涙する場面。もう一つは、赤狩りの中、彼女が密告されたことが明らかになる会話の場面。この場面がなかったために映画の後半のストーリーがぼやけてしまってようわからんかったですよ。

若きロバート・レッドフォードは、やっぱりブラピによく似てる。逆か。


そして、約4時間の『ルードヴィヒ』。長いよ!公開時は3時間5分の「短縮版」だったそうですが。それにしても長い。

2夜に分けて鑑賞させていただきましたが、ぐったり疲れました。


豪華絢爛な衣装やお城や俳優さん&女優さんは、たしかに見応えありました。ヨーロッパの19世紀貴族階級の富の迫力といったら、ちょっと比較になるものがないですね。

愛したワーグナーにいいようにお金をせびられ、ワーグナーを追放したあとは婚約も破棄してつぎつぎに豪華絢爛すぎる城を建てまくる。人間としては気の毒ですが、国にとってはたいへん迷惑な王だった。しかし、19世紀の貴族社会が帝国主義といっしょに激しく沈没していく、激動の時代の豪華な黄昏の象徴としてこれほどぴったりな顔もないかもしれませんね。

狂王ルードヴィッヒ役のヘルムート・バーガーはたしかにキレキレの美しさです。
だんだんと自分の世界にこもってしまい、崩壊してゆく凄惨な姿もすごかった。

でもヴィスコンティの美学そのものは、あまりピンと来なかったです。重厚さがあまりにも強調されすぎていて、とにかく最初から最後まで重いー。4時間びっしり重い。

1973年当時になにか斬新な表現だったものがあるのなら、それは一体何なんだろうか。

そしてこの映画、わたしは当然ドイツ語だろうとばかり思い込んでいたので、中欧の貴族がイタリア語でしゃべるのに度肝を抜かれました。それはたとえば韓国ドラマをハワイ語の吹き替えで見るようなもの。ちょっと違うか。

いずれにしても、どちらの言語もまるでわかりはしないのですが。でも、「音」として聴いていて、ドイツ語の音律やリズムとイタリア語の音律やリズムは全然違うので、セリフの雰囲気がドラマと背景にそぐわない。

まあそんなことを言ったら、アメリカの映画はどこの国の話でも基本、英語ですが。

2本とも、それぞれの映画が描いた時代よりも、むしろ1972〜73年頃の世界をよく映し出してるんだな、と思いました。

 

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2020/10/12

キンモクセイをもらった


雨です。そして肌寒い。今日なんか11度C。ふつうに暖房をつけてます。

いつのまにかすっかり秋本番。おでんが恋しい天気。

きょうは(日曜日)かなり本格的なざーざー降りでした。
しばらく雨つづきの予報。

でもあのかなしい煙の日々のあとでは、雨に文句はいえません。



じゃじゃーん。金木犀をひと枝、いただきました。

猫ママ、にゃを子さんのガーデンより。

日本にいたときは、毎年あたりまえに享受していた秋の香り。何年ぶりだろうか。

去年もこのお庭で咲いているのは目撃したけど、香りはほとんど届かなかったので。ほんとに久しぶりで感涙。

いただいたキンモクセイは一輪挿しにしてバスルームに置いて、出入りするたびにうっとりしてます。幸せがとまらない。

香りのよい花はたくさんあるけれど、キンモクセイはほんとに柔らかくて、尖ったところのない、まるい感じの香りですね。



 雨の日も素敵なマジカルガーデンです。ほんとになんでも揃ってる魔法の庭。



お茶の木の花も咲いてました。



そして!美しいみょうがの森。
ジャングルのような葉をかきわけ、舞踏家薫さんがつぎつぎに茗荷を収獲。



葉をかきわけると、茗荷の花もたくさん咲いていた。


蕾がふいてる状態のは時々見るけれど、咲ききった花を見たのは初めて。こんなに可愛い花になるんですね。



ぴっかぴかの茗荷がこんなに〜!
おすそわけいただきましたー。嬉しいー。

なんと美しい色なんでしょうか。



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2020/10/04

タコの先生がすごすぎて絶句


先週につづき、ユニバーシティ・ディストリクトのファーマーズマーケットに行ってきました。

またまた超大輪のダリヤ。いま、マーケットの花屋さんに並んでいるのは8割がたダリヤ。
あとはヒマワリ、百合。アメリカンサイズですねー。

火焔のようなダリヤ。このクリーミーなオレンジ色が大好きです。



 今回は取り置きしておいていただいて、タキさんのお店でおいしいピッカピカのオクラ、モロヘイヤ、みょうが、ほくほくカボチャなどを買えました。ああ、ありがたい。こんなにおいしい野菜を作って、遠くまで売りにきてくださってありがとう。

 オクラはさっとゆがいてみょうがとかつぶし、レモン醤油で。最強!!

 


 
Netflixのドキュメンタリー『My Octopus Teacher』を見ました。

…と書いていたら、波のり翻訳者えりぴょんから「これ見て」とLINEが入った。またまたシンクロ来てる。みたよみたよー!

ミッドライフクライシスを迎えたドキュメンタリー作家が、南アフリカのケープタウンにある自宅のすぐそばの海(素晴らしい景色にかこまれた、素敵なおうちにお住まいのようです)に毎日潜っていき、ある一匹のタコに出会い、タコとの親交を深め、タコとその世界…習性や身体構造や知能や天敵や捕食行動などを深く知るようになり、タコとの絆を深めていくというお話です。

これがめっちゃくちゃ面白く、ごはんを食べつつ親子で1時間半、くぎづけでした。

ジャイアントケルプの森の中の映像も素晴らしいし、まじでおすすめです。

 


観た翌日も、家庭内でタコについてのディスカッションが止まりませんでした。

青年は、好きなように(なのかどうかは知りようがないけれど)身体の色ばかりか形状までも瞬時に変えられるタコの皮膚の構造について、デザイナーとしてたいへん興味を惹かれているようです。

タコってあんなに色がいろいろ変わるんだ!

茹でると赤くなるのしか知らなかったけど、ほんとに変幻自在で、ツノまで生えてくるんですね!

頭の形を簡単に変えられるなんて!赤くなったり黄色くなったり白黒水玉模様になったり。

そして、足(触手)がなくなると、ほんとに新しいのが生えてくるんだ!

 


そして、このドキュメンタリー中では触れられていないけれど、タコには「9つの脳がある」のです!

タコの脳は、8本の足にそれぞれ、独立した判断力のある「脳」というべき機能がある「分散型」の脳なのだそうです。

だからむしろ「脳が9つある」のではなく、「脳が9つに分散されている」ということですね。

本体の脳はこの分散脳システム全体の質量の10パーセントしかなくて、触手にある脳が合計60パーセントを占めるんだそうです。


そして、各触手には約200個の吸盤があって、これがお互いに瞬時に情報をやりとりしているらしい。

タコの神経系を研究しているワシントン大学の心理学の先生が、あたらしいホッケーチームの名前「クラーケン」(巨大タコ的な海の怪物)がなぜホッケーチームにふさわしいかについて解説してる動画をみつけました。


クラーケン

ワシントン大学にはタコ研究者が多いのか(ピュージェット湾にはタコがいっぱいいるので研究対象にしやすいのかも)、宇宙生物学(そんな学問分野があるなんて知らなかった)の研究をしている院生が、タコの神経系統での判断がどのように行われるのかのコンピュータモデルを作って発表している動画もありました。

「how sensory information is being integrated in this network while the animal is making complicated decisions(タコが複雑な判断を下しているときに、感覚器官からの情報がこの(神経の)ネットワークにどのように統合されているのか)」について、新しい知見をもたらす研究だそうです。研究の中身はまったくわからん。でもどう統合されてるのかめっちゃ興味しんしん。

脳が腕とか足とかにあって、瞬時に判断を下してるって、いったいどんな心持ちなんでしょうか!しかも8本がそれぞれ独立してるって。

しかし、これだけフレキシブルな身体構造だと、逆に脳が中央にしかなかったらどの触手をうごかしていいのか迷っちゃったりこんがらかったりするのかも??

そして、タコが身体の色を変えるのはタコの「判断」なのか、触手が決める判断なのか、その時タコの意識のなかでどんなことが起こっているのか。

タコにも人の感情に似たものがあるとすれば、身体の色が変わるとき、なにを感じているのか。

ドキュメンタリーでは、タコの好奇心と知性がフォーカスされていました。


毎日通ってくる人間にだんだん慣れてきて、触手をのばして人間の手に触ってみたり、ついにはまるで猫のように人間の腕に抱かれるようになったり。たしかに好奇心旺盛、というほかない。

UWの研究でも、タコの好奇心と知性が確認されてるそうです。

さらには、魚の群れで遊んでいるとしか思えないような行動もとらえられています。


この映画を観ていると、タコがかわいくみえてしょうがない。このドキュメンタリー作家さんに近寄り、触手を伸ばして手にさわったり、おとなしく腕に抱かれているようすは、猫みたい。




このドキュメンタリー作家さんは当然ながらこのタコとのあいだに深い精神的な絆を感じるわけだし、観ているわたしたちもそれに共感して涙を流してしまうのですが、タコのほうで人をどう思っているのかは永遠にわかりませんよね。

 犬猫は進化の途上で別れはしたものの、哺乳類というおおきなくくりでは同じで、脳の構造からしても、情動やその前身になる感覚がわたしたちとそれほど大きな隔たりはないだろう(人より純粋に感覚や情動を経験しているかも)と思われますが、頭足類は脳の構造、使い方、司令系統からしてまったく違う。

それでも行動を観察していると、好奇心と記憶が発達した、高い知能を持った存在だと確信するしかない。まさにエイリアン。

昔からSFでタコ型のエイリアンが何度も描かれてきたのは、いわれのないことではなかったんですねーーー。



タコ先生を観たら、こちらもぜひ。「タコの脳はどうしてそんなにすごいの?」TEDトーク。

しばらくタコ刺しが食べられなくなりそうです…。

 


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