2017/08/16

ファシストを笑う方法


近所の庭でみかけた、自然に還ってる椅子。

ここ数日のニュースは、20世紀に見た安っぽい近未来ディストピアSF映画の出だしみたいです。

政治家なんて誰がなっても同じ、なんて思ってませんでしたか?

トップが変わると組織は変わるんですねやっぱり。

そしてたぶん、悪くなるほうがよくなるよりもずっと早いし簡単。

バカの親玉がホワイトハウスにいるとどんだけバカがつけあがるのか、証明できましたね。あと3年半後にいったいどうなってるのかこの国は。

今日のシアトル・タイムズのコラムで、Danny Westneatさんが、「ネオ・ナチと戦う最善の方法は、笑いのめすこと?」というタイトルで、シアトルの地元ライターDavid Neiwertさんの10月に発売される著書「Alt-America: The Rise of the Radical Right in the Age of Trump 」からの引用を紹介してました。

“Fascists, you need to understand, are the ultimate psychic vampires,” he writes. “They feed off hate. They want to stoke it as much as possible. They want things to become as violent as possible. They love it when you become violent, and give them martyrs …”
「ファシストとは、究極の精神的バンパイヤだということを知っておくべきだ。 ファシストたちはヘイトを糧としている。可能な限りにおいて、嫌悪を掻き立てたがっているのだ。対立ができるだけ暴力的になることを彼らは望んでいる。あなたが暴力的になって殉教者が出るのを、彼らは心から喜ぶのだ」

Neiwertさんは、ハラを立てて立ち向かえばバカの思うツボだから、バカたちを笑える方法を探してはどうだろう、と提案しているのですが。


「大統領は間違ったことは言ってないわよ、左派にも過激で暴力的な人はいるしぃー」とかいうFOXニュースのコメンテーターのコメントを聞いて悶絶しながら、こいつらをどうやって笑ったらいいんだろう?と考えてみたけど、わたしにはとても思いつきません。

エンターテイメントとしてのカウンタープロテストが可能なら、どんどんやったらいい。

でも笑いも暴力装置なんだよね。

今日美容院に行ったら、いつも髪の毛を切ってもらってる日本人のスタイリストさんが、彼女も米国にもう20年以上いる人なんだけど、「白人に対してハラが立って、不信感でいっぱいになってる」といってた。旦那さん白人なんですけどね。

持っている人が持っていない人の立場を理解するのは難しい。

恵まれている人は自分の立場を当然だと思い、恵まれていない立場の人のことを何かが間違ってるとか怠け者だとか考えて自分を納得させようとする。

不満を感じている白人男性は、自分たちがどれほど恵まれた境涯にいるのかまったく理解できないのだし、もしかしたら自分たちが間違っているかもしれないと疑うことさえできない頭になっているのだと思う。

もともと立場が違う人間が完全に理解し合うなんて土台無理なんだから、それはそれで仕方がないのだけど、だからこそタテマエというものがあり、戦後、数々の戦いをへて変化してきたアメリカのタテマエが今まではなんとか社会をひとつにまとめていたのに。

人間は進歩なんかしないのかもしれないけど、社会は変わってきた。

何十年もかけてたくさんたくさん血が流れた上に築かれてきたタテマエを、あの大統領は無責任な「本音」でグズグズにしてしまった。

これからの数年は、アメリカと、まわりで見守っている全世界が、タテマエを死守するのか、したいのか、できるのか、よくよく考える機会になると思う。



『トゥナイト・ショウ』のジミー・ファロンでさえ、「うちの2歳と4歳の娘たちに、いったいなんて言えばいいのか。絶対に後戻りさせてはいけない」と泣きそうなくらいストレートなメッセージを語ってました。
 
笑ってすませられる時は過ぎてしまったからこそ、バカを暴力的でなく笑える方法を真剣に探す時なのかもしれない。笑うだけではダメですね。落ち着いて、ファシストが問題だと思っている問題を無力化するような方法。それは笑いに近いところにあるような気がするのだけど、フィンガーポインティングではなくエンパシーに近いと思う。

バカにつける薬。だれか発明してくれ。


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Pret A Manger、ねこ看板、ホームデポ


出しそびれていたニューヨーク小ネタ帳です。

ニューヨークのウェストビレッジのあたりにあった、猫看板。
自転車にまたがってこの写真を撮ってたら、通りがかりの親切な女性が「撮ってあげようか?」と言ってくれた。自撮りをしてるのだと思われたらしい。ちゃいますねん。



ニューヨークで何度も (たしか11日間で4回)行ったPret A Manger。

街の中のあっちこっちにたくさんあって、スープやサンドイッチやサラダの種類が豊富で、お手頃価格だし、期待を上回るおいしさでした。
野菜やスープがこんなにおいしいファストフードの店って貴重です。
ホールフーズのデリのようで、もっと安いしおいしい。

この写真のランチはきゅうりとツナのサラダと、にんじんとターメリックのスープだったかな。

店のインテリアも明るくてオシャレ。Chick-fil-Aはもういいから、Mangerにシアトルにも出店してほしい。なぜシアトルにないんだろうと思うくらいノースウェストっぽいテイストの店だと思ったら、ロンドン発なんだそうです。


その並びにあったホームセンターの「The Home Depot」。仰々しいクラシックな円柱のあるビルに入っててちょっと面白かった。ホーム・デポといえばだだっ広い駐車場にメキシコから来たおじさんがたむろして仕事を待っているのがデフォルトなのだけど、こんな店もあるのね。

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2017/08/15

ファミリー飲茶の鶏もみじ


日曜日の飲茶。
ヤムチャっていってもアメリカ人には通じない。

ディムサム(点心/dim sum)といわないとわかってもらえない。 点心と飲茶はサンドイッチとアフタヌーンティーみたいな関係なんだけど(少し違うか?)「ディムサムに行く」という言い方なんですよね。

息子の親友P君がオレゴンに行っちゃうので、その前に飲茶に行こうよ!と誘ったらママと息子のKくん(3歳)も連れてきてくれて、ファミリー飲茶に。

チャイナタウン/インターナショナル・ディストリクトのHoney Court Seafood Restaurantというお店です。
すんごく混んでて、結局30分待ち。日曜のチャイナタウンはどこもめちゃくちゃ混んでいる。シアトルにこんなにチャイニーズピープルがいるんだ!とびっくりするほど。


香港出身のPママが次から次へと注文してくれるので、たちまちテーブルの上はいっぱいに。ご馳走するつもりだったのにご馳走されてしまったー。
Pママとは初対面だったのだけど、香港ママらしいバイタリティ溢れるママでした。
高校のときからうちの息子がP家にいりびたりで、何度もご飯を食べさせてもらったり泊まりに行ったりしていながら何もお返しもご挨拶もしてなかったのに、またしても単に親子でご馳走になっちまった。駄目過ぎる大人として。
「じゃあこの次は寿司ね」と空約束だけしてきましたが…。ほんとにもー。
でもそんなことを気に病む気にもならないような、元気いっぱいの面白いママでした。

P君は高校のときからとっても優秀で、ワシントン大学ではバイオ化学を専攻。卒業と同時に給金つきフルスカラシップでドクターコースに招待されて、オレゴンの大学にいくのです。
その上大学1年のときに息子くんが生まれたので、若いパパでもある。
のーんびりした感じの子なんだけどねー。



さてわたくしはこの日、鶏の足先を生まれて初めていただきました。



その衝撃的なビジュアルのため、いままで敬遠してたんだけど、P君の大好物なのだそうで、小さいK君もおいしそうに目の前でむしゃむしゃと食べているので、これはいただかなければ悔いが残ると思って食べてみた。
軟骨がちゅるっとして、肉団子っぽい濃いめの味付けでうまかったです。

でも骨をぱきっとしてちゅるちゅる食べるのはやっぱりハードル高いな。

日本語ではこのチキンフィートのことを「鶏もみじ」とも呼ぶそうですね。知らなかった。


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2017/08/13

シアトルのアールデコたてもの(2)豪華絢爛エクスチェンジ・ビルディング


アールデコ建築シリーズの第2回は「Exchange Building (エクスチェンジ・ビル)」を紹介しました。
住所は821 Second Avenue。


シアトルのアールデコ建築ファン(ニッチな市場ですが、一定数のファンがいるんですよ!)の中でも人気の高いビルで、完成は1930年です。


設計者は英国生まれのジョン・グラハムさん。
以前アマゾン本社が入居していたビーコン・ヒルの丘の上のビル(元は海兵隊病院)や、ダウンタウンのMacy'sの設計も手掛けた人。

このビルは、1929年の施工当時、鉄筋コンクリート製としては米国で2番目に高い建物だったそうです。鉄筋コンクリートは当時の最先端工法だったんですね。

垂直のラインを強調するために窓をへっこませたアールデコ建築特有のデザインで、上に伸びていく力強さとスピード感が表現されています。


「エクスチェンジ」の名前は、「取引所」から来てます。

このビルはセカンド・アベニューとファースト・アベニューの間にあります。
シアトルの方ならご存知のとおり、この辺はきっつい坂になっていて、セカンド・アベニューの入り口とファースト・アベニューの入り口の間は4階分の段差があります。

(上の写真はセカンド・アベニュー側の入り口です)

その4階分を吹き抜けスペースとして穀物などの商品取引所が作られ、その取引所を見下ろすバルコニーがあったそうです。


これは1950年代のニューヨーク証券取引所ですが、シアトルのエクスチェンジ・ビルの構想は、これをもちょっと小さくした感じのイメージでしょうか。


ビルの装飾には穀物や農産物の取引所らしい意匠がいっぱい。
このレリーフにも、チェリーらしい果樹などたくさんの植物がフィーチャーされてます。


ステンドグラスも小麦のデザイン。

でも残念ながら、このビルが完成する直前に大恐慌が起きて大不況に突入してしまったため、結局この取引所は使われずじまいだったらしいです。なんて残念なビル。



これはマリオン・ストリートに面した側面。


ウインドウの上にいかにもアールデコっぽいデザインの装飾。


セカンド・アベニューとマリオン・ストリートの角からファースト・アベニュー側を見下ろしたところ。冬に撮った写真なので景色が寒々しいっすね。

ウインドウの脇のちょっとした装飾が可愛いです。



現在は角にタリーズコーヒーが入ってます。


このパネル(ビルの由来などを説明している)と文字はわりと新しく取り付けられたもので、アールデコ風デザイン。

アールデコって、1950年代〜70年代のインターナショナル・スタイルが全盛だった合理主義の時代には悪趣味な過去の遺物でしかなく、なるべく早く忘れ去りたい存在だったようで、天井の装飾を石膏ボードで覆い隠したり、デコなシャンデリアを無味乾燥で実直な蛍光灯につけ替えたりというむやみな改造があちこちのビルで行われてました。

80年代以降アールデコ好きな人が増えてきて、オリジナルのおもむきを取り戻すために、そういった無残な改造を元通りに修復する努力が始まります。

このビルも、新しい持ち主に変わってから施工当初の面影を再現するためにかなり色々修復されたのだそうです。


このビル最大の見どころはエレベーターホール。黒の大理石に金色の装飾で豪華絢爛。
エルテの世界ですね。ていうか80年代の東京のディスコみたいな感じでもある。

バブルが弾ける直前の1980年代後半の東京と大恐慌前夜の1920年代後半のアメリカは、感覚もよく似ていたのかもしれませんね。

エレベーターホールはファースト・アベニュー側とセカンド・アベニュー側にふたつあります。この時代のビルでこんなにエレベーターの数が多いビルも珍しいそうです。

照明器具はオリジナルではなくて、オリジナルをもとに作ったコピー。

エレベーターのドアは後の時代に付け替えられたものですが、それ以外の部分はかなり忠実に元通りになっているようです。


エレベーターの上にある装飾も、小麦と太陽の意匠。


こちらはファースト・アベニュー側のエレベーターホールにあるサービスエレベーター。
これが唯一残っているオリジナルの扉で、ブドウと花のレリーフで飾られています。

この扉をとっぱらって、何も装飾のない扉に取り替えてしまったんですねー。


受付にあった電話まで、むかし風。
歴史あるビルとしてのキャラクターを打ち出そうという意欲が垣間見えます。


こちらはファースト・アベニュー側の入り口。使われている大理石はミネソタ州産。「レインボー大理石」と呼ばれるマルチカラーの石で、形成されてから36億年経つという、地球上でもっとも古い岩石の一つなんだそうですよ。


玄関内部(サード・アベニュー側)の黒い大理石はイタリア産。これは精巧なラジエーターグリル。
写真がブレてますが実物はもっと綺麗です。壁の大理石もグリルの形に合わせて放射状に切って貼ってある。


このメールボックスもものすごく豪華。世界ひろしといえども、これほど豪華な郵便ばこはあまり他にないのではないかというくらいゴージャス。


まわりを小麦らしい植物がらせん状に囲み、中心には様々な植物が絡み合う豪華なレリーフ、下にはきのこ。

これはアールデコというよりアールヌーヴォーな気分のデザインですが、文字のタイプと、メインのレリーフの中心にV型の直線が引いてあるところが少しデコっぽい、ハイブリッドなデザインじゃないかなと思います。

私はやっぱりこういうアールヌーヴォー的なのが好きで、このぐるぐるした曲線のつる植物ときのこが萌えポイントです。

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2017/08/11

バロウズ山の絶景と山羊クロッシング



木曜日、マウント・タコマまたの名をレーニア山のハイキングにいってきました。


高速道路から。シアトルは相変わらず盛大に煙っています。
山の上なら晴れているかと思いきや。


レーニア山の周辺も、なんだかまるで吉野の山々のように霞がかってました。
快晴なのに、空気が錆色。


アスターみたいな紫の花がたくさん咲いていました。

去年はやはりサンライズのスカイスクレイパー山に8月6日に行ったのですが、もっとずっと涼しかった。


こちらは去年の8月6日。空の色がぜんぜん違う。


今回もビジターセンターから「フローズン・レイク」にのぼり、ここから別の道をいきました。
今回は暑かったせいなのか、身体がすごく重くて、まじで倒れるかと思ったほどぜえぜえしました。

同行の息子によると、去年もその前も「死ぬかと思った」と私は言っていたそうですが、いや今回はほんとうに辛かった。
毎日30分散歩するくらいではあまりプラスになってないのだなあ。年々、ちゃくちゃくと体力は衰えているんですねー。もうちょっと身体動かさないとー。これも毎回言ってるなあ。



フローズンレイクのちょっと先の道を、マウンテンゴートが横断してました。
このあいだバラードの古物屋さんにいたのと同じヤギです。


30頭か40頭くらいの群れで、お母さんに連れられたちっちゃい子もいました。
ユキちゃん!

雪渓の上で寝そべって涼んで、道をわたって緑の野原へ。ヤギたちもやっぱり今年の夏は暑い!と思っているのでしょう。


大人のオスはかなり大きく、気が立つと向かってくるそうで、何年か前にはオリンピック半島でヤギによる殺人事件も起きているので、目をあわせず、遠巻きに見守る。


この赤いマルのなかにいるのがヤギたち。 なにかおいしい草があるのでしょうね。
ちょっと楽しそう。でも山羊には山羊なりの難しい社会があるのだろうな。


今回は、フローズン・レイクの前からのぼり道が出ているバロウズ・マウンテンというのに行きました。


去年は8月でもまだかなり雪がたくさん残っていたのに、今年は雪の上を通る場所はこれだけ。今年はほんとうに暑いんですね。

「ファースト・バロウズ」というピークを越して、ちょっと下って、もうひと登りしたところが「セカンド・バロウズ」山。
こののぼりが、辛かった。



山頂は平らで、岩の原っぱのようにひろびろしてます。
標高は7800フィート(2,377メートル)。

サンライズのビジターセンターからは、標高差1000フィートくらい。往復約8マイル(12キロ)くらいのコースです。

今回は出発したのが遅くて(うちを出たのが11時頃)、しかもトレイルの入り口を間違えてムダに登ったり下りたりしてしまったので、あるき始めたのが午後3時ちょっと前くらいという遅いハイキングでした。

山頂までは「もうダメです」と立ち止まっては休みながら、1時間30分くらい。 ヤギを見に行かなかったら1時間くらいでつけたかな。


目の前にタホマ山またの名をレーニア山が広がります。すごーい。ここまで来ると、もう死にそうに辛かったことなんか一瞬で忘れます。

左のゴツゴツしたピークは「リトル・タホマ」というそうです。


目の前にタホマ山のさえぎるもののない絶景。

パーキングから一時間ちょっとでこんなアルパインな絶景が独り占めできるこのコース、ちょっとした山歩きの気分を味わいたい方には超おすすめです。


これも広い山頂の一部。東のほうの空が烟ってました。


山頂でなにか食べていると、シマリスが食べものを盗みにきます。
人がいる>食べものがある とインプットされているらしく、おやシマリス君がやってきた、と写真を撮ろうとしていたら、迷いもせずにサンドイッチめがけて一直線に突進してきたので危ういところでひったくりました。
ついナッツなどをあげたくなるけど、餌付けをしてはいけません。



山頂でちょっとのんびりして、5時くらいに帰路へ。もうほとんど人がいない道だけど、まだちらほらと登ってくる人もいた。

夏のノースウェストは日が長いのでのんびり山歩きができますが、岩の陰から突然ヤギが出てきたらどうしようと、ちょっとだけビクビクしてました。


これはwhite pasqueflowerまたはwestern anemoneの種。
日本の「チングルマ」に似てますね。


こちら(上の写真)は2年前、6月にハイキングに行ったときにパラダイスのほう(レーニア山の反対側の山腹)で見た、花の状態。


平日だったので、パーキングも余裕でした。

毎年恒例の夏のハイキング行事になってきてるけど、できれば年に何度か行きたいなあ。
サンライズまではシアトルから片道2時間半。
もうちょっと近いといいんですけどね。


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