2016/07/19

チャイニーズ・イン・ギンザと高級レタス畑


銀座通りのシャネル。
壁がデジタル画面になっててメリー・ポピンズみたいなアニメーションの素敵ディスプレイ。

2年ぶりの東京でちょっと驚いたのは、もしかして日本の人口の7%くらいが中国人になったのかと思うくらいの、中国人観光客の多さ。

とくに夏休みの季節だったから格別だったのかもしれないけど、店でも駅でも街を歩いていても、ふっつーに中国語が聞こえてきてました。電車に乗ると同じ車両で必ず中国語会話が聞こえてきた。

友人Nちゃんによると、とくに銀座通りの四丁目から新橋寄りはチャイナタウンかと思うくらい中国人のほうが多いのが常態になっているのだそうで、大型観光バスで乗りつけた中国人観光客が道ばたにスーツケースを広げていたりするのを良くみるという。

東京でも京都でも、街の人はすっかりインバウンドに慣れたんだなあ、と思った。もちろん京都はもう筋金入りなのでしょうけど。
去年の外国人観光客入国数は前年比50%近い増加だったんですねー。日本人の出国数を上回ったのか!


松屋に併設のルイ・ヴィトンの素敵ビルの向かいはシャネルとブルガリ、斜向かいにはカルティエが建設中で、銀座通りはほんとにキラキラ度が増している。

チャイニーズ観光客にも何種類かいて、ハイブランドを完璧に着こなしてネイルもぴかぴかな銀座のお姉さんのような美女から、トトロのぬいぐるみを首にかけた少女たち、それから、大陸からだとひと目でわかる家族連れ。

とくに、ウキウキした感じの家族連れがたくさんいた。楽しそう。お母さんのファッションが特に、突拍子もなくて面白い。


ブルガリの隣りの伊東屋は、改装して文具売り場が減り、11階には畑ができていた!
個展をしていた版画家のNちゃんが案内してくれました。


フロア全体が水耕栽培の畑で、サラダ用の野菜たちが作られている。

上の階のレストランで一皿1500円とかのサラダに使われています。


世界一地価の高い畑かも。


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遠いところに連れていかれるコーヒー


銀座の裏通りにある小さな珈琲屋さん。
いっぱし珈琲スノッブ気取りのうちの息子が、東京の喫茶店文化を紹介しているオサレ雑誌でみつけたらしく、行ってみたいというのでたずねてみました。

普通の豆のほかに10年寝かせた豆を焙煎した珈琲を出している。

10年もののエチオピアをたのんでみました。1,200円なり。



使い込んだ木のカウンターの中で、生まれてこのかた休むことなく珈琲を淹れ続けているかのような寡黙な珈琲職人さんが、黙って小さなネルドリップで淹れてくれる。

薄い磁器のシンプルなデミタスカップに入って出てくるこのコーヒーは。

なんだか本当にすごかった。

脳がどうかしていると思われると何だけど、見たことのないどこか遠くの土地の風景が見える気がした。

これは単なる間抜けなたとえではなくて、本当にリアルな体験として、眼の前に知らない風景が見えた気がした。

繊細さと複雑さ、すっきりした明るさ、といった風味が、完璧な音楽を聞いたりすごい風景を見たり、といったようなときに脳が受け取るものと似た体験を創りだしたのかも。

音を聞くと色が見えてしまうとか、味に音がついてくるとか、そういう「共感覚」というのとちょっとだけ似ているかもしれない、と思ったりしました。

この次東京に行ったらまた必ず行きたい。1,000円でトリップできるなんて安いものw


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2016/07/18

まぐろの市場


東京滞在時、 愉快なラブリー広尾マダム、Mちゃんのご友人、Sさんの案内で、築地の場内を見学させていただきました。

築地正門前4時半集合。蔵前に泊まっていたので4時発。日本の夏って4時前にはもう明るいのよね。


ばばーん!市場前です。長靴必要とのことで、Mちゃんにかっこいいレインブーツまで貸してもらった。至れりつくせり。


なんと、これが吉野家の歴史ある第1号店だそうです!
パイクプレイスマーケットにあるスタバ1号店よりオーセンティック。


とっても昭和な珈琲店で朝食。60代くらいのきりっとした素敵なママさんが切り盛りしていて、カウンターの中も外もピカピカでした。

ほかにも素敵すぎる店がたくさん。後日ゆっくり行こうと思っていて結局行けなかったのが残念。


そして場内へ。魚が詰まった発泡スチロール製の箱でいっぱい。


狭い通路をターレーという運搬カートがすごい勢いで行き来しているので、フラフラ歩いているとものすごく危ない。みんなキビキビと仕事をしていて、『スターウォーズ』の反乱軍の基地みたいでした。

 穴子さんたちがいた!


 今年の11月には市場がついに豊洲に移転してしまうので、築地市場はこれが見納めです(悲)。場外市場はここに残るそうだけど。

イチロー似のまぐろ屋さん。
この1ブロックで数十万円なり?


ヤバい長刀。
寡黙なプロフェッショナルの魚屋さんたちがテキパキとビジネスをしている市場を見て、息子はfeel humble と言ってました。

 まずは生まぐろのセリをそっと見学。


生なのは、近海で水揚げされたぴちぴちのマグロたち。


なにマグロかは聞いたのに忘れた。



生マグロたちも捕れたてマグロではありますが、遠洋の船の上で捕れたら即冷凍加工されてカチンカチンになったまま日本へ運ばれる冷凍マグロのほうが、新鮮さではむしろ優るのだそうです。


その冷凍マグロたち。築地の主役。


尾っぽのところが少しめくってある。ここの脂の乗り方を見て、プロは数秒でマグロの値段を決める。


この鈎つき器具はマグロのプロ専用用具。


マグロの種類によりセリもいくつかに分かれている。複雑なサインランゲージと符丁だけで右から左にあっという間に売買成立、ビジネスが終了。


とほうもない数のマグロ。これがたったの1日分。


マグロ1本お買い上げ。


大事なマグロは、傷にならないように大切に荷車で引かれていきます。




凍ったままのマグロを切断する職人さん。ちょっと間違ったら指がなくなってしまう危険な仕事。ホンキのねじり鉢巻!


マグロを取り巻く環境も変わっていますが、築地のなかにもサステイナブルなマグロ漁を推進する人々がいるそうです。

マダムMちゃん、Sさん、どうもありがとう〜!


セリを見終わってもまだ7時とか8時とか。この後帰って寝直したのはいうまでもない。
築地の駅ですれ違った、買い出しのおじさま。板前さんか、寿司屋さんに魚を降ろす魚屋さんか。
長靴とバスケットがかっこええ。


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2016/07/15

たてもの物語(4)沈む船パーキング


7月10日号の「ソイソース」掲載のたてもの物語は、この駐車場。
写真が冬の季節で申し訳ない。

かなりインパクト強い建物なので最初に見たときから印象に残りましたが、20世紀初頭にはこんなに優雅なホテルが建っていた場所なんですよ。

いくら空きビルになって、当時は見捨てられていた犯罪多発地域のまんなかにあったとはいえ、 代わりにできたのがこれじゃあんまりだ、と多くの人が思ったという。

1970年代にはもう古いビルなんかどんどん壊して駐車場にしてしまえという声が大きかったのだけど、実際に駐車場に置き代わってみるとやっぱりひどい、ネバーアゲインシンキングシップ、というわけで、パイオニア・スクエアの保存に一役かったというビルです。


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2016/07/14

三宅一生とルノワール


広重展の翌日、大雨の中をまた六本木へ。こんどは国立新美術館。
なぜかGoogle Mapに騙され10分も余計に歩くはめに。しかも強風で傘がおちょこになり、ランチタイムで激混みのコンビニでビニ傘を買い、と、無駄に障害の多いRPGのような困難に次々みまわれた六本木。

でも梅雨の最中であったのにもかかわらず、この日とそのほか数日をのぞき、あまり悪天には見舞われませんでした。昔からお天気と駐車場には恵まれている、けっこう強力な晴れ女です。


故・黒川紀章さんのうねうね建築。ケヤキがいい具合に育ってきてます。
この波打つガラスの壁は雨の日に見ると風情がある。このビル、最初見たときにはあまり好きじゃなかったけど、こうやって雨や緑に包まれていると有機的なキャラクターがきわ立って素敵です。


この日は、これも最終日にギリギリ間に合った「三宅一生の仕事」展へ。
ロボットのような巨大びよんびよんがロビーにも吊るされていました。


展覧会はとてもおもしろかった!民族衣装を立体的にしたような初期の型破りなコスチュームから、シグネチャーのプリーツ加工の服、さらには最近の3Dプリンターなどを使った作品まで。プリーツを作るマシンも置かれていて実演が見られました。

会場にプリーツを着て来ている方もたくさんいました。来ている人の服装ウォッチも楽しかった。ふつうの美術展クラウドとは全然違って、文化服装学院ふうの若者たちや、スキのないファッション誌編集者ふう、60代+の年季のはいったオシャレおば様たちも。

うちの息子はイッセイ・ミヤケを初めて発見してびっくりしたみたいで、かなり時間をかけてよく見てました。 畑ちがいとはいえデザインの勉強をしててイッセイ・ミヤケを知らないってダメすぎるよ息子よ。


5階分くらい吹き抜けのアトリウム、1階はカフェテリア、原子力発電所の煙突をさかさにしたみたいなストラクチャーの上にあるのはお高いカフェ。

1階カフェで休憩してから、同じ建物で開催中のルノワール展もみて帰りました。


有名作品『ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会』が展覧されてました。

これこれ。

この人の絵は本物を見ないと意味がないのでこの機会に見ておくべきだと学生料金1200円も払ってチケットを購入してさしあげたけど、息子はほとんど興味を示さず、三宅一生の3分の1の時間で出てきてしまった。

わたしは別にルノワールのファンではない。ボワボワした変な絵だと思うものも多い。
 『ピアノを弾く少女たち』なんかも、いくつもバージョンがあったらしくて、今回展覧されてたのはなんだかやっつけ仕事で適当に描いたようなもののように見えて全然感心しなかった。

でも会場の最後にあった最晩年の作品だという『浴女たち』は最高でした。


ふたりの見事な4段腹の女が、なんとも曖昧な空間に寝そべっている。奥のほうには水浴びをしている女たちがいるけど、どうも尋常な空間のようではない。右手前にあるグルグルは、花なんだか模様なんだかもうわからない。
空から遠景から人物から地面まで、なにもかも均一に融け合って、つじつまの合わないボワボワした空間にこの浴女たちは気持ちよさそうにのびのびと存在している。

なんだか大変ありがたいものを見たような気がして、涙が出てきました。
 この展覧会のキャッチコピーのとおり、ルノワールの生涯は「幸福を祝うため」の色彩をキャンバスに塗ることに捧げられていたわけですが、老年にいたり、もうすべてに開き直って到達した境地であるらしいこの絵には、暴走すれすれの幸せがアクセル全開で表現されているように思いました。

多分少し見る位置を変えたら気持ちが悪いくらいの幸福。
この絵は少し時間を置いてもう一度見てみたい。

この絵最高、というと息子は怪訝な顔をして「フウン」とにやにや笑っている。
21歳のワカゾウにはわかるまい。たぶん年取ってきて少し脳がやられてきてから初めてわかるのよ。


東京には幸せそうな顔をして歩いている人があまりいない。
だからたくさんの人がルノワールを見に行くのでしょうか。

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2016/07/13

広重ビビッド


東京到着2日目に、急いで行った広重展。『広重ビビッド』ってタイトルがいい。

到着日の翌々日が、展覧会の最終日でした。
いろいろ予定があったのだけど、ずーっと前から広重さんの浮世絵、本物をまとめてじっくり見てみたかったので、無理を押して行きました。なかなかこんな機会はめぐってきませんから。

最終日でかなり混んでいて、絵の前に行列ができてはいたけど、耐えられないほどではなかった。
今年、上野で開催された若冲展が数時間待ちの超盛況だったそうですが。
日本の人はほんとに美術展が好きですねー。

原安二郎さんという方のコレクションという、摺りたてみたいな超美品ばかりで、目が幸せでした。

ほんとにビビッド。

板目がくっきり!

版画の技法についてはまったく何にも知りませんが、なんだかとにかくすごいらしい(笑)!

有名な「名所江戸百景」と、そのすぐ前年に製作された「六十余州名所図会」という、きいたことなかったシリーズが中心。

これは全国の名所を描いたもので、もちろん自分で全国の名所に行ったわけではなく、他の人が描いた絵図をリミックスした作品。これが70点。

そのあと、1856年から1858年の2年にわたって「名所江戸百景」120点を出している。

会場でまとめて見ると、「六十余州名所図会」を作った後だからこその「名所江戸百景」だったのだというのがよくわかるように思いました。


「六十余州名所図会」にも、嵐や渦巻きなど自然のパワーをフィーチャーしたケレン味のあるドラマチックな構図が出てくるけれど、全体としてはおとなしい、名所の解説絵図。
田舎の風景ですから、基本、のどかです。

それが「名所江戸百景」になると、いきなりアバンギャルドで超都会的な絵に。
「六十余州名所図会」での試行錯誤を全開にした感じ。


亀が吊るされてる「深川萬年橋」とか、ゴッホも真似した「亀戸梅屋舗」とか、鷹の目線で俯瞰した「深川洲崎十万坪」とか、ババーン!これでもか!的な、カッコ良くて悶えるしかない構図が次から次へ。広重さん、まさに乗りまくりの晩年だったんですね。楽しかっただろうなあ。


「名所江戸百景」は、大都市江戸の爆発寸前に濃縮された文化の空気があってこそのrん作だと思う。200年続いた遊郭の文化も背景にそれとなく漂ってます。

(これは名所江戸百景ではないけど、広重さんの、猫が窓の外を見ている絵がとても好き。あの窓のところに投げ出された手拭いやかんざしなどが、ものうい遊郭の洗練を雄弁に語ってます。)


フランスの画家たちは彼の作品を見て、心底たまげたことだと思う。

一度も見たことのない、野蛮なはずの非文明国に、超がつくほど洗練された文化と都市生活があったことが、この絵を見れば一目瞭然で分かってしまう。

そして考えたこともないパースペクティブと大胆な構図が提案されている。

浮世絵がなかったら印象派絵画もずいぶんつまらないものになってたかもしれませんね。


今まで気づかなかったけど、広重さんの「名所江戸百景」と印象派登場の間には、ほんの20年足らずしかなかったんですね。

「名所」が1858年、第一回印象派展が1874年だから。

展覧会では、広重のほかに北斎や国芳の作品もあった。
富獄三十六景の赤富士とか富士山に大波の絵とか、たぶん本物ははじめて見たと思う。

大満足でしたが、ぐったり疲れました。


必ず買ってしまうクリアファイル。絵葉書はふだんは買わないけど、今回は例外。
カタログは、この後東北旅行を控えていたもので、重さが気になり買いませんでした。
ああでも買っとけば良かったな…。


会場のサントリー美術館がある東京ミッドタウンも、いろいろ見ごたえのあるビルです。こんな素敵な、苔とシダの盆栽が飾ってあった。これ作ってみたい!

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